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僕と“う”と“な”の物語 -まえがきに代えてー [僕と“う”と“な”の物語]

― まえがきに代えて ―

昔、昔あるところに・・・・・

「ナンセンス!なり。」

「ったく・・・成長しないなりね。」

「はあ?うるせーこのクソ狐ども!大体だな!大人しくしてろ!さもなきゃ・・」

「また。始まったなり。馬鹿の一つ覚えが・・・」

「そうなりね。たぶん尻尾を結んでやると言うんなり。ナンセンスなりね。」

「うるせーこのクソ2頭!」

僕以外にも見えるはず。いや、敢えて見えないフリをしているのだろうか?

人というものは、おかしいほど既成概念とやらに囚われている。

まあ、科学がこれだけ進化してくると、解明できないモノは信じないらしい。

こんなことをほざいている僕だって、昔はそうだったはずだ。

いや、あの日あの出来事を境に、僕は自分でも驚くほど変わってしまった。

それまでの僕は、利己主義で自分勝手で手の付けられないほどの悪党で、

もし、僕が神様や仏様だったとしても、相当前に見放していることだろう。

「あん?こいつ・・・おかしくなったなりか?」

「うるせーぞ!“う”いや・・・お前は“な”の方か?」

「どっちでしょうなり。」

「あのな・・・その“なり”はやめろ!“なり”は・・・・そうしないと・・肉喰わせねえぞ!」

「汚いなり。兵糧攻めとは汚いなり!」

「うるせ~な!・・・あっ!肉まんがあったんだ!喰うか?」

二頭の見分けはなかなか出来ない。唯一、“好物”の肉を目の前に出せば、

そのうれしそうな顔で見分けることができる。

元々、最初から僕のところにいるのが、”う”。これとの付き合いは、もう30年を超え、

軽く人生の大半を一緒にいる。“う”は嬉しそうな顔をすると右側の目尻が下がる。

もう一頭、僕のところにやってきたのは、“な”と名付けた。

最初のは、「元々うちの子だからねえ~」と“う”と名付けられ、後から来たのは

某T県のNという所から、“勝手についてきた”ので、地名をとって、“な”と名付けた。

“な”は、“う”とは対照的に嬉しい顔をすると、左側の目尻が下がるのだ。

「食べるなり!」

「食べるなり!」

「はて・・・・」

「さっさと出せなり!」

「そうなり!」

「そうじゃないだろ!出してください!だろ?」

「噛み付くぞぉ~なり。」

「そうなり。」

「い・・痛いっ!どっちの馬鹿だ右足噛んだのは!」

2頭は揃って首を横に振った。

「はあ?お前らしかいねえだろ・・・」

「もう・・・一頭いるなり。」

「はあっ?も・・もしかして・・・また?」

「そうなり。宜しく頼むなり。」

「困るよ!いいか・・・僕と“う”と“な”の物語なんだぞ!」

「おまけでいいなり・・・・」

「そうねえ~い・・痛いっつうの!」

「新入りなりよ!仕方ないなり!」

「あのな・・・・教育しておけっての!だから・・・噛むな!」

「居ても良いなりか?」

「わ・・わかった!だから、足を噛むな!肉まんやるから・・・・」

僕が差し出した肉まんをそれぞれがタッチすると、不思議なことに“彼ら”三頭・・・

いや、性別は元メスだったらしいから、“彼女等”はそれぞれ肉まんを食べ始めた。

「う、う~ん!こいつの名前どうするかな・・・・お前はIから来たから“い”でいいか・・・」

“い”と名付けられたもう一頭は、嬉しそうに両方の目尻が下がった笑顔を浮かべ、

コクンと頷いたのだった。

僕の机の前にちょこんと座り、耳が計6個目も6個・・・ただ、尻尾だけは数えると合計で

27本になる。

「ったく・・・九尾の狐が三頭になっちゃった・・・・おい!“う”ちょっと・・・」

「なんなりか?肉まんもう一個呉れるのかなり。」

「だ・か・ら・・・“なり”はやめろ!なり・・・あちゃ・・うつっちゃったぞ・・・」

「なんなり?」

「いいか!お前は先輩なんだから面倒みるんだぞ!」

「タダでなりか?」

「あたりまえだろ?」

「“地獄の沙汰も金次第”なり。」

「あのな・・・エサ代・・・あっそうかお前らは実際には喰ってないのか・・・」

「そうなり。」

「お姉さん!として、面倒みろ!」

「あたしの子分なりか?」

「ああそうなり・・じゃなかった。そうだ!簡単に言えばな!ただし!」

「なんなりか?」

「エサは平等!同じだけ喰え!あとは・・・・」

「なんなりか?」

「おいおい話すけど・・・はああああああっ・・・・」

「どうしたなり?」

「告知しちゃったんだぞ!どうする?”い”も入れるか?あ~あ・・・・」

「あっ・・・忘れてたなり。」

「何が?」

「モデル料寄越せなり。」

「なんで!」

「肖像権なり・・・」

「だ・か・ら・・・お前らは霊魂だろ!神様に言いつけるぞ!」

「ケチなり。」

「ったく・・・肉まん。もう一個ずつだ。」

「ハンバーグでもいいなり。」

「この前!松坂牛喰わせてやったろ?ハンバーグもだ!」

「毎日喰わせるなり。」

「俺が大変になるだろ・・・」

「お金ならあるなり。働かなくてもはいってくるなり。」

「わかったっての・・・くそ狐!」

こうなると主従関係?さえ怪しくなってくる。

「仕方ねえな・・・・」

「なんなり?言いつけは守っているなり。」

僕は僕の大切な人を守る様に命じていた。だから、僕のところから出かけていくときは、

一緒に手?いや足か・・前足を振って見せるのだ。

「分かった!高級肉は偶にな・・・そうしないと、俺のコレステロールが・・・」

「安心するなり。」

「何がだ?」

「お前はまだ死なないなり。」

「どうして分かる?」

「逝くときは一緒なり・・・・」

「やだなぁ~お前らが道案内役か?」

僕はふと”ある事”が気になった。

「なあ!も・・もしかして・・・あのくそ・・・」

「じじいなりか?お前をいじめてたあのくそじじい・・・」

「そうだ!俺が会社を辞めてすぐくたばったんだが・・・」

「地獄ツアーへ送っておいたなり。」

「げっ!」

「なんなり?」

「お前らが居るの忘れてたわ・・・あはは」

「何を笑うなり?」

「笑うしかねえだろ・・・」

「まあこれからも宜しくなり。」

「ああ!こっちこそな!た・だ・し!」

「分かっているなり。」

「いいか!俺の行先は決まっているんだから邪魔するなよ!」

僕はくたばったら、地獄めぐりのツアーコンダクターになるつもりだ。

間違えても天国に行けるわけはない。そうだと言って浮遊する霊魂も嫌だ。

「まあ、お前らが一緒なら寂しくはねえな・・・きっと」

「そうなり。」

「でもな・・・あんまり、人前で話しかけてくるな!いいな!」

「分かったなり!」

以前、あまり僕がぶつぶつと“う”と話していたら、気が狂ったのでは?と

危うく精神科送りになるところだった。

まあ、僕が医者からもらう処方箋には、ちゃんと向精神薬処方加算が付いているが・・・

「しかし・・・お前らは悪霊だったはずだよな?」

「そっちの方がいいなりか?」

「いや・・・今のお前らが面白いからそのままでいいや!」

僕は今日現在で今年3回も伊勢神宮に参拝に出かけた。

そのたびに、“う”と“な”は同行する。まあ、僕の大切な人が一緒ではないときは、

分身の術と言えばいいのだろうか?分身が僕に同行する。

まあ、その道中の途中で新入りの“い”も憑いてきてしまったのだが・・・

いつもは4本足で歩き、時にはポケットや鞄やリュックに潜り込むやつらであるが、

参拝のときは、しずしずと後ろ足だけで僕の前を歩いてゆき、お手水も上手だ。

「しかし・・・お前はケチなり。」

「なんで?」

「お賽銭ケチっているなり。」

「あのな!ご縁があります様にって知っているか?」

「知っているなり!」

「ちゃんとそのほかにも毎回遷宮の寄付もさせてもらっているし・・・」

「知っているなり!」

「じゃあ!何がケチなんだ?」

「うち等の分忘れているなり!」

「あっ!まあ・・・その・・なんだ。儲かってから御礼参りで・・・・」

「そうするなりよ!」

「分かった!但し!今度は温泉も松坂牛も鮑も牡蠣もすべて無し!」

「いやなり!」

「だろ?お前らのためにいい所に泊まって、旨いもの喰って・・・・」

「今度もそうするなり!」

「考えておく!」

どうやら、子供の喧嘩になりかけている。

こんな文章を書いている間にも、三頭になってしまった居候は、僕の大切な人と

一緒にお風呂に入り、海猿ごっこをしているのだろう。

この先どんな話が待っているのだろうか?

僕はその出会いから書かねばならないのかもしれない。

― 僕と“う”と“な”の物語第一章に続く -
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コメント 1

inacyan

うと、なと、いの物語になったようですね(0^_’)b
by inacyan (2012-12-19 13:46) 

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