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「ちょっとだけ人より長い・・・・夏休み!」-3章- [闘病記]

-「まな板の鯉」-

ストレッチャーで5階の病室(個室)から1階にある手術室まで運ばれる。今にも泣き出しそうなメストド1号に「Vサイン」を示し、手術室に運ばれる。そう、言いたいこと、伝えたいことは全て「遺言」に書いてあるからなのだ。ストレッチャーからまたまた自力で手術台によじ登る。この病院のこの台に登るのは2度目一回目は尿道結石になったときで、完治したかどうか検査するためにファイバースコープを入れるとき、そして今回。産婦人科の台(看護婦が教えてくれた)も2回目。毎度ながら女性の偉大さには頭が下がる。そう言えば「女は弱し、母は強し」って言葉があったっけ。今はともに「強し」だけど・・・・。手術台に登ったオストドは「まな板の鯉」状態であった。舌の上に麻酔材を乗せられる。コロコロ転がす様言われるが「に・にがい。」せめて、フルーツ味だったら良かったのに・・・・。無理やり口をこじ開けられ「気道確保」のため、管を挿入されるのだが苦しくて、まさに「鯉」のごとく暴れる。手や足、身体を押さえつけられ麻酔の注射を打たれる。看護婦が肩をやさしくリズミカルに一定の速さで叩く。いつのまにか「観念」して眠りの世界に引き込まれていった。

-夢の中で-

いつの間にか、スーツにカバンを抱えている私がそこにいた。名も知らない駅なのだが、列車に乗らねばならない。キップを買い、ホームへ登ってゆく人々の群れの中に私は混ざっていた。「長旅に備えて売店で買い物をされては?」との女性の声に導かれ売店へ行く。愛娘にそっくりな売り子が少し悲しそうな顔をしながら、私の注文した商品を袋に詰めてゆく。お金を払おうとすると、「いらない」と言う。「おかしな娘だな」と思いながら、袋を受け取り、列車に乗ろうとすると、小さい子供、二人が足を引っ張って乗せようとしない。振りほどこうにもますますその力は強くなってゆく。「乗らなければならないんだから、放しなさい。」と言うが、悲しそうな顔をする。最初の列車は発車してしまった。青白い顔をした人々を乗せて・・・・・。次の列車がホームに滑り込んできたので、乗ろうとすると、先ほどの娘に良く似た売店の売り子が私の腕を引っ張って放さない。私の足を引っ張っていた子供ふたりが乗り込む。少し悲しそうな顔をしていたのを覚えている。昔、可愛がってもらったお兄さんに良く似た駅員が「最後の列車は行ってしまいました」と私に告げる。いつの間にか売り子も姿を消している。駅員が駅長のところへ連れてゆく。少し赤ら顔の駅長である。「あなたの乗るべき列車は行ってしまいました。今日のところは一回お戻りになられたほうが・・・・」しょうがないので駅を出る。どこかで声が聞こえる。その声の方へ歩み出す。しばらくして振り返ると、そこにはもう「駅」はなくなっていた。

- 夢の中で 2-

「・・・・ド、・・トド、オストド!」妻であるメストド1号の声だったのである。いつの間にか手術室より出され、病室へ向かう途中のことであった。指を2本出し、「Vサイン!」「良かった。もう大丈夫ですよ。」と看護婦がメストド1号に話しかけている。意識ははっきりしているのだが、身体はまるで鉛を装着しているように重い。ストレッチャーが病室のベットに横付けされる。「1人で降りれますか?」の問いにうなづき、「降りると言うより落ちる」と言ったほうが正しい表現で、ベッドに移る。まだ眠いのでほっといて貰いたいのだが、少しでも眼を閉じようとすると、誰かしらがたたき起こす。麻酔が効きすぎているようなのだ。呼吸器を点けられ、心電図モニターやら一杯の機器がぶら下がり、いつの間にか「重病人」状態になっている。私は手術中に夢を見ていたのだ。夢と言えばもう一つ。私が手術を受けている時間に自宅では泣きつかれた愛娘も、いつの間にか眠りにつき、夢を見ていたらしい。

「・・・ちゃん。お姉ちゃん。」娘に呼びかけてきた男の子と女の子。「だぁれ?」「僕、チョビだよ。」「私はジョジョよ。」「いつの間に人間になったの?」「あのね。お父さんが大変なんだ。助けなくちゃ。」「???」「でもね。お父さんって呼んじゃいけないの。そうしたら、お父さん死んじゃうから・・・」

娘と私は共通の夢の中を彷徨っていたらしい。娘は自分に気がつかない。父親に声を掛けられず、腕を引っ張っていたらしい。私をあの世へ連れてゆく列車に乗せないために・・・・・。

後日談になるのだが、娘の夢に出てきたのは、我が家で飼っていたハムスター。ジョジョはある寒い晩に息を引き取っており、チョビは私の手術日に息を引き取ったとのこと。私にだけ良く慣れていたハムスターで、私の半天のなかで眠るのが好きだった。きっと、身代わりになってくれたに違いない。


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