SSブログ

「ツアコンとガイドの違い・・・」 第4章 「ツアコンは気楽な稼業ときたもんだ?」① [旅行のイロハ]

「ツアコンのこぼれ話」

さて・・・旅行の初日のお泊りは大きな温泉場でございます。
ここで・・・気をつけなくちゃいけないのが・・・前回、別のツアーで訪れたときみたいに・・・
「食中毒未遂事件」に気をつけねばなりません。
前回は到着が遅れたので・・・助かったけど・・・今回は大丈夫なんでしょうか?支配人に念を入れておきましょう。

「もしもし・・・トド観光のツアコンのオストドだけど・・・」
「はい・・・お待ち申し上げておりました・・・」
「あのさ・・・今日のルームくれる?」

ルームとは・・・割り当ての部屋番号のこと。大体・・4~5名様一部屋とか、色々な条件があるんです。
このとき割り当てられた部屋番号・・・ついでに私の部屋とアシカ嬢の部屋番号も聞いておきます。
まあ・・・オマケとして白熊ドライバーの部屋番号も聞いておきます。

「ええと~2名様が10ルーム。3名様が2ルーム。4名様が・・・ですね?」
「うん・・・そう!ついでに・・・私の部屋と乗務員の分もお願い!」
「かしこまりました・・・・〇階の〇〇〇~〇〇〇が2名様・・・・・」

このとき・・オストドの手には、「館内案内図」が用意されている。
そこの隅っこには・・大抵、部屋名称と名前を記入できるようになっている。そこに・・・2だの3だの数字を書き込む。
お客様のお部屋全室と乗務員の部屋も私の部屋も確保できれば、問題がない。
ただ・・・困るのがツアコンの部屋が同じホテルに取れないケースがある。
私の話ではないのだが、「マーシー」と呼んでいた同僚に聞いた話をご紹介しておこう。

「いやあ~オストド。お前のおかげで偉い目に遭ったんだからな・・・」
「どうした?」
「あのさ・・・お前、スキーツアーの添乗断っただろ・・・」
「当たり前じゃない。俺・・スキー得意じゃないしさ。それに・・銀座のホステスのお姉ちゃんとワントゥーワンでヨーロッパに行ったほうが楽しいじゃない!」
「だ・か・ら・・・俺が酷い目に遭ったの・・・」
「そう?いいから・・言ってごらん。ラクになるよ・・・・」

オストド・・・危険察知能力は人一倍優れているんです。アサイン表を見たとき・・・「こりゃ・・なんとかしないと・・・」と銀座のお姉ちゃんに前から頼まれていた「お仕事」を強引に入れてしまいました。だって・・・男と見ればすぐ色目を使ってくる会社の受付のお姉さまが相棒のツアコン。貞操の危機を感じましたし・・・・

「あのよ・・・あそこのホテル。お前も知っているよな?」
「ああ・・あそこ・・・確か儲け主義でさ・・・ロハのツアコンは・・・男女の区別なく一部屋にするじゃない・・・」
「そうなんだよ・・・それやられたの。」
「馬鹿だなぁ~前もって・・・言っておけば良かったじゃない・・で・・・3泊4日一緒の部屋に泊まる運命だったと・・・」
「そう!到着したらさ・・・そんなアサインになっていて・・・」
「で・・・押し倒したとか?」
「馬鹿野郎!冗談じゃない・・・すぐホテルと掛け合ったけど・・・」
「ふんふん・・・でもあそこ・・・金に汚いからな?それでどうした?」
「まさか・・・一緒の部屋に泊まるわけいかないじゃん・・・俺・・・・」
「一緒に泊まって・・・一緒の布団に寝れば良かっただろ・・・まあまあだよ・・・アレ!」
「馬鹿!そうでなくても・・・飲みに行こうとか誘われているんだぞ・・・」
「そう・・お前だけじゃないぜ・・・男なら誰でもいいみたい・・・それで・・・結果はどうなったんだ?・・俺・・すぐ出発なんだけど・・・」
「今度はどこだ?」
「パキスタン・・・・」
「げっ!変なとこ行くね・・お前・・・」
「俺もそう思うけど・・・・まあ・・・危険手当付くし・・・保険も1億だってさ・・・普段3千万しか付けてくれないのに・・・」
「まあ・・・お前も酷い目に遭って来い!」
「残念でした・・・ガイドも前回と一緒だしね・・・俺・・向こうに拳銃預けてあるもん!」
「物騒なもの持っているな・・・そんなにヤバイのか?」
「いや・・・万一用かな・・・まあ・・・密輸商人ともお友達だし・・・大丈夫だろ・・それより先を話せよ!」
「ああ・・・どこまで話したっけ?」
「一緒の部屋に泊まったところまで・・・」
「だ・か・ら・・・違うって言うの!」
「そうなの?」
「ああ・・俺さ・・・ホテルに掛け合ったんだけど・・・部屋が空いて無くてな・・・」
「うんうん・・で一緒の夜を過ごして・・・・やっちゃって・・・ってオチなんだろ?」
「お前ねえ・・・まあ・・いいや・・それでさ、俺寝るところなくて・・・結局、宴会場に布団敷いて貰ったんだよ・・・」
「まあな・・・ツアコンが客と別のホテルに泊まるわけいかないしな・・・まだ・・・何か隠してないか?」
それがさ・・・草木も眠る‥・丑三つ時・・・・」
「あのさ・・・俺・・・幽霊モノ弱いんだわ・・・まさか・・・アレの生霊が現れたんじゃないだろうな?」
「それより・・酷いよ・・・枕元に座り込まれて・・・あたしの事キライですか?ってやられてみろ・・・」
「うんうん・・・それで・・情に流されて・・やっちまって・・・ゴムに穴開けられたとか・・・」
「お前じゃない・・・アレだぞ・・アレ・・・」
「でもさ・・・部屋暗ければ・・・」
「馬鹿っ!あっちは正社員だろ・・・こっちはアルバイトみたいなものじゃん。」
「契約と言え・・契約・・・・それでどうした?」
「ああ・・このスケジュール見ろよ・・・あんまりじゃない?」

確か・・・彼のスケジュールは、女子大生のグループなどとヨーロッパ方面とか、フルムーンツアーばっかりだったのだが・・・すべてのスケジュールが書き換えられていて・・・・日帰りや老人会の旅行で埋め尽くされていた。

「ああ・・・こりゃ酷い。女の恨みhじゃ恐ろしいからねえ~」
「他人事みたいに言うな!」
「他人事だもの・・・」

そこへ・・・アサイン担当から内線電話が鳴り響く・・・どうやら・・女子大生グループのツアーは私が行くことになったようだ。

「悪いな!俺が・・・ヨーロッパツアー付いちまった・・・」
「てめぇ~土産持って来いよ・・・土産・土産・・・・」
「解ったって・・・飲み会のセッティングすればいいんだろ?」
「ああ・・・それからな・・・一番可愛いのには手を出すなよ!」
「了解!じゃあ・・ちょっくら・・8日間ほど行ってくる・・ん?パキスタンから帰国が夜9時過ぎじゃん・・・それで・・翌日のスタンバイが・・げっ!朝5時半・・・」
「じゃあな!土産忘れるなよ!」
「ああ・・・・」
このような酷い目(私だったら・・・ネコにカツオブシ?だったかもしれないけど・・・)に遭遇してもツアコンはお客様と同館つまり、一緒のホテル内に居なければならない。「万一の火災などの事故に早急に対処しなければならない」のだ。

そうそう・・・ホテルに念を入れるのも忘れてはいけない。

「了解!じゃあ・・・部屋割りは到着時にお渡しします。それより・・支配人さん空いている?」
「はい・・・どのようなご用件でしょ?」
「ちょっと・・・確認したいことがあってね」

実は・・前回泊まった時にお客様を宴会場へ誘導を始めたときのこと。支配人が血相を変えて飛び込んできた。

「オストドさん。お客様に茶碗蒸し食べないで!と伝えてください。」
「はあ?どうして・・・」
「実はですね・・・・」

オストドたちの到着1時間前に先乗りしていたJ社のお客様が茶碗蒸しを食べて・・・「酸っぱい」と言い出したのだ。
よく調べてみると・・・卵を保管してあった冷蔵庫のコンセントが抜けていたことが判明したと言うのだ。

「どうするのさ?お客様誘導しちゃう前だったら・・・片付けられたのに・・・」
「何とかなりませんか?」
「クレーム必死だね。俺・・・看板外して帰らないといけないかもね・・・」

看板を外す・・・つまり・・・旅行社の協定を外すということ。そうなれば・・団体ツアーで食べているホテルは死活問題。
1社が外せば・・狭い業界。次から次へと外してゆくことになる。

「あのぉ~お力をお貸しいただけませんか?」
「そうねえ~」

こういう場面を「カモがネギと鍋とコンロと調味料・・一切合財背負ってやってくる」と言うのだ。
結局、お客様にはお詫びとして、宴会時飲み放題。冷蔵庫無料解放。お土産付きで手を打つことにしたのだ。
お客様が席で待っているので、すぐ踵を返して戻ってゆく・・私。

「皆様・・本日は大変お疲れ様でございました・・・明朝のご朝食はこちらで7時から出発は8時でございます。それから・・・ひとつお詫びを申し上げねばなりません。目の前にある茶碗蒸し・・まあ・・すっかり冷えておりますし、衛生面の心配もございますので、片付けさせていただきたいと存じます。そのお詫びとして本日のご夕食時のお飲み物、冷蔵庫は全てホテル側よりサービスさせますので、ご了解のほど宜しくお願い申し上げます。」

こんな事件?のあったホテルにまた泊まる羽目になろうとは・・・・よっぽどオストドはついていない。

「もしもし・・お電話代わりました。オストドさんお久しぶりでございます。」
「ああ・・支配人?また・・お世話になります。ところで・・・今日は大丈夫だよね?」
「ええ・・・万全の準備をしておりますので・・・・ご到着は?」
「多分・・・6時廻るかな・・・」
「かしこまりました。」

急いで電話を切り・・・バスに大きな荷物を担いで駈け戻ってゆくオストド。
その荷物は「車中のゲーム大会の景品」と称して、半分脅かして土産物屋からせしめてきた・・・グッズ。
総額で・・・多分1万円はくだらない。土産物屋にしてみれば、「強盗」にでも遭遇した気分だろうが、知ったこっちゃない。お客様に沢山の思い出を持って帰ってもらうのが、ツアコンの使命なのだ。
最後の観光地を出発して・・バスは何も無いようなところをひた走りに走る。
ガイドのアシカ嬢に今夜の宿泊地宛クイズの結果発表や、台数当てクイズ。到着予定時間当てクイズをやってもらって・・・せしめてきたお土産をジャンジャン大放出する。その間に・・・どのお客様をどの部屋に押し込むか?
ウンウン唸りながら・・部屋割りを作成しなければならない。
海外のホテルだったら・・・こんな手間がいらないのだが・・・・


「ツアコンとガイドの違い・・・」 第5章 「ツアコンは気楽な稼業ときたもんだ?」②






nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:お笑い

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0