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「ちょっとだけ人より長い・・・・夏休み!」-1章- [闘病記]

-うずらの卵とにわとりの卵-

日を追うごとにつれ、その差は大きくなる。一月もしないうちに「うずらの卵」(左)と「にわとりの卵」(右)ぐらいの大きさになってきた。本来ならすぐ病院に駆けつけねばならないのだろうが、愛娘であるメストド2号の精神状態が不安定な時期に家庭を離れるわけにはいかない。彼女は今、美しい蝶のように羽ばたいていく為に「さなぎ」になろうとしている。時期なのかもしれない。そんな成長の過程をみすみす見逃すわけにはいかない。もしかしたら、私の命はなくなるかもしれない。「悔いは残したくない。」仮に自分の命を縮める事になろうともその「瞬間」だけは脳裏に焼き付けておきたい。出来れば美しい蝶のように羽ばたいていくその日までは・・・・・。しかし、病は残酷なものである。刻一刻一刻とその瞬間を刻み付けていく。果たして愛娘の成長が本当に見たかったのか?いや、多分違う。「宣告」されることが怖かったのに違いない。私の従兄弟は同じ病でこの世を去った。享年30と少しだったと記憶している。彼も自分自身の身体にメスを入れられるのが怖かったに違いない。よほど我慢に限界があったのだろう。その病魔は全身を駆け巡り、私の従兄弟をこの世から連れ去った。ただ一言。「とても痛むんだ」との言葉を残して・・・・・・。

-診察のついでに-

病はオストドの体力を確実に一歩また一歩と奪い去ってゆく。風邪を引けば長引くし、なにより「やる気」そのものを奪ってゆく。風邪の診察を受けに主治医であるA医師を訪ねたのは6月も終わりに近づいている頃だった。本当は風邪の診察ではなく、メストド1号の懇願と「まだ、さなぎになるには時間がかかるよ」と言わんばかりのメストド2号の無邪気な笑顔に励まされて、診察を受ける気になったのである。私のその当時の主治医はT県I市に病院を構えており、その先生の人柄なのだろうか、患者で溢れかえっている病院であった。私の場合には、「1年365日24時間体制で診てやるよ」との温かいお言葉?に図々しくも「結石が騒ぎ出した」だの、「妻が高熱を出した」だのと「自分の都合にあわせて」診察を夜中でも受けるし、日曜だろうが祭日だろうが関係なく受診をしていた。そのA医師のところに診察を受けに行ったのも、土曜日の夕方。一般患者がいない時間帯を狙っていく。そのときの会話は次の通りだった。

A:「今日はどうした?」 オ:「風邪がなかなか治らなくて・・・」 ・・・・・・・・・・オ:「それとついでに診察してもらいたいのですけど・・・・・」(患部を診せる・・)A:「お前なあ・・・ついでじゃないだろう。こっちのほうが大変だぞ・・・・・・・・・)オ:「(絶句・・) A:「今日、S先生来てる?呼んできて!それと検査室準備。)オ:「あの~」 A:「多分、検査しなければ分からないけど・・・腫瘍だな・・・・・)オ:「しゅ・腫瘍ですか?それって・・(しばし、絶句)。あの~一応、ガン保険は入っているんですけど・・・・・・・しゅ・手術しなければだめですかね。今、仕事忙しくて・・・・・その・・・・・・え~っと、心の・・・・準備も・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」A:「そうだな。S先生は泌尿器科のスペシャリストだから・・・・先生の見解・・・」オ:「で、ガン?ですか?切除して細胞検査に廻して調べなければ・・・・・・・・・」(S医師登場) S:「セミノーマの疑いだって?どれどれ」(検査室でA医師と共に各種検査を行うS医師)S:「うん。水腫ではなくて腫瘍だね。立派なセミノーマ。」オ:「で、どうなるんでしょう?」 S:「そうだね。手術と言っても1~2時間ぐらいだね。パイプカットはしばるのだけど、その後、ちょん。ちょん。・・と切っておしまい。まあ、3日くらいの入院かな。この病気は20代~30代の男性が発病する病気で、10万人に1人くらいの珍しい病気だよ。」 オ:「で、良性ですかそれとも・・・・・・・」 S:「A先生も言っていると思うけど、組織細胞を・・・・・・・」オ:「手術しなかたら、どうなります?」 S:「破裂して・・・・お仕舞い。・・・かな」A:「まあ、2~3日で全てのデータが揃うから、そのとき決めよう・・・・・・・・・・」

病院を辞して愛車を、会社に向け走らせながら、私の頭の中は真っ白だった。会社に戻り仕事の算段を始める。大手の企業なら「代わりの人間」はいくらでも居るのだが、しがない弱小企業ではそのようなわけには行かない。万一を想定して身辺整理もしなければならないだろうし、娘や妻との思い出も作っておきたい。会社でPCに向かい「遺言」を認める。遺言を認めていると、まるで走馬灯のようにそれまでの人生においての悲喜こもごもが浮かんでは消える。大粒の涙がこぼれるのも構わずに、愛する妻と娘そして、私を育ててくれた父。そして、友人に別れ言葉を認め、パスワードを掛けて保存する。


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