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「トラブルコンダクター ものがたり」⑬ 僕も添乗員に・・・ [暴露ばなし]

~「僕も添乗員になれるかな?」~
あるご家族連れの中学生の男の子のはなし。
いつものようにCA(「スッチーと言うな!」とお叱りをいただいたので・・・)、チーパー
に挨拶を受け、ダンヒルのタバコ(免税)を離陸前に依頼していたときのことだ。
ご存知のとおり、B747のエコノミーは3-4-3のシート配列。4名様でご参加いただいたお客様の中学生の男の子から、話しかけられた。
「ねえ。添乗員さん。僕も添乗員になれるかなぁ~」
「添乗員になりたいの?」と私。
「だって、添乗員さんは色んなところに行けるのでしょう?」
「そうだね。でも・・・・」と親の顔を見ると母親が目配せをしてくる。
「僕たちみたいに海外の添乗員になるのは、大変なんだよ~。」
「大変って?」
「そうだね。まず社会・・・地理とか歴史を覚えなきゃいけないし・・・・。」
「地理と歴史?」
「うん。だってどこにお客様をお連れするのか、解らないと・・・・」
「ふ~ん。」
「大体、地理とか歴史の試験があるから・・・そうだね。中学校の成績で言えば最低80点は取っていないと・・・」
「それだけ?」
「それに、英語は得意かな?大人になるまでそう・・・高校生までで、英検1級は取らないと・・・・それに、他にドイツ語とか最低日本語を除いて・・・2か国語以上、しゃべれないといけないんだ。」
「そうなの・・・・・大変だな。」
「一生懸命勉強して、試験に受からないといけないんだから・・・・君もやる気があれば大丈夫かもね。」
これは嘘八百である。そんな秀才なら添乗員なんて安月給でしかも重労働で、失敗の許されない『過酷な仕事』をやるわけがない。英語が満足にしゃべれなくても「困るのは自分」。私などあいさつ程度・・しかも酷いときは「モアスロリープリーズ!」とか「パードン」と繰り返している。
『歴史』の知識も必要はない。ただ、『調べる』と言う能力があればいい話。
添乗員も傍から見れば、「ただで旅行出来ていいね」とか、「うらやましい」とか言われるのだが・・・・・。
ここではっきり言わせてもらえば、「確かにそこに行った事がある」程度しか覚えていない。どんな景色の良い場所を通っても、「この後の行程は・・・」とか、「飛行機間に合うかな?」とか最悪のシナリオも考えねばいけないし、決して楽な商売ではない。
まあ偶に「どうやってあのガイド口説こうかな?」とか「あのCAかわいいな」とか考える時間がないわけでもない。「うたた寝」しているときも「夢の中」ではお仕事をしている。
結局、この中学生ずっ~っと私の後を付いて歩くので、正直やりずらかったのを覚えている。

~エーブル・ベーカー・チャーリー・・・・・・・~
「エーブル・ベーカー・チャーリー」とか「アメリカ・ブリティッシュ・クラウン・・・・」と言って解るだろうか?
これは「A・B・C・・・・」を相手に的確に伝えるためである。
例えば私「オストド」と相手に伝えるには、「オーバー・シュガー・アンクル・タイガーオーバー・ドック・オーバー」(OSUTODO)となる。
鈴木陽一さんなら、「ミスター・ヨーク・オーバー・(ハウ)・アイテム・タイガー・チャーリー・ハウ・アイテム・シュガー・アンクル・ゼブラ・アンクル・キング・アイテム」
木村拓也さんなら、「ミスター・タイガー・エーブル・キングアンクル・ヨーク・エーブル・キング・アイテム・マイク・アンクル・」となるわけだ。
これは覚えておいて「ソン」はない話。未だ「リコンファーム」をしなければいけないエアーラインもある。
一昔前には、団体搭乗の場合には、前日の夕方に航空会社に電話すると、
「42~45のエーブル~キング。46のエーブル~チャーリ。43席。」なんて言われたものである。なるべくなら、お客様の構成にあわせた席を確保したいもの。
仮に全てのお客様の構成が偶数参加ならば、B747の3-4-3のシートは命取りになりかねない。そこで、「42~45のチャーリーとハウは返却するので、46・47の
ドッグ~ジョージまでくれないか?」と交渉していたのである。
まあ、今ではそんな芸当もできないのだが・・・・。
当時、この交渉は早い者勝ち。つまり他の団体用の席もブロック取りすることもしばしばあった。飛行機の中であっちこっちで『つるし上げ』を喰う「どんちゃん」つまりどんくさい添乗員も見られたのだが・・・・人の事などどうでもいいこと。
一番大事なのは、自分のお客様が不愉快にならなければいいことだ。


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