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オストド&メストド1号「飛んで・・飛んで・・・また飛んでの旅。」 -第一章- [2013.親馬鹿旅]

-天国・・・いや、ちょっと地獄?1-

「ったく・・・着いたら、着いたって電話くらいしろよな!」

口には出さなかったけど、オストドは成田空港第一ターミナルの出発階より、ワンフロアー上

喫煙所でちょっとイライラしていた。

話はその数時間前、いや数日前まで遡らねばならない。

出発を間近に控えたある日。一本の電話がオストドのプライベート携帯に飛び込んできた。

「社長!お出にならないのですか?」

「嫌な予感がするんだけど・・・・」

着信を告げる携帯を見ると、エジプト航空からである。

「やっぱり・・・」

でも、出ないわけにはいかない。碌な事が重ならない様にしなければならなかった。

何しろ、今回の旅は前回とは違う。エジプト航空を乗り継ぎ、EUにたどり着いたと思ったら、

翌日には、EUの別の玄関口から飛び立ち、大西洋を飛び越えねばならない。

「被害は最小限度だよなぁ~」

予約通りのフライトであれば、連絡してくるはずはない。

相当の遅れかそれとも早発にスケジュール変更か、運行スケジュールの変更が決まったのだ。

もし、運行スケジュールの変更なら、頼み込んで他社へ特別に振り替えて貰って出発し、

どこかの都市でスケジュールを間に合わせる必要があるからだ。

「もしもし・・・・」

「こちらエジプト航空の・・・・」

「やっぱり・・何か?」

「フライトスケジュールの変更のご連絡ですが・・・」

「えっ?」

「お帰りのアテネ/カイロ間・・・・」

少しほっとしたのも、束の間のことだった。

オストドが所有しているチケットは、ビジネスクラスには違いないのだが、

その中でもエジプト航空のチケットは、安い。更に、払い戻し不可等の諸条件が付いている

オストドのチケットはベリーどころではない。前回、アテネからエーゲ海クルーズに乗り込み、

帰国から使用を始めたチケットは、アテネ/カイロ/成田の往復で、円高の影響もあり発券手数料を

含めても、確か一人17万円くらいだった。

それで、積算マイルで言えば往復で16600マイルもANAのマイルとして貯まるのだ。

更に今回の帰国のチケットは、発券手数料とわざわざ赤坂まで足をのばす手間をかけ、

ANAカード決済によるマイル獲得より、WEB発券でヒルトンVISAカードで決済する方を

選んでいるのである。

「出発時刻が予定より25分遅れまして・・・・・」

「それだけなら・・・」

「あと・・もう一つと言いますか・・・こっちの方が・・・」

「も・・もしかして?」

「機材変更が発生しまして・・・」

「はあ?」

「もう一つ申し上げると・・・・」

「はぁぁぁぁぁぁぁ~」

オストドが恐れていたことが発生したのだ。

同じビジネスクラスとはいえ、費用対効果で言えば、天国から地獄へ真っ逆さまに

突き落された気分だった。

それでも、淡い期待は搭乗する寸前まであったのは紛れもない事実だった。

その淡い期待とは、オストドもメストド1号もとりあえず・・・“なんちゃって☆G”なわけだから、

3クラス運行への切り替えになれば、C→Fへグレードアップされるか?

それとも・・僅かな追加料金を支払えば、Fクラスへアップしてもらえるかもしれない。

そんな期待だったわけだ。まだまだ修行が足りないと言われれば、

その通りだと言わざるを得ないが、その時点までは持っていたのだった。

何しろ、フルフラットでぐっすりお休みどころか、旧型のそれもシートピッチの狭い機体。

リクライニングもエコノミークラスとほとんど変わらない。

むしろ、空席が多いそうだから、エコノミークラスを3席独占できれば、横になれる。

でも、「運行されない!」と通達を受ける恐れはなくなったのだから、ヨシとしなければ

ならないのが、神の思し召しなのだ。

アラーの神は、その気紛れさ故に、以前は、運行停止のため、復路チケットの払い戻しを

勧められたが、頑なに拒み、成田/バンコク間をANAのビジネスに振り替えてもらい、

日本線休止のため、振り替えられたB777-300ERで、諦めていたフルフラットに乗れた。

だが、その時も出発まで間がなく、仕方なくオーストリア航空のビジネスを買い直し、

余計な出費を強いられ、イスタンブールへ舞い戻り、その次はまだ運行休止だったので、

英国航空が安かったので、買ったのは良かったが、またもやアラーの神の気紛れを受け、

ユーロコントロールによる出発遅延で、ヒースロー空港で係員の迎えもなかったので、

空港職員とバトル寸前までいき、走るに走って成田行きに飛び乗った。

挙句の果てに荷物は、意図的としか思えないが、積み込まれていなかった。

何しろ、成田で航空会社職員のご丁寧なお迎えを受ける羽目になったのだから。

「もう・・しばらくは、イスタンブールはいいよね。エーゲ海クルーズでもするか・・・」

それが、昨年のことだった。ルート変更・払い戻し不可のチケットだったのだが、

英国航空に電話を掛け、無理やり追加料金の支払いで、ロンドン/イスタンブール間を

ロンドン/アテネに代えてもらい。帰りのフライトを探していたら、エジプト航空が運行再開。

渡りに船とばかりに、安さにつられて買っってしまった。自分の考えの甘さがつくづく・・・

そう、つくづく・・・恨めしかったのだ。

「もうひとつ・・・お知らせすると・・・」

「まだあるの?」

「年末に入っている予約ですが・・・・」

「ま・・まさか・・・それも・・・オンボロシート?」

「はい。左様で・・・」

「それじゃあ~ますますお客が載らないと思うけどねえ~週2便しかないのに・・・」

「せめて、3便にして、機材を戻してもらわないと・・・・」

「だよねえ~」

これで、約6000マイル。おおよそ片道1万キロを3回も、窮屈で寝苦しいシートで、

飛ぶ羽目になったのだ。ただ、唯一の救いは、アテネで往復共に、1泊。

そう1泊のホテルを確保してあることだけだ。

電話を切り、頭を抱えるオストド。その光景を見た秘書嬢曰く、

「行くの止めになさいますか?」

「とんでもない!」とオストドは首を横に振った。

何しろ、エアーカナダのWEBで仕入れた航空券も、ホテルもまでが・・・・

ノーリファンド。つまり、返金は受けられないし、夏までにアテネに戻らねばならない。

戻らねばならないのは、ループのどつぼに居るということだ。

「チクショーと言っても仕方がないよな・・・・」

オストドはまだ、この時アラーの神がさらに試練?を与えようとはこの時はまだ思いもしなかった。

まあ、その辺は本編でゆっくりと暴露させていただくことにして、ひとまず・・そう。

出発をしなければ先に進まないのである。

28,May,2013 11:00

「ねえ!悪いけど・・・荷物の積み込み手伝ってくれる?」

クソ重いスーツケースが2個。何しろ何回も計量したが、1個は22.2キロもあるのだ。

それに機内持ち込みのキャリーがひとつ。これには荷物が延着した場合に備えて、着換えや

先日、伊勢で買い求めてきた。メストド2号へのお土産というべきか、お守り代わりの真珠の

ネックレスとピアスが入っている。そのほかにもメストド1号の化粧品等も詰め込まれ、

ほぼ10キロ近くになっている。

とても、一人で車に詰め込めるわけはない。車に詰め込むまでに、エレベーターに積み込み、

一階まで降ろし、駐車場まで引き摺り・・・・

そんな事を行ったら、オストドは出発前に病院へ寄らなければならない運命になりそうだ。

「はい?」

「いやぁ~何しろ手は、二本しかないじゃん・・・」

「そうですね。普通・・・・」

「雨が降りそうだしねぇ~」

「ですねえ~」

そんなわけで、積み込むまでを手伝ってもらうことにした。

一応、名誉のために言っておくけど、重いモノは自分で運び、キャリーのみを降ろしてもらった

ただそれだけである。

車に荷物を積み込んで一息付くと、雨が降り出してきた。

「助かったよ!雨が降り出してきたもの・・・・」

「何時に出られます?」

「そうねえ~4時半ごろに出るかな・・・・」

こうして、オストドは一人。成田空港へ車で向かい。メストド1号は、仕事のため、定時に上がり

スカイライナーで成田空港で合流することになっている。

某ホテルの玄関へ乗り付け、荷物をベルボーイに託す。駐車場に車を停めてホテルの専用バスで

空港へ向かう。

そう、間違ってもホテル名は書いてはいけない。何しろ、ノーチェックでその便宜を供与してくれている。

間違っても、1泊あたり、400円とか屋内駐車場とは書けない。

そうでなければ、この技は使えなくなってしまう可能性がないとは言えないからだ。

ホテル発の専用バスにただ一人だけ乗り込み、ターミナルで降ろしてもらうと、ちょうど、

仕事を終えたはずのメストド1号を乗せたスカイライナーが出発する時間だった。

「さてと・・・・どうすんべ・・・あっそうだ。」

オストドは荷物を積み込んだカートを押しながら、おしゃぶりを買いに薬局へ向かうことにした。

何しろ、ニコチン中毒者に13時間の喫煙は少々つらい。

最近、コンビニではみかけなくなったJTで販売している“ゼロ”は、オストドの精神安定剤。

ニコチンが切れて、暴動を起こすか?さもなきゃ、機内で火をつける恐れがあり、

瞬く間に機内に潜伏している謎のガードマンに取り押さえられる恐れがある。

そんなリウクが、410円で防げるのなら、安い買い物だと思う。

何しろ、Drに、「人間辞めるか?タバコを止めるか?」と聞かれて、「人間辞める」と答えたほどだ。

無事におしゃぶりを入手して、スモーキングコーナーへ向かう。

「ふうっ~うま!」

缶コーヒーを飲み、タバコを吸っていると、業務用の携帯が鳴る。

オストドの現在の生業は、不動産貸付業。不動産仲介業者からである。

「この時間なら宜しいんでしたね?」

「まあね・・・」

「出物があるんですけど・・・・」

そんなやり取りがしばらく続く。メストド1号には、成田空港到着のメールは送ってあるが、

スカイライナーに乗り込んだとは返ってきていない。

「おっと・・・カウンターに行かなきゃ!」

オストドがカウンターへ向かったのは、メストド1号を乗せているはずのスカイライナーが、

到着する時間だった。

「ったく・・・着いたら、着いたって電話くらいしろよな!」

口には出さなかったけど、もうチェックインが始まっている。その時にメストド1号から、

メールが届いた。そこには、一言。“着いた”とだけ書かれてあった。

オストド&メストド1号「飛んで・・飛んで・・・また飛んでの旅。」 -第二章-へ多分・・続く。




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