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「ツアコンとガイドの違い・・・」 第5章 「ツアコンは気楽な稼業ときたもんだ?」② [旅行のイロハ]

またまた・・事件勃発!!

あれだけ・・・「今日は何も無いよね?大丈夫だよね?」と確認してあったのに・・・・
悔やんでもしょうがない。クヨクヨ悩んでいたら・・・ツアコン稼業は務まらない。
心なしか・・今夜の宿泊地が近づくにつれ・・・ドライバーの白熊さん。ガイドのアシカ嬢は、うれしそうに見える。
そりゃあ~翌日の出発まで彼らがすることと言ったら・・・バスの清掃と燃料チェックだけ。
あとは・・・夕食を食べ、好きなときに温泉に浸かり・・・好きな時間に布団に潜り込めばよい。
しかし・・・ツアコンの仕事はこれからが本番。今までの業務は「ほんのオマケ」みたいなもの。
一応・・・ツアコンの勤務時間は朝8時~夜8時までが原則なんだが、原則は破られるためにある。
「ある」と言うより・・・こんな言葉を信じるほうがオカシイのだろう。

「オストドさん・・・・今夜の約束忘れちゃ駄目よ・・・」アシカ嬢に念を押される。今夜・・・飲みに行く約束になっている。
「忘れてないけど・・・何かあったらごめんね!」 バスを降りながら答える私。勿論・・・小声の会話。

決まって・・ガイド嬢と「飲みに行こう」と言うことになると何かあるのが・・・ツアコンの辛いところだ。
バスの到着を確認するとぶっ飛んで出てくる支配人。そりゃあ~前回の「食中毒?未遂事件」を、J社のツアコンと一緒に口裏を合わせ(口止め料も貰っちゃったし・・・)ウヤムヤにしてしまった「恩」か「怨」かは知らないが、支配人の首はまだ飛んでいない。

「オストドさん・・・お疲れ様でした。」
「支配人・・・また、お世話になります。」

この・・・ミステリーツアー。毎日行き先が違う。まあ・・・平たく言えば・・・空いているところに押し込み、安く上げる算段をしているのだけれど・・・

「今日は・・・本当に大丈夫ですよね。こんな暑い日だったら・・・シャレにもなりませんよ・・・」
「ええ・・・大丈夫です。ちゃんと・・・毎日冷蔵庫の電源確認してますから・・・」
「他は?例えば・・・温泉がタダのお湯とか・・・」
「うっ!痛いところを・・・・」

オストドがツアコンをしていたころの「温泉」の分類は厳しいものだった。今は・・・自噴が少ないところに水を足して、温泉と言っているところもあるし、まあ・・・地下水にいくつかの決められた成分が含まれていればいいらしいけど・・
中には・・・ろ過循環のくせに・・・天然温泉とはこれ・・・サギ商法じゃないの?と言いたくなるほど。
中には・・・自噴の温泉では全部の浴槽に充分行き渡らないので、水を足しているところもあるくらい。

さて・・・ここで、ホテルにたどり着いたツアコンの仕事をまず・・ご紹介しておこう。
まずは・・・チェックイン業務が何より優先される。コンピューターが打ち出したものや手書きのもの等がある「宿泊クーポン」を2枚発行する。
一枚はお客様の分。決められた宿泊費・それらに伴う税金・サービス料・入湯税を一括で切る。
もう一枚は・・・乗務員さんの分の宿泊費やツアコンの宿泊費の分。
ホテル側が「ボケ~ッ!」としていれば、一枚で全て切ってしまう。
何故・・・2枚で切るのか?お客様の分は送客手数料として・・・大体10%~13%のリベートが会社に支払われる。
もう一枚のほうは、業務クーポン。つまり・・・お客様ではないので・・・リベートは支払われない仕組み。
ついでに・・・部屋割り表を一枚提出する。これが・・・即座に数枚コピーされ、私の手元にも一枚返ってくる。
これが・・・客室係とか各部門に散ってゆく。だから、旅先のホテルにご自宅から電話が入っても、すぐ繋がるのだ。

そのチェックイン業務を終えると・・・大体一塊になったお客様に、簡単なホテルの施設案内をしてもらう。
勿論・・・お世話にはなりたくないけど・・・非常口の確認も含まれる。
その後、お客様にお部屋のカギを配り終え、夕食の場所・時間を伝えることも忘れてはいけない。
その後、自分の部屋・・・大体・・洋室を割り当てられる。所謂・・・通称「ツアコン部屋」へ荷物を放り込むと、お客様の部屋へご挨拶廻り。
部屋についての確認はこのとき行うのだ。今回は時間が押しているので、パスするけど・・・VIPのお客様のお部屋にはお伺いしなければいけない。
間違えて欲しくはないのだが、ここで言うVIPとは・・・もちろんVIPも含まれるけど・・・最も注意を要するお客様のこと。
集合時間に遅れてくる人や何かあれば・・・「俺はオタクの会社の上を知っているんだ・・・」と脅しをかけてくる馬鹿・・
じゃなかった・・・お客様。まあ・・・こっちも腹を据えかねて・・・・「二度とツアーに乗れないようにブラックリストに上げること出来ますけど・・いいんですか?」とやることもある。
こう言うお客様のことを・・・「虎の威を借りる馬鹿」と私たちは呼んでいる。適当に持ち上げておいて・・・後でストン!と落としてやるのもしばしば・・・まあ・・・「ブラックリスト」の存在は闇の中にある。
もし・・・あなたが・・・色々なツアーに申し込んでも、「生憎満席でございまして・・・」とやられれば・・・その旅行社のブラックリストに載っている可能性があるので・・・あんまり「虎の威」を借りないほうが利口だと思う。
ツアコンの横の繋がりは大きい。ましてや・・・色々な旅行社のツアーに乗る・・・「プロのツアコン」にチェックされたら・・
あとは・・・個人で旅をするしかなくなる。
ましてや・・・政治家の名前とか、政党とか・・・ロータリークラブやライオンズクラブの名前を出さなければ、自分をアピールできない人間は、殆どブラック扱いになっているので・・・ご用心・・・・

次に・・ツアコンのする業務は、宴会場と呼ばれる夕食の場所の確認。特に和風宴会スタイルなら・・・お客様の人数に合わせて・・・席を決めておかねばいけない。ついでに・・・お料理のチェックも欠かせない。
何しろ・・・最近喰い飽きている・・宴会料理。オストドの分の席はそこにはない。
「後で・・・お好みでラーメンでも食べるからいいよ・・・」と申し出ている。ラーメンにおにぎり・・その他、出来立ての物のほうが、美味しい・・・・

無事・・・鬼門のお客様の夕食が通常どおり始まって・・一安心。お客様の食事中に・・・私もお好みに駆け込んで食事をいただきます。ものの・・・20分ほどで食べ終わり(注文して・・出てきてから・・・5分ほどですけどね。)、宴会場へ駈け戻ります。・・・早いお客様から・・遅いお客様を見送れば・・・・大体・・・8時半ごろ。一応・・・・勤務時間は終わりです。
後は・・・アシカ嬢と一杯飲む前に・・・「お風呂」に入らなければいけません。
スーツを脱ぎ捨て・・・浴衣に着替えると・・・なにやら・・・部屋の前ですすり泣く・・・声がします。
「ま・・・まさか?また?何かあったのか?」 大体・・ツアコンの「嫌な予感」は当たります。
ドアから顔を出すと・・そこには浴衣姿のAさんとBさんの二人組の若い女性・・・

「ど・・どうしました?」
「ちょっと部屋へ来てください。」

オストドの腕を引っ張っていこうとする二人。

「ちょ・ちょっと待ってください。ご用件は?」
「部屋の様子が変なので見て欲しいのですけど・・・」
「はぁ・・・でも・・・着替えるのでちょっとだけお待ちください。」

今・・・脱ぎ散らかしたスーツに再び着替えるオストド。まさか・・・ツアコンが浴衣姿でお客様の部屋に行くわけには参りません。スーツを身に纏い、ネームプレート・腕章を付けて出来上がり・・・これなら・・・公私の公・・つまり、他のお客様に見つかっても・・・言い訳が出来ますし・・・・

結局・・・事の真相は布団を敷きに入室した下請けの作業員がどうしても・・・観たいテレビがあって・・敷いたフトンに寝っころがり、TVを観て、タバコを吸っていったのが真相。

「無くなったものはないですか?特に・・貴重品ですとか・・・下着ですとか・・・」
温泉場で多いのが下着ドロ・・・酔っ払いのいたずらも多いけど・・・施錠はオートロック。内部犯行しかありません。
慌てて荷物を調べてもらうと・・・OKとの事。・・・段々・・・怒りが心頭に達してきたオストド。
アシカ嬢との飲み会は・・・パア!間違いありません。

「すみません。ちょっと電話お借りできますか?」

オストド・・・フロントに電話して帰宅した支配人を呼び出させます。とにかく・・・支配人に頭を下げさせるしかありません。慌てて駆けつけてくる支配人とマネージャー。オストドの説明を聞くと・・・顔色がみるみる青くなります。

「こんな部屋でお休みになるのは気持ち悪いですよね?」 お客様に確認します。
「ええ・・・気持ち悪いです。」
「支配人・・・お聞きの通りだけど・・・他の部屋は?」
「それが・・・生憎・・・・」
「貴賓室も空いてないの?」
「空いておりますが・・・」
「ホテル側の責任だよね。すぐ・・カギをお持ちしてください。嫌なら・・・看板外して帰りますけど・・・」
マネージャーが貴賓室のカギを持ってきて・・・すぐお二人様にはそこへお移りいただきます。
もちろん・・・オストドがチェックをしたのは当たり前ですけど・・・・
その後・・・事後策を話し合うために・・・支配人・フロント責任者・客室責任者を交え・・・ホテルのラウンジへ・・・
「本当なら・・・ここで楽しく飲んでいたのに・・・どうしてやろう・・・・」怒りはMAXです。
「何をお飲みますか?」
「俺・・ヘネシーしか飲まないもん!ヘネシー瓶ごと持ってきて!」
全員にも・・・ヘネシーを強要します。結局・・4人で3本半も空けてしまいましたけど、酔うに酔えない・・・この気持ち。

「それで・・どうお詫びするつもり?」
「どうすればいいんでしょうか?」 支配人はオストドに案をださせようとする。
「そうだな・・・不愉快な想いをさせたわけだから・・・旅行代金の倍返しと・・・お土産・・・お車代でいいんじゃないかな」
「それで・・済みますか?」
「まあ・・・誠意を伝えるしかないね・・・一人あたり・・・そうだな・・・計算すると・・・・」

電卓を叩き出すオストド。そこには・・・一人当たり15万円の数字。
それと・・・ホテルからのお土産・・・名産品の詰め合わせ・・・3万円分。

「これで・・大丈夫ですか?」
「まあ・・・なんとかするよ。でも・・・日報には書くからね・・・今度ばかりは目をつぶれないし・・・」
「そ・・そんなぁ~」

まあ・・ここからはダークの部分。オストドしっかり超過勤務代を稼がせてもらったのは言うまでもないこと・・・


「ツアコンとガイドの違い・・・」 第6章 「ツアコンは気楽な稼業ときたもんだ?」③へ・・続く。





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