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僕たちに明日はあるのか?VOL8 [ぼくたちのシリーズ完結編]

-遥かなる航路 2-

佐々木クンと別れ、僕は海の上。まあ、厳密に言えば「船上」から、陸を眺めていた。

途中、いくつか港によるらしいこの船を選んだのは、どこかの港に上陸するか?

それとも、深夜に深そうな所で飛び込むか?僕は迷っていた。

もう、僕には「帰る場所」はない。と一方的に決めていた。

大きく手を振る佐々木クンを眺めながら、僕は心の中で謝っていた。

「悪い!・・・」そう口に出しかけたとき、船は汽笛を残して、離岸していた。

「ん?」

小さくしか見えなかったけど、佐々木クンがビンタを喰らっている。

「あれ?」

僕が佐々木クンと「最後と決めていた夕食」を摂っていた頃、紗栄子の店では

ちょっとした騒ぎになっていたと後で聞いた。

僕の筆圧を鉛筆で塗りつぶして、ココを割り出したのだろう。

まあ、乗船名簿には、僕は偽名で住所も出鱈目に書いている。

僕が捕まって、護送された後聞いた話では、最後までしらばっくれて、

僕の肩を持ってくれたらしい。「仲間のためなら、大嘘を吐いて地獄へ行く」が、

悪たれ連の掟だったかららしい。

佐々木クンに渡した封筒には、やはり、「退学届」を入れておいて良かったそうだ。

ここからは、佐々木クンが話してくれた話をしよう。

「痛ぇ~な!暴力ババァ~」と佐々木クンは言ったらしい。

「あんた・・・誰に・・・」

「先公だよな・・・くそったれ!ホラ・・・これが欲しかったんだろ!」

佐々木クンに預けた。僕の「退学届」を、美希の鼻先に突き付けた。

「ついでに・・・俺も辞めるわ!後。宜しく!」

「ちょ・・・ちょっと・・待って!受け取れない」

「受け取れ!くそババア!コレが欲しかったんだろ・・・」

「そうじゃなくて・・・どこに行ったか知らない?」

「さあな・・・」

「船会社に聞いても、そんな人乗ってないって・・・」

「だろうねえ~」

「知らない?本当に・・・」

「ウチの荷物を運んでいる船に手を振っていただけだぞ・・・・」

「どこに行ったか知らない?委員長・・じゃなかった部長」

「どうでもいいじゃん!あんな奴。どこかで好き勝手にやっているか・・・」

「好き勝手?」

「そうじゃなきゃ・・・身元不明の死体でも探せばいいじゃん!」

「ば・・馬鹿!あんた・・仲間でしょ!」

「仲間ねえ~そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。」

「えっ!」

「教える訳ないでしょ!仲間なら・・・」

「そう・・・そうよね。でも、あの子勘違いしているみたいで・・・」

「勘違い?」

「まあね。完全に勘違い。いや、勘違いさせる様に言ったのが悪いんだけどね。」

「ふ~ん。あいつ・・・」

「何か知ってる?早とちりする前に止めなきゃ・・・」

「今の船の行先当たるしかないんじゃない!・・かな・・・」

「何で?」

「そこまでは言えないけどね。じゃあ!」

美希が手を離した瞬間に佐々木クンは、逃げ出したらしい。

まあ、逃げ足だけは僕らは早い。何故なら、大人が考えにくい所へ

逃げ込むことも偶にある。

悪たれ連の面々は、ジャイアンツファン。つまり、ジャイアンツが負けると

機嫌が悪い。機嫌が悪いと、八つ当たりもしたくなるので、野球観戦に行けば、

負けた時もそうだけど、勝った時も、場外延長戦をする場合がある。

まあ、10人くらいなら、佐々木クン一人で潰しているので、僕らは体力温存して

いるけど、まあ、お決まりで警察に追いかけられることもあるけど、

球場から、数百メートル走って横丁に逃げ込み、とあるビルに消える。

このとあるビルは面白い造りになっているし、ここのオーナーは、佐々木クンの家

だから、ビルの隙間へ出る「僕ら専用の非常口」から、数件並んでいる佐々木クンの

家のビルを抜けると、地下鉄へ逃げ込める。

まあ、僕らは佐々木クン以外逃げる必要はないけど、つい警察官を見ると、

逃げる癖がいつの間にか身についている。まあ、叩けばホコリは出なくても、

塵くらいは出るのが、僕らの日常なのだ。

そんな事になっているとは知らない。早とちりの僕は、数日に渡る船の中だった。

「そろそろ・・かな。」

僕は深夜のデッキに出た。

「ちっ・・これで吸い納めか・・・」

ぽつんと呟くと、1本だけになったタバコに火を点けた。

この一服を終えれば、今は真っ黒にしか見えないけど、夜が明ければ綺麗な海底に

僕は横たわっているか?魚のえさにでもなっているだろう。

そんな僕を物陰から見ていたのは、コールサインは、グレイのジュニアだった。

今、最後の一服を投げ捨てると僕は手すりによじ登ろうとした瞬間だった。

「ヘイ!ユー火を貸してくれ・・・」

「はあ?ライターも持ってないのかよ!くそったれ!外人」

「ソリー」

「ほらよ!」ポケットからライターを取り出して渡した瞬間。僕の身体は宙に浮き

そして、甲板に叩きつけられた。

「てめえ~」言い終わるかどうかの瞬間に、僕の繰り出したパンチは、ジュニアのジュニア

目掛けて飛んでいた。

まあ、そうなると、殴り合いになるのは、当たり前。

お互い相当なパンチの応酬線だった。

「これで終わりだ!」「フィニッシュね!」僕とジュニアのパンチは、クロスして

互いに甲板に伸びたのだった。

「ジャップのくせにやるな!」

「うるせーアメ公」

「ドローだ。」

「ドローか・・・まあいいや!タバコくれ!」

「ああ・・・」

僕はタバコを受け取り、ノックダウンするべくパンチを繰り出したけど、

簡単に受け止められてしまっていた。

「ドローだけどな・・俺は空を飛べる。お前はムリだろうけど・・・」

「ざけんな!」

この時、僕は不思議な感覚だった。もう海底に眠るのは先延ばしでも、

いい気がしていた。

「何と呼べばいいんだ。」とジニアが聞いてきたので、「ブチョー」と答えた。

「お前は?」

「グレイと呼んでくれ」

「外人のくせに日本語上手いな。」

「ああ・・マミー。いや、かあさんと言うのか、ジャパニーズだからな」

「なるほどね・・・」

「ブチョー何処へ行くんだ?マイハウスに来ないか?」

「ユーのハウスか・・・」

「パパのだけどな・・・軍のパイロットだし。エアープレーンの・・・」

「飛行機」

「ヒコウキのティチャー・・・」

「教官・・だろ?」

「それ・・やっているから・・・お前も飛べるかもしれない。」

「グレイの操縦じゃなかった・・・フライトは、ソーリーだけどな」

僕の部屋は、2段ベッドで、他の乗客が居なかったので、ジュニアが引っ越してきた。

まあ、一緒にウイスキーを回し飲みしながら、時々、デッキに出てタバコを吸った。

僕はその時知らなかったけど、美希は学校をさぼり。僕の行方を捜していたらしい。

確かに、那覇港に着いた時、それらしい人影を見たけど、僕はジュニアを迎えに来た

車に押し込まれていたのだ。

- 空の向こうに 1 -へ続く。



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