飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!イスタンブール! ⑲ [2010 夏 イスタンブールの旅]
最終章 カイロ~成田のフライトとちょと・・ムッとした話
まず、最初に断わっておかなければならない。
オストドは独裁者ではない。(仕事上では、やむを得ず・・・そう!やむを得ず威張りくさっている)
ましてや、奴隷制度も完全否定者だし(仕事上では、奴隷以下の様にコキ使うこともあるけど・・)
平和主義者(仕事上では、喧嘩を売る・・だけど、良いモノを造るためだ・・・)である。
もうひとつ言わせていただければ、女性軽視者ではない。
「女性はちょっとねえ~」と言う場合もあるが、それは財政上とか安全上止むを得ず言うのだ。
限られた空間では、女性のための専用更衣室やら、休憩室おまけにシャワーにトイレなんぞ
設けてあげたくても、許される“ご予算”には限りがある。
まあ、「見たきゃ見ればぁ~」と堂々と着替える女性もいるし、「女扱いしないで・・」と言う
うら若き女性も増えてきている。中にはコッチがセクハラを受けているのでは?と思う。
事もしばしば遭遇する様になった。
まあ、いずれにせよ・・・若気の至りという奴だろう。
確かにオストドも、まだガキの頃は、血気盛ん!言いかえれば、15歳では完全に不良であったし、
今思えば、ヤリタイ盛りにはヤリタイ放題の生き様を送ってきた。
従って、他人の迷惑顧みずはオストドの専売特許だったかもしれない。
偶に・・「よくこんなのと結婚したよね?」とメストド1号に尋ねることがある。
返ってくる答えは・・・皆様ご存じの通り・・・ではなく、
「まあ・・いいんじゃない?今も変わってないけどね・・・そんなに・・・」である。
思わず、こんなに温厚で優しい旦那で文句あるのか?と喧嘩を売るところではあるけれど、
子育ての99.9999%をメストド1号に押し付けたオストド。
オシメなんぞ代えた事もないし、節目節目の記念行事さえ、運動会に2回、卒業式に1回しか
行ってはいない。ましてや、少々残念だったのは、娘と一緒の入浴なんざ一回もしていない。
「世界は俺が飛びまわるためにあるんだぁ~」と戯言を言い、年間300日も家を開ける馬鹿
それが、オストドだった。
そんな生活の中ひとつだけ・・そうひとつだけ学んだのは、飛行機と船は同一の言語なのだろう。
機体=シップ。機長=キャプテン=船長。客室=キャビン。様々な言葉が一緒なのだ。
従って、破ってはいけない決まりがある。いかなる理由があろうとそれなりの料金を支払い、
それに対する対サービスを楽しみ、くつろぐ他のお客の気分を害してはいけない。
どうしてもと言うことであれば、キャビンの責任者もしくは、キャプテンの許可を得て、
彼等の責任において、足を踏み入れなければならない。
その事を真っ先に弁明ではないが、申し添えておいて、本文に戻ろう。
文中に女性蔑視の発言も出てくるが、敢えてそのまま掲載することをお詫びするべきだろう。
少々、時間を遡ることになる。
F5ゲートでまず一発目のオストドの暴言から、この話はスタートせねばなるまい。
「ったく・・・どうして女の添乗員は・・・」
「あら?聞き捨てならないわね?女性蔑視かしら・・・」
「いやね・・そんなつもりは・・・」
「ありそうですけど?」
「いや・・一般論。昔から変わらねぇ~な!女性添乗員は・・・頭痛ぇ~」
「そういえば、その女性添乗員たちに、講義をされていたのは・・どこのどなた?」
「えっ?」
オストドは頼まれると嫌と言えない性格が災いしたのか?それとも・・であるけれど、
女性限定という条件付きで、とある専門学校の教壇に立ったことがる。
確か・・生徒の大半を地獄のロールプレイングで泣かせたこともある。
そのせいかもしれないけど、バレンタインデーにカラシがタップリと詰め込まれたチョコレートを、
飲みこむ羽目になったこともある。
「昔はね・・・まったく・・ラベルじゃなかったレベル落ちたよなぁ~」
「そりゃあ~あなたは・・AAAだったっけ?」
「最終的にはAAA+だけど・・・」
「そうでしたわね!それで?」
「ったく・・・相変わらずと言うか・・・あれじゃあ~お客様が可哀そう!」
オストドは昔・昔そのまた昔を思い出していた。カルガリー空港での1コマが鮮明に思い出される。
ナイアガラの滝、トロント観光を終え、エドモントンから、カナディアンロッキーを巡り、
カルガリーから、バンクバーへ飛び、駆け足観光を行い翌朝には、成田へ飛ばねばならなかった。
いつもなら、順調にこなすハズのスケジュールなのだが、運悪くフライトキャンセルを喰らったのだ。
その便には、オストド率いるツアーの他に、もう2団体。それも女性添乗員のツアーが乗りこむことに
なっていたのだ。
「おかしいな・・・」 その頃AAA+の評価を頂くツアコンに成長していたオストドは嫌なモノを感じた。
しばらくすると、アナウンスで呼び出され、カウンターでの攻防戦が始まった。
何しろ、世間一般の夏休み。しかもお盆の最終日に成田へ辿りつくツアー。
翌日のバンクバー~成田間はフル。つまり、満席との情報を得ている。直行以外もそうだ。
全ての便がフル。翌日も空席はない。そんな中でのフライトキャンセルだったわけだ。
「今日の便は全て満席。明日なら空席確保します。」
「冗談じゃない!こっちは明日の今頃は成田へ向かって飛ばなきゃならないんだ!」
顔は平静さを装い、散々悪態を日本語で口走る。他の女性添乗員は突然の出来ごとに泣きだす。
何しろ、想定外の事が起こったのだ。プロならこれを最小限度の被害に押さえねばならない。
「ったく・・・いいよ!俺が交渉するから・・・」
交渉の結果、バンクーバーから飛行機を持ってくることになった。その間のミールクーポンの交渉や、
到着地で待っている現地ラウンド。日本の統括へも連絡しなければならない。
それらを全部やり方を教え、挙句の果てには、機内アナウンスまでオストドがやる羽目になった。
「ったく・・プロなら、こんな間際に説明するなって・・・それともお客が馬鹿だから覚えきれないのかな」
「えっ?」
「だって・・殆ど・・オバタリアンと哀れな同行者・・・」
「もう!いい加減にしなさい!おしゃぶりでも咥えて!」
オストド&メストド1号にアサインされていたのは、Bコンだった。
予約した際は、3クラス運行だったのだが、2クラス制の最新型に代わったのだ。
その連絡が遅かったので、Bコンに割り当てられてしまったわけだ。
「あちゃぁ~嫌な予感がビンビンするわ・・・」
「えっ?」
「まあ・・いざとなれば叩き潰してやる!」
「女性を?」
「いや・・俺は女性に振り下ろす拳はないよ!ヤローならやりかねないけど・・・・」
「いい子にしててよ・・・・」
「奴らがいい子ならね・・・」
そう言いながら、B777-300ERに乗り込んだのだ。
足元は広い・・・
メストド1号はヤバイ!と思ったのだろう。いつもなら、窓際の席はメストド1号の指定席。
「ねえ・・窓際に座らない?」
「えっ?」
「放っておくと何かやらかしかねないから・・・」
そんなわけで、シートをチェンジすることになった。まあ、オストドの目論みはブロックされたのだ。
ちょこまか来やがるものなら、足を引っ掛けて転ばせてやる!と思っていたのだが、そんな企みは
メストド1号には、全てお見通しだったのだ。まあ、以前にもしょっちゅうやっているわけだから、
判らなきゃよっぽど忘れっぽいタチなのか?それとも・・であるけれど・・・・
「やはり・・ツアコンは男の商売だな・・・」
「何で?」
「見てみな!あの男性添乗員。スマートでしょ?ああじゃなきゃ・・・それに比べ・・・」
「まあねえ~」
男性添乗員は殆ど最後に乗りこみ、自分のお客様であろう斜め前に座るご夫婦に、ご挨拶と
機内で困ったことがあれば、客室乗務員(日本人が乗り込んでいる)を通じて、自分へ連絡する様に
伝えているのだ。それが済むと、男性添乗員は後方の自分の席に消える。
「うんうん・・・昔ちゃんと伝えた事が、守られている!それに比べて・・あの馬鹿共・・・」
「もう!女性は荷物が多いんだから仕方がないでしょ?」
「仕方がないねぇ~荷物をヒトにぶつけていって、お詫びすらない・・・」
「ヒト?トドの間違いでしょ・・・」
「まあ・・何とでも言って!まあ、ドサクサに紛れたからいいけど・・・」
オストドはちゃんとその報復はしてあったのだ。無礼な振る舞いには無礼を返す。
これが、オストドのオストド流でもある。まあ、それが何かは口が裂けても言う訳にはいかない。
「しかし・・・落ち着きがねえやっちゃ・・まだ、飛行前だからギリで許すけど・・・」
通路を行ったり来たりする女性添乗員達を見て、ため息をひとつ吐く。
「あいつらの・・・先生は何を教えているんだか・・・」
「はいはい・・トリプルAさん。」
「AAA+だってば・・専門学校の教壇にも立たされたんだよ!」
「だったわねえ~」
「そう!鳥肌は立つし、最悪だったな・・・」
19:50 ドアがクローズされる。どうやら、少しでも遅れを取り戻そうとしているらしい。
19:55 プッシュバクされる。そして、20:00丁度。定刻より、3時間15分遅れてタキシング開始。
ランウエイ05Cより、20:06。カイロの空へテイクオフされ、帰国の途へ着く。
機内食・・多分、夕食。勿論、完食したのは言うまでもない。
腹の川が張れば、眠たくなるのが自然の原理である。
それでなくても東行きは夜が短い。ウトウトしかけた瞬間。睡眠妨害にまた・・あの女性添乗員が、
勝手に超えてはならぬ境界線のカーテンを開け、ビジネスクラスへ闖入してきたのだ。
ギャレーで楽しそうに談笑でもしているのだろう。声が大きくて眠ることなどできない。
「ねえ!やっぱりあいつら・・ぶん殴ってきていいかな?」
「あれ?女性に振りおろす拳は持ってないんじゃなかったっけ?」
「だ・か・ら・・振り下ろすんじゃないの!振り上げるだけ・・かな・・・」
「それでも駄目!でも・・迷惑よね・・・」
帰国後、その旅行社は書きとめておいたので、クレームレターを差し出した。
彼女らに言わせれば、何でも行きの機内でお客様の服を汚されたとか・・・
そんな事はどうでもいい話である。プロならば、その場で対処しなければならない話。
もうひとつ、ビジネスクラス用のチョコレートを山の様に持ちだした事件もあったのだが、
これは同行しているお客様に配ったとのことだが、これも間違いである。
敢えて旅行社の名前は明かさないけど、こんなアホらしい言い訳を尤もだと告げてくる
大手の旅行社は嘆かわしい。
その昔、「VIPがいるから注意と心配りよろしく!」と某テレビ局のお偉いさんと奥様を連れていった時、
運悪くCAがその奥様のお召されていた洋服にワインを掛けてしまったことがある。
それだって、適切な処理をその場で行う。これが添乗員の鉄則である。
「う~ん!やっぱり・・質落ちたなぁ~」
「あのね!あの子たちはアルバイト感覚じゃないの・・・」
「俺はどうだったろう?がむしゃらに働いていたからね!」
「あんたは・・水を得た魚さん!」
まあ、天職と言えばいいのか、世話好きが高じたのか?定かではない。
記憶の片隅に残っているのは、武器と麻薬以外は全て“商売のタネ”だったということだけだ。
もう、自然には眠れそうにないので、いつものお薬を取り出し、半分量だけ飲む事にした。
これで少しは睡眠を摂ることが出来る。
久しぶりにツアコン時代に冷や汗を掻いた時の事を夢でみた。
一度だけ、そう一度だけ・・・寝坊をした事がある。連続勤務85日目くらいの朝だっただろうか?
疲れのせい。そう・・連続勤務の疲れか?それとも朝方にホテルへ戻ってきた報いなのか?
幸い、オストドは出発時間の5分前には何食わぬ顔をして、バスに乗り込んだのだったが・・・
あの時と同じ様に慌てて飛び起きると、ビジネスクラスのシートをフルフラットに倒し、そこに
シートベルトで締めつけられていることに気が付いたのだった。
「ふう!夢か・・・」
窓のシールドを開けると、朝の光が飛び込んで来た。
「そろそろ・・か・・・」
朝食が運ばれてくる。日本時間で言えば、ちょっと早いお昼ご飯の時間だけど、目覚めたばかり。
この旅最後の機内食を食べ終え、ゆっくりとコーヒーを飲んでいると眼下には、懐かしい
日本の景色が拡がっていた。
そして、9604Kmの旅を終え、静かに14:10。最終目的地である成田空港16Lにランディングした。
― あとがきに代えて -
帰国したオストドとメストド1号を待ち受けていたもの。それは心労と仕事の山だった。
ついでに言えば、メストド1号には“転勤辞令”が待ち受けていた。
オストドのお父様である社長は、“表向き”熱中症と言うことにして、病院へ緊急入院させたり、
いろいろな事が怒涛のごとく、オストドとメストド1号を飲みこんでいった。
本来ならば、すぐに完結編まで書くつもりでいたのだが、公私共々、多忙を極めていたし、
お仕事のおつきあいと言う奴で、ヤローだけの旅にも出かけ、「部屋なんかいらなかったな!」と
朝方近くまで、モミジ会の会合が続いた。
年末年始は、万座に緊急退避もした。何故ならば、オストドの数少ない休日は、お父様の件で、
散々メストド1号共々振り回されていたからだ。
「越年はしないだろうな?」と思っては居たのだけれど、寄る年並みには勝てない。
「んっ~オッサンになったのかな・・身体がしんどい・・・」とほざけば、
「そりゃあ~昔みたいには行かないわよ!」とメストド1号が切り返す。
ふと・・・気が付けば、明後日にはまた旅にでる。お伴は相変わらずメストド1号である。
果たしてどんな旅になるのであろうか?更に今年はメストド2号が留学するとほざいている。
何でも、一年ほど行くとのこと。多分、彼女が貯めたお金だけでは足りないはず。
「齧れるだけ・・齧っておけ!今のうちだけだぞ・・・・」
散々齧られた・・“親の脛”を差し出すことになのだろう。
その留学先にも訪ねなければならないし、海外発券の宿命で、また、イスタンブールへも戻る。
おまけに言わせてもらえば、社員旅行もあるし、温泉逃亡の旅もあるだろう。
「なんかさ・・・旅するために働いているわよねえ~」
「まあね・・・これが趣味かな?」
「趣味の域は越えてきた気がするけど?」
「そう?まあ・・・確かに、ソウル発券、シンガポール発券、コロンボ発券そして・・・・」
「最後の旅はいつになるのかしら?」
「そうねえ~多分、使われなかった片道分のEーチケットを握りしめて、あの世行きかな?」
「ねえ!そうなる前に!」
「だよねえ~判っているさ!ファーストクラスでの世界一周だよね?」
「あと・・どれくらい飛べば気が済むのかしら?」
「一生治らないよ!だって・・俺。空飛ぶ食欲魔人辞める気ないもの・・・・」
まだまだ・・メストド1号に見せたい景色がそこにはある。
世界の絶景の実物を見せてあげたい。オストドが旅から旅へと見てきた景色。
これからもまだまだ・・・旅は続くのだろう。
最後までお付き合いをいただきありがとうございます。
オストド&メストド1号はちょっくら・・・マイル消化の旅に出かけます。
「でも・・つくづく馬鹿だよな・・・小龍包食べにだけで行くかね・・普通・・・」
「普通じゃないのが・・・・」
「まあね!」
「どこに行こうかな?懐かしい・・・」
「ひとつ・・お手柔らかに・・・ダイエットは・・・帰ってきてからでいいよね?」
2頭のトドがまた・・次の旅に出るのだ。
まず、最初に断わっておかなければならない。
オストドは独裁者ではない。(仕事上では、やむを得ず・・・そう!やむを得ず威張りくさっている)
ましてや、奴隷制度も完全否定者だし(仕事上では、奴隷以下の様にコキ使うこともあるけど・・)
平和主義者(仕事上では、喧嘩を売る・・だけど、良いモノを造るためだ・・・)である。
もうひとつ言わせていただければ、女性軽視者ではない。
「女性はちょっとねえ~」と言う場合もあるが、それは財政上とか安全上止むを得ず言うのだ。
限られた空間では、女性のための専用更衣室やら、休憩室おまけにシャワーにトイレなんぞ
設けてあげたくても、許される“ご予算”には限りがある。
まあ、「見たきゃ見ればぁ~」と堂々と着替える女性もいるし、「女扱いしないで・・」と言う
うら若き女性も増えてきている。中にはコッチがセクハラを受けているのでは?と思う。
事もしばしば遭遇する様になった。
まあ、いずれにせよ・・・若気の至りという奴だろう。
確かにオストドも、まだガキの頃は、血気盛ん!言いかえれば、15歳では完全に不良であったし、
今思えば、ヤリタイ盛りにはヤリタイ放題の生き様を送ってきた。
従って、他人の迷惑顧みずはオストドの専売特許だったかもしれない。
偶に・・「よくこんなのと結婚したよね?」とメストド1号に尋ねることがある。
返ってくる答えは・・・皆様ご存じの通り・・・ではなく、
「まあ・・いいんじゃない?今も変わってないけどね・・・そんなに・・・」である。
思わず、こんなに温厚で優しい旦那で文句あるのか?と喧嘩を売るところではあるけれど、
子育ての99.9999%をメストド1号に押し付けたオストド。
オシメなんぞ代えた事もないし、節目節目の記念行事さえ、運動会に2回、卒業式に1回しか
行ってはいない。ましてや、少々残念だったのは、娘と一緒の入浴なんざ一回もしていない。
「世界は俺が飛びまわるためにあるんだぁ~」と戯言を言い、年間300日も家を開ける馬鹿
それが、オストドだった。
そんな生活の中ひとつだけ・・そうひとつだけ学んだのは、飛行機と船は同一の言語なのだろう。
機体=シップ。機長=キャプテン=船長。客室=キャビン。様々な言葉が一緒なのだ。
従って、破ってはいけない決まりがある。いかなる理由があろうとそれなりの料金を支払い、
それに対する対サービスを楽しみ、くつろぐ他のお客の気分を害してはいけない。
どうしてもと言うことであれば、キャビンの責任者もしくは、キャプテンの許可を得て、
彼等の責任において、足を踏み入れなければならない。
その事を真っ先に弁明ではないが、申し添えておいて、本文に戻ろう。
文中に女性蔑視の発言も出てくるが、敢えてそのまま掲載することをお詫びするべきだろう。
少々、時間を遡ることになる。
F5ゲートでまず一発目のオストドの暴言から、この話はスタートせねばなるまい。
「ったく・・・どうして女の添乗員は・・・」
「あら?聞き捨てならないわね?女性蔑視かしら・・・」
「いやね・・そんなつもりは・・・」
「ありそうですけど?」
「いや・・一般論。昔から変わらねぇ~な!女性添乗員は・・・頭痛ぇ~」
「そういえば、その女性添乗員たちに、講義をされていたのは・・どこのどなた?」
「えっ?」
オストドは頼まれると嫌と言えない性格が災いしたのか?それとも・・であるけれど、
女性限定という条件付きで、とある専門学校の教壇に立ったことがる。
確か・・生徒の大半を地獄のロールプレイングで泣かせたこともある。
そのせいかもしれないけど、バレンタインデーにカラシがタップリと詰め込まれたチョコレートを、
飲みこむ羽目になったこともある。
「昔はね・・・まったく・・ラベルじゃなかったレベル落ちたよなぁ~」
「そりゃあ~あなたは・・AAAだったっけ?」
「最終的にはAAA+だけど・・・」
「そうでしたわね!それで?」
「ったく・・・相変わらずと言うか・・・あれじゃあ~お客様が可哀そう!」
オストドは昔・昔そのまた昔を思い出していた。カルガリー空港での1コマが鮮明に思い出される。
ナイアガラの滝、トロント観光を終え、エドモントンから、カナディアンロッキーを巡り、
カルガリーから、バンクバーへ飛び、駆け足観光を行い翌朝には、成田へ飛ばねばならなかった。
いつもなら、順調にこなすハズのスケジュールなのだが、運悪くフライトキャンセルを喰らったのだ。
その便には、オストド率いるツアーの他に、もう2団体。それも女性添乗員のツアーが乗りこむことに
なっていたのだ。
「おかしいな・・・」 その頃AAA+の評価を頂くツアコンに成長していたオストドは嫌なモノを感じた。
しばらくすると、アナウンスで呼び出され、カウンターでの攻防戦が始まった。
何しろ、世間一般の夏休み。しかもお盆の最終日に成田へ辿りつくツアー。
翌日のバンクバー~成田間はフル。つまり、満席との情報を得ている。直行以外もそうだ。
全ての便がフル。翌日も空席はない。そんな中でのフライトキャンセルだったわけだ。
「今日の便は全て満席。明日なら空席確保します。」
「冗談じゃない!こっちは明日の今頃は成田へ向かって飛ばなきゃならないんだ!」
顔は平静さを装い、散々悪態を日本語で口走る。他の女性添乗員は突然の出来ごとに泣きだす。
何しろ、想定外の事が起こったのだ。プロならこれを最小限度の被害に押さえねばならない。
「ったく・・・いいよ!俺が交渉するから・・・」
交渉の結果、バンクーバーから飛行機を持ってくることになった。その間のミールクーポンの交渉や、
到着地で待っている現地ラウンド。日本の統括へも連絡しなければならない。
それらを全部やり方を教え、挙句の果てには、機内アナウンスまでオストドがやる羽目になった。
「ったく・・プロなら、こんな間際に説明するなって・・・それともお客が馬鹿だから覚えきれないのかな」
「えっ?」
「だって・・殆ど・・オバタリアンと哀れな同行者・・・」
「もう!いい加減にしなさい!おしゃぶりでも咥えて!」
オストド&メストド1号にアサインされていたのは、Bコンだった。
予約した際は、3クラス運行だったのだが、2クラス制の最新型に代わったのだ。
その連絡が遅かったので、Bコンに割り当てられてしまったわけだ。
「あちゃぁ~嫌な予感がビンビンするわ・・・」
「えっ?」
「まあ・・いざとなれば叩き潰してやる!」
「女性を?」
「いや・・俺は女性に振り下ろす拳はないよ!ヤローならやりかねないけど・・・・」
「いい子にしててよ・・・・」
「奴らがいい子ならね・・・」
そう言いながら、B777-300ERに乗り込んだのだ。
足元は広い・・・
メストド1号はヤバイ!と思ったのだろう。いつもなら、窓際の席はメストド1号の指定席。
「ねえ・・窓際に座らない?」
「えっ?」
「放っておくと何かやらかしかねないから・・・」
そんなわけで、シートをチェンジすることになった。まあ、オストドの目論みはブロックされたのだ。
ちょこまか来やがるものなら、足を引っ掛けて転ばせてやる!と思っていたのだが、そんな企みは
メストド1号には、全てお見通しだったのだ。まあ、以前にもしょっちゅうやっているわけだから、
判らなきゃよっぽど忘れっぽいタチなのか?それとも・・であるけれど・・・・
「やはり・・ツアコンは男の商売だな・・・」
「何で?」
「見てみな!あの男性添乗員。スマートでしょ?ああじゃなきゃ・・・それに比べ・・・」
「まあねえ~」
男性添乗員は殆ど最後に乗りこみ、自分のお客様であろう斜め前に座るご夫婦に、ご挨拶と
機内で困ったことがあれば、客室乗務員(日本人が乗り込んでいる)を通じて、自分へ連絡する様に
伝えているのだ。それが済むと、男性添乗員は後方の自分の席に消える。
「うんうん・・・昔ちゃんと伝えた事が、守られている!それに比べて・・あの馬鹿共・・・」
「もう!女性は荷物が多いんだから仕方がないでしょ?」
「仕方がないねぇ~荷物をヒトにぶつけていって、お詫びすらない・・・」
「ヒト?トドの間違いでしょ・・・」
「まあ・・何とでも言って!まあ、ドサクサに紛れたからいいけど・・・」
オストドはちゃんとその報復はしてあったのだ。無礼な振る舞いには無礼を返す。
これが、オストドのオストド流でもある。まあ、それが何かは口が裂けても言う訳にはいかない。
「しかし・・・落ち着きがねえやっちゃ・・まだ、飛行前だからギリで許すけど・・・」
通路を行ったり来たりする女性添乗員達を見て、ため息をひとつ吐く。
「あいつらの・・・先生は何を教えているんだか・・・」
「はいはい・・トリプルAさん。」
「AAA+だってば・・専門学校の教壇にも立たされたんだよ!」
「だったわねえ~」
「そう!鳥肌は立つし、最悪だったな・・・」
19:50 ドアがクローズされる。どうやら、少しでも遅れを取り戻そうとしているらしい。
19:55 プッシュバクされる。そして、20:00丁度。定刻より、3時間15分遅れてタキシング開始。
ランウエイ05Cより、20:06。カイロの空へテイクオフされ、帰国の途へ着く。
機内食・・多分、夕食。勿論、完食したのは言うまでもない。
腹の川が張れば、眠たくなるのが自然の原理である。
それでなくても東行きは夜が短い。ウトウトしかけた瞬間。睡眠妨害にまた・・あの女性添乗員が、
勝手に超えてはならぬ境界線のカーテンを開け、ビジネスクラスへ闖入してきたのだ。
ギャレーで楽しそうに談笑でもしているのだろう。声が大きくて眠ることなどできない。
「ねえ!やっぱりあいつら・・ぶん殴ってきていいかな?」
「あれ?女性に振りおろす拳は持ってないんじゃなかったっけ?」
「だ・か・ら・・振り下ろすんじゃないの!振り上げるだけ・・かな・・・」
「それでも駄目!でも・・迷惑よね・・・」
帰国後、その旅行社は書きとめておいたので、クレームレターを差し出した。
彼女らに言わせれば、何でも行きの機内でお客様の服を汚されたとか・・・
そんな事はどうでもいい話である。プロならば、その場で対処しなければならない話。
もうひとつ、ビジネスクラス用のチョコレートを山の様に持ちだした事件もあったのだが、
これは同行しているお客様に配ったとのことだが、これも間違いである。
敢えて旅行社の名前は明かさないけど、こんなアホらしい言い訳を尤もだと告げてくる
大手の旅行社は嘆かわしい。
その昔、「VIPがいるから注意と心配りよろしく!」と某テレビ局のお偉いさんと奥様を連れていった時、
運悪くCAがその奥様のお召されていた洋服にワインを掛けてしまったことがある。
それだって、適切な処理をその場で行う。これが添乗員の鉄則である。
「う~ん!やっぱり・・質落ちたなぁ~」
「あのね!あの子たちはアルバイト感覚じゃないの・・・」
「俺はどうだったろう?がむしゃらに働いていたからね!」
「あんたは・・水を得た魚さん!」
まあ、天職と言えばいいのか、世話好きが高じたのか?定かではない。
記憶の片隅に残っているのは、武器と麻薬以外は全て“商売のタネ”だったということだけだ。
もう、自然には眠れそうにないので、いつものお薬を取り出し、半分量だけ飲む事にした。
これで少しは睡眠を摂ることが出来る。
久しぶりにツアコン時代に冷や汗を掻いた時の事を夢でみた。
一度だけ、そう一度だけ・・・寝坊をした事がある。連続勤務85日目くらいの朝だっただろうか?
疲れのせい。そう・・連続勤務の疲れか?それとも朝方にホテルへ戻ってきた報いなのか?
幸い、オストドは出発時間の5分前には何食わぬ顔をして、バスに乗り込んだのだったが・・・
あの時と同じ様に慌てて飛び起きると、ビジネスクラスのシートをフルフラットに倒し、そこに
シートベルトで締めつけられていることに気が付いたのだった。
「ふう!夢か・・・」
窓のシールドを開けると、朝の光が飛び込んで来た。
「そろそろ・・か・・・」
朝食が運ばれてくる。日本時間で言えば、ちょっと早いお昼ご飯の時間だけど、目覚めたばかり。
この旅最後の機内食を食べ終え、ゆっくりとコーヒーを飲んでいると眼下には、懐かしい
日本の景色が拡がっていた。
そして、9604Kmの旅を終え、静かに14:10。最終目的地である成田空港16Lにランディングした。
― あとがきに代えて -
帰国したオストドとメストド1号を待ち受けていたもの。それは心労と仕事の山だった。
ついでに言えば、メストド1号には“転勤辞令”が待ち受けていた。
オストドのお父様である社長は、“表向き”熱中症と言うことにして、病院へ緊急入院させたり、
いろいろな事が怒涛のごとく、オストドとメストド1号を飲みこんでいった。
本来ならば、すぐに完結編まで書くつもりでいたのだが、公私共々、多忙を極めていたし、
お仕事のおつきあいと言う奴で、ヤローだけの旅にも出かけ、「部屋なんかいらなかったな!」と
朝方近くまで、モミジ会の会合が続いた。
年末年始は、万座に緊急退避もした。何故ならば、オストドの数少ない休日は、お父様の件で、
散々メストド1号共々振り回されていたからだ。
「越年はしないだろうな?」と思っては居たのだけれど、寄る年並みには勝てない。
「んっ~オッサンになったのかな・・身体がしんどい・・・」とほざけば、
「そりゃあ~昔みたいには行かないわよ!」とメストド1号が切り返す。
ふと・・・気が付けば、明後日にはまた旅にでる。お伴は相変わらずメストド1号である。
果たしてどんな旅になるのであろうか?更に今年はメストド2号が留学するとほざいている。
何でも、一年ほど行くとのこと。多分、彼女が貯めたお金だけでは足りないはず。
「齧れるだけ・・齧っておけ!今のうちだけだぞ・・・・」
散々齧られた・・“親の脛”を差し出すことになのだろう。
その留学先にも訪ねなければならないし、海外発券の宿命で、また、イスタンブールへも戻る。
おまけに言わせてもらえば、社員旅行もあるし、温泉逃亡の旅もあるだろう。
「なんかさ・・・旅するために働いているわよねえ~」
「まあね・・・これが趣味かな?」
「趣味の域は越えてきた気がするけど?」
「そう?まあ・・・確かに、ソウル発券、シンガポール発券、コロンボ発券そして・・・・」
「最後の旅はいつになるのかしら?」
「そうねえ~多分、使われなかった片道分のEーチケットを握りしめて、あの世行きかな?」
「ねえ!そうなる前に!」
「だよねえ~判っているさ!ファーストクラスでの世界一周だよね?」
「あと・・どれくらい飛べば気が済むのかしら?」
「一生治らないよ!だって・・俺。空飛ぶ食欲魔人辞める気ないもの・・・・」
まだまだ・・メストド1号に見せたい景色がそこにはある。
世界の絶景の実物を見せてあげたい。オストドが旅から旅へと見てきた景色。
これからもまだまだ・・・旅は続くのだろう。
最後までお付き合いをいただきありがとうございます。
オストド&メストド1号はちょっくら・・・マイル消化の旅に出かけます。
「でも・・つくづく馬鹿だよな・・・小龍包食べにだけで行くかね・・普通・・・」
「普通じゃないのが・・・・」
「まあね!」
「どこに行こうかな?懐かしい・・・」
「ひとつ・・お手柔らかに・・・ダイエットは・・・帰ってきてからでいいよね?」
2頭のトドがまた・・次の旅に出るのだ。
2011-01-05 17:03
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成田へ到着・・と思ったら又、ご旅行ですか!
お気をつけて(o^_’)b
by inacyan (2011-01-05 20:48)
こんばんは^^☆
by りりー (2011-01-05 21:35)
美味しい旅もいいですね。
by デルフィニウム (2011-01-06 07:53)