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僕と“う”と“な”の物語 -第一章 第八話 ー [僕と“う”と“な”の物語]

僕と“う”と“な”の物語 -第一章 第八話 ー 「親子って・・・・・」

今日も、三ポコ。いや、三頭が仲良くソファーに座り、肉まんを食べているのを、

僕は茫然として見ていた。

「主っ!元気がないなりね?」 “姉さん格”の“う”が僕に尋ねた。

まあ、本人たちの言い分では、性別はメスなのだから、仮に化けキツネとしても、

レディーとして扱わねばならない。“う”と知り合ったというより、憑りつかれたのか?

それとも、僕が呼んだのか定かではないが、僕の周りを“う”が、チョロチョロとしだして、

もう30年以上の時が流れている。

“昨日の敵は今日の友”とは、よく言ったものだ。

今では、すっかりと居候を決め込み、昔の怨霊の姿はない。いや、彼女等?も進んで、

怨霊の道を選んだわけではない。

全ては、この星つまり、地球上に存在すると言われている。“三毒”なるものの、

犠牲になったのだ。

だから、僕は敢えて”退治”するわけでもなく、邪魔者扱いもしないし、追い払おうとも思っていない。

まあ、一言だけ付け加えるとすれば、僕が現世とオサラバするときに、一緒に昇天するか?

せめて、三途の川くらいまでは送ってほしいものだ。

「そうかな?」

「そうなりよ!」

確かに僕は元気がないのかもしれない。唯一の救いを簡単に述べよ!と言われれば、

父であった人が急逝してしまったからだろう。

生前、最後の面会に呼ばれたときには、既に一言も喋れなくなっていた。

僕の顔を一度だけ大きくその眼を見開き、大粒の涙を一粒だけ流し、静かにまた目を閉じた。

「どうせ!またフェニックスのごとく、蘇る!以前の様に・・・・」

僕は僕にそう言い聞かせていたのだし、そう信じたかったのだろう。

何しろ、僕はその父であった人をある意味では尊敬をし、その大部分においては、憎しみ、

そして、必ず見返してやる!と心に決めて生きてきたのだ。

まるで、枝を折る様な音がして、僕はその時を迎えたのだ。

「なあ!」

「なんなり?」

「人生ってなんなんだろう?あの人は幸せだったのだろうか?」

「そうなりねえ~」

しばらく、彼女等は頭を捻り、ゴチョゴチョと相談をして、僕にこう告げた。

「ある意味とっても幸せだったなり。またある意味ではとっても不幸せだったなり。」

「そう・・・かもな!不幸せの大半は俺の親不孝だよな・・やっぱり・・・」

「違うなりよ!」

「へっ?」

「主はちゃんと反省したなりよ!謝ったなりよ!」

「そうかな?」

「そうなり!そうじゃなきゃ・・・何で家をかったり花を買ったりしているなりよ!」

「家?ああ・・・仏壇かあ~」

僕の住まいはには、仏間はない。仏間がないので、こじつけてしまえ!とばかりに、

「親父・・テレビがすきだったよな・・・」とほざき、仏壇を安置する位置を決め、その寸法を測り、

近くに仏壇仏具の専門店がないことをいいことに、ネットショッピングを利用し、

「こんなのは嫌だなぁ~」と更にほざいきながら、ああでもないこうでもないと言いながら、

家具調モダン仏壇を選び、位牌も「こんなのは嫌だぁ~」とほざきながら、クリスタル調のものと、

何故か我ながら理解に苦しむが、携帯できるものまで、誂え、仏具に至っても、

「親父・・辛気臭いのは嫌だったよな・・・」とクリスタル製のものを取り揃えたのだ。

飾ってある花ですら、仏花を選ばず明るい花のブーケを買い、仏壇の中には、ガラスの棚なので、

そこに一面にクローバーと黄色い名前すら知らない花の造花を敷き詰めてみたりした。

供物台には、メストド1号が送るに送れなかった黄色いバラの籠が置かれ、供物も果物や

お菓子の他に、「親父・・酒が好きだったよな!」とウイスキーの小瓶を2本供え、毎日の様に

お茶と水そして、日本酒を飯盛の代わりに備え、お茶の香りの線香を炊いている。

勿論、仏壇の開眼も父の導師を務めてくださった導師様にお願いして、仏壇の開眼法要と

仏様や位牌(二つ・・・)の入魂法要まで、執り行ってもらっている。

更に言えば、お供えにお金を惜しむこともない。

「まあ、影(影祀り)でしかできないけどな!そういや・・・お前らもお参りしてくれているなぁ~」

「気づいていたなりか?ブツブツ言っているから、気づいていないと思っていたなりが・・・」

「あれだけちょこちょことやってたら気づくって!」

何しろ、仏壇に供える日本酒を例にとってみると、いくらアルコール分が飛んだと考えても、

減り具合が早すぎる様な気がしていた。

「ま・さ・か・・・とは思うけど、親父舐めに出てきたな!」

線香の件でもそうだ。物理上でも科学上でも何でもいいが、灰が不思議な所に落ちていることが、

一度や二度ではない。その都度掃除しているにも関わらず、また・・・すぐに掃除する羽目になる。

「ったく・・・お前ら!おとなしくナムナムできないのか?」

「しているなりよ!でも・・・」

「でも?」

「主や主の父の悔しさを思うと・・つい!」

「つい?」

「あたし等も血が騒ぐなりよ・・・もう止めても遅いなりよ!」

「別に止める気はねえけど・・・ま・さ・か・・・」

「そうなり!」

「あちゃぁ~」

僕は確信した。確かに一度。僕の邪魔をトコトンした人がいたが、突然急逝した。

聞いた話によれば、「具合が悪いので病院へ行く!」と言って、そのまま入院。

3日後には亡くなったのだった。

「あれも・・お前だったか・・」

「なんなり?」

「まあ・・いいか!」

「元気だすなりよ!敵討・・・」

「ああ!親父は死んだんじゃない。殺されたも当然だからな!」

「あたし等も力貸すなり!」

「おいおい・・・あくまでも、合法的に処理するんだから・・・」

「あたし等には、法律は関係ないなりよ・・・」

僕は話をそらすことにした。そうしなければ、僕が合法的な敵討をする前に、永久の旅路に

旅立たされてしまったら、やり場のない怒りだけが残るからだ。

「まあ・・最近、お前らがどんな思いで怨霊になったか・・・わ・・判る気がする。」

「そうなり・・それが、親子なりよ!」

僕は“う”をまじまじと見つめた。まるで、そこには、親子の情を説く、仏様がいるかの様だった。

僕と“う”と“な”の物語 -第一章 第九話 ーに多分続く。
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inacyan

はがき届きました。ご丁寧に有難うございます。
御尊父様のご逝去には心よりお悔やみ申し上げます。

by inacyan (2013-12-08 21:27) 

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