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僕たちに明日はあるのか?VOL9 [ぼくたちのシリーズ完結編]

-空の向こうに 1-

あれからどれだけ経ったのだろう。

ジュニアの家にとりあえず、居候を始めた僕は、始めた翌日から、

ジュニアと一緒にパパさんの飛行訓練を受けることになった。

最初は、ジュニアが操縦桿を握り、飛び立った瞬間。僕は「乗らなきゃよかった」と

何しろ、ヨタヨタと滑走路に向かい、「ジュニアパパであるケビンに怒られていた。

「ふんふん・・・悪い例は判った」

「ホワッツ?」

一通り、ジュニアの訓練が終わると、僕の番になった。

座学は、ケビンの話す英語を、サエママが、通訳してくれ、実機訓練になったのだ。

単発つまり、エンジンが一個しかない。単発飛行機のいきなり左席に座らされ、

今日までで都合30時間以上は訓練を受けていた。

「オーケー。フタリでフライトね。」

二人は顔を見合わせた。空へ飛びあがるのだ。それも、二人だけ。

僕とジュニアは、気が付けば、大空に浮かんでいた。交互に操縦桿を操作していた。

でも、後ろに乗っているはずのケビンの姿はなく、その代わりに、近くを飛びながら

無線で指示を送ってくるのだ。

ジュニアは、訓練を少しサボっていたし、ハイスクールもあるので、僕がいつの間にか

追いついてしまっていたわけだ・・・

「ユーハブ!」僕はジュニアに操縦桿を渡した。

「アイハブ!」ジュニアは、仕返しとばかりに、急降下を始めた。

「やると思った。この単細胞!」

「お前が先に・・・」

その時、ケビンの怒鳴り声が、コックピットから流れた。

「今度はアクシデントでないね。二人ともバツ当番・・・」

「ゲッ!」

「Oh!my・・」

「ゴッドねえ~そうだ。グレイ!」

「なんだ!シン・・・」

「あのさ・・プリーズ テル ミー」

「ホワッ?」

「Gotはどこに居るんだ?」

「ホ・・ホワイ?」

「うん。神様。あっゴッドね。天国にいるのか?」

「メイビー」

「天国かぁ~どこにあるんだろ!」

「アイ ドン ノー」

そこへ、ケビンパパの声が響いてきた。

「ユーたちのゴットは、ミーだ。そして・・・それは、空の向こうにある。」

確かにそうかもしれない。僕はぼんやりと操縦席の左側の窓の外を眺めた。

僕がこんな事をやっている間。佐々木クンそして、悪たれ連はのメンバーは、

連日の様に「あれは取り調べ以上だった」と言っていたけど、散々絞られていたらしい。

少なくとも、佐々木クンでさえ、僕がどこで船から降りたのか?それとも、

海に落ちたのか?飛び込んだのか?さえ、知らなかったわけだから、

昨夜の「とりあえず電話」で30分以上も、ギャンギャンと喚いていた。

「お前!生きているのか?」

「生きていなけりゃ電話出来ないだろ・・・」

「霊界からのお誘いじゃ・・・」

「来るか?ここは天国だぞ!」

「あの世か?」

「やっぱり馬鹿なのか?まあ・・天国に近いところだ。」

「近いところ?」

「ああ・・ハブにやられたら、あの世行きになるか・・」

「判った!沖縄か・・・」

「沖縄だけどね・・・」

僕は、正確に言えば、ここ1週間前から、とあるクラブでピアノを弾いていた。

ケビンとジュニアに連れられ、行ったクラブで、ピアノを弾いたのが始まりで、

このクラブで演奏をしているバンドリーダーから、「代演」を頼まれた・・・

そんな訳で、僕は昼間は操縦訓練を受け、夜はバンドのピアニストが、

復帰してくるまでの間だけ、働いているのだ。

「おい!シン!」

「う・・・うん?」

「ファイナルランディングだ。ユーハブ!」

「ラ・・ラジャーアイハブ!」

ジュニアがタワーに着陸許可を取り、僕に親指を立てた。

「ラジャー!ランディングチェック&ファイナルフラップ!」

僕はゆるやかに右バンクで降下を続けた。

「ランウェイ インサイト!」

そのコールと共にタワーから着陸許可が出た。

まあ、そこそこの着陸だったらしい。「カミカゼボーイ!」と

何回怒られたのか忘れたけど、最初の着陸よりはマシだっただろう。

僕が駐機場に向かっている頃にケビンの機体が滑り込んできた。

「なあ!ジュニア!」

「あん?」

「バツトーバン(当番)やりたいわけ?」

「仕方ないよな・・・」

「だよな・・・」

僕が駐機させた横にケビンの機体が滑る様に入ってくる。

ヨタヨタのボロボロ状態で入ってきた僕とは違う。

まあ、半分は僕のせいだけど、半分は、ジュニアが僕を大笑いさせたのだから、

半分はジュニアのせいだろう。

「OK!ボーイ’ズ!明日から・・・ソロだ!」

そういい終わらないうちに、気が付いたらしい。

「その前に、カーウオッシュ!」

「やっぱり・・・」

僕たちは士官のマイカーを洗車するバツ当番をしなければならない。

まあ、中にはチップをくれる士官もいるので、ちょっとしたお小遣いが

稼げるわけだ。

ジュニアが運転するバイクの後ろに乗り込み、僕たちは外へ出かけた。

僕はクラブの裏手で降ろしてもらい、アルバイトへ向かい、ジュニアは、

「ガールハント」をしに、街へ出てゆく。

「あっ・・・そうだった。電話しなきゃ・・・」

僕は近くの公衆電話へ飛び込み、勝手にコレクトコールで電話を掛けた。

「あっ・・・佐々木!俺だけど・・・」

「に・・逃げろ!・・うわっ!」

「お・・おい!佐々木・・・」

「もしもし[黒ハート]どこにいるのかしら?」

電話を強奪したのは、紗栄子だった。

「ど・・どこって・・・・」

「後ろに誰か居ない?[黒ハート]

恐る恐る後ろを振り向いた途端、まるで鬼の形相で美希が立っていた。

「な・・なんでここが?」と言いかけたときには、逃げる場所はなく、

僕の腕は思い切り捩じり上げられていたのだ。

「連れて帰るわね」

僕から受話器を取り上げ、電話に向かって言った。

「無理!約束あるから・・・」

「何で!帰えるの!」

「か・え・れ・な・い。」

「何で?」

僕は美希に事の次第を喋るしかなかった。

「あと・・・1週間はムリ。」

「1週間?」

「そう!1週間あれば、帰ってくるから・・・」

僕は電話ボックスのガラスと美希に挟まれている時に、バッドタイミングで

ジュニアがガールハントに成功したのか?ハオスクールの同級生なのか知らないけど

女の子を乗せてバイクで滑り込んできた。

「ヘイ!何してんだ?シン・・・」

「見たらわかんだろうが・・・」

「シン?[黒ハート]

「まあね・・・痛ぇ~から放せ!」

「ダメ![黒ハート]

「まだ・・・何か隠してるわよね?シンって・・何?[黒ハート]

「飛行機の操縦習ってんの・・・」

「えっ?[黒ハート]

「明日からソロだし・・・」

「ソロ?[黒ハート]

「単独飛行!」

「へえ~[黒ハート]

「だから・・・それもあって・・・シンってのは、タッグネーム」

「あっそ[黒ハート]

「あっそって・・・いつ・・・こちらに?」

「今朝!佐々木君ゴーモンしてたから・・・[黒ハート]

「ゴーモン?あっ・・・拷問ね・・・可哀そうに・・・」

「口割らすのに時間かかったわ・・・[黒ハート]

「へえ~」

「へえ~じゃないでしょ![黒ハート]

「で・・・いつまでこちらに?」

「一緒に帰る日までね‥[黒ハート]

「ど・・どちらにお泊り・・・」

「ホテルしかないでしょ・・・」

「うんうん・・・そうだよねえ~」

「あなたは?[黒ハート]

「ジュニアの家に泊まるからさ・・・訓練もバツ当番もあるし・・・」

「ダメ![黒ハート]

「ダメって・・・あっ!ステージあるんだ!行かなきゃ・・・」

「飲んで待っているからね[黒ハート]

「あのぉ~そこに止まっている車は・・・」

「レンタカー。あっ!どうしよう![黒ハート]

「あなた・・運転出来たはずよね[黒ハート]

「そ・・そりゃあ~ね。でも、公道は拙いと思うけど・・・」

「あらぁ?運転しているわよね[黒ハート]

「もう・・行かなきゃ!高いのダメだからね。」

僕は店の裏手に駆け込む。まあ、「逃げるが勝ち!」と言う言葉もある。

「ジュニアじゃないけど・・・オーマイゴッド!」とぽつんと呟いた。

-空の向こうに 2-へ続く。


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