SSブログ

僕たちに明日はあるのか?VOL10 [ぼくたちのシリーズ完結編]

ー 空の向こうに 2 -

僕はある事件がきっかけで、バイトと言うより、ピアニストのビルの代わりに

毎晩2ステージ。週末にはほぼ朝までのステージを、こなさなければならなかった。

まあ、簡単に言えば、軍属を半殺しにしていたら、その仲間が、ナイフを振りかざし

そこへ割って入ったというより、おせっかいのビルが、刺されてしまったのだ。

だから、僕はビルの代わりにビルが、復帰できるまでの条件で、ピアノを弾く羽目に

なったというわけだ。

幸い、ビルの傷は浅かったのだけど、「恩を返さなければ男が廃る」というわけだ。

僕もそれなりにチップも貰えるので、一石二鳥?いや、ケガの功名?どちでもいいけど

ビルの太鼓判をもらって、ステージに立っている。紗栄子の店と違うのは、ここでは

僕が歌う必要はない・・はずだったのだ。ちゃんと女性ボーカルがいるんだから・・・

ところが、そうは問屋が卸さないのが、世の中らしい。

1回目のステージを終え、楽屋に戻り喉を潤していた時だった。

「おい!ニューフェイス・・・ピアノマン!」

「ホワッ!ボス!」

「ユーにリクエストね。」

「はあ?」

僕は天を仰いだ。あのまま、ボブが助けなければ、僕は楽に

なっていたか、今、こんなことをしていなくても済む話だったが・・

「いいフレンズ居るじゃないか・・・」

楽屋に来ていた包帯姿のビルが笑っていた。

「そ・・・ソングは・・・」

「やってこい!」

「でも・・・」

「ミーも聴きたいわね・・・」

ボーカルのリリーが微笑んだ。

「お・・・オーケ・・・・・」

果たして、この店で日本語バージョンがふさわしいか判らないけど、

僕が何とか少し喋れる様になった英語は、完全にブロークンイングリッシュ。

まあ、先生はが先生だったので仕方がない。

僕は相変わらずの生活で、週末一緒に夜まで・・・・ベッドで習った英語は

この先、僕にとっては、少々厄介なことになるけど、それは先の話だ。

つまり・・・なんだ。僕は「英語を学ぶ相手」を間違えたけど、厳粛なクリスチャンに

教会に連行されるより、週末だけの自由を選んだ。「健全な男の子」なわけだ。

「ボス!ジャパニーズOK?」

「ノープロブレム。ホワッ?ソング・・・」

「キャント・テイクマイアイズオフユー&アンチェッドメロディー・ウイアーオール・・」

「OK!サムライ!」

また、僕の呼び名が増えたらしい。

バンドメンバーのサポートがあり、僕は2回目のステージを終えることが出来た。

まあ、僕は3曲だけのリクエストを終えた後、お客さんたちから破格のチップを貰った

「ボス!コレ・・・」

「ユアーズ!」

その夜のチップは、全部僕がもらえることになった。ビルも要らないというし、

他のメンバーも受け取らなかったのだ。

「サムライ!シーユートウモロー!」

僕は、メンバーたちに担がれ、客席に降ろされた。そこにはいい感じになっている

ジュニアと彼女が楽しそうにしゃべっていたし、美希は僕の腕をしっかりと掴んで

いたのだ。

「あ・・あのですね。英語のレッスンもあってね・・・」

「だあめ![黒ハート]

僕のレッスン相手。つまり、週末。ベッドの中で「何のレッスン?」と言われても

仕方がないレッスン相手のリンダが睨んでいたけど、とにかく、この酔っ払いを

ホテルに送っていくしかない。

「ジュニア!先に帰るぞ・・・」

「ああ!シーユートゥモローフライト・・・」

僕は酔っぱらっている・・ハズの美希を抱え、レンタカーに積み込んだ。

乗せたと言うべきなのだろうが、正確に言っても積み込んだ。

「もうちょっと・・ジェントルマンになれませんかしら[黒ハート]

「よ・・酔っぱらっていたんじゃ・・・」

「あんなもんで潰れるあたしじゃ・・・」

「ですよねえ~まだ・・飲む?」

「何がいただけるのかしら?[黒ハート]

「ええとぉ~ハブ酒があるよ!泡盛って・・・あの馬鹿!」

僕はカバンをのぞき込むと、二匹のハブが入った酒瓶を発見したのだ。

「ウフフ[黒ハート]

「あ・・あのね。今日は・・・」

「だあめ[黒ハート]

「明日は・・ソロフライトもあるし・・・」

「だあめ[黒ハート]

「ところで・・・ホテルは?」

「ちょっと・・遠いかな。万座の・・・」

「げっ!俺・・無免だって・・・」

「だあめ[黒ハート]一週間。タップリ・・・・クス[黒ハート]

「オーマイゴッド!」

「何か言ったかしら[黒ハート]

「万座って・・・高くない?」

「だって・・ねえ~[黒ハート]壁薄いと・・・[黒ハート]

「あの・・・睡眠も大事じゃ・・・」

「ベッドは大事よね[黒ハート]

「だ・か・・・ら!」

「ダメッ[黒ハート]

「先生でしょ・・・」

「今はね。どうなるか判らないけど[黒ハート]

「えっ?」

「嘘よ!ホテル・・そこね。[黒ハート]

「えっ!」僕はブレーキを掛けた。

「あのさ!もうちょっとで行き過ぎるところでしょ!」

ホテルの駐車場に車何とか停めて、トランクからスーツケースを運び出した。

「あん?」

「なあに?[黒ハート]

「これ見覚えあるんですけど・・・」

「あなたのステージ衣装ね。持ってきたの![黒ハート]

「恐れいります・・・」

「素直でよろしいわね。[黒ハート]

「ところで・・・チェックインは?」

「済ませてあるわ![黒ハート]

「そんじゃあ!部屋までコレ!運んで・・・戻るか・・・」

「だあめ[黒ハート]

美希の瞳が全てを物語っていた。

きっと僕はまた、明日。少なくとも、寝不足は確実になるのだろう。

そもそも、僕が何故英語を学んでいたのか?ちょっと時間をさかのぼらなければ

ならない。

空の世界では、英語が必須。リーディングやグラマーは、何とかなる。

でも、リスニングやスピーキングだけは、少々だったわけで、これは、学校教育の

弊害だったわけで、それに僕の周りを見回しても、変な日本語を話すジュニア以外、

流暢な英語を話す様な、「物好き外国人」は存在していなかったのだ。

「ユーはイングリッシュスタディーしないと・・・」

ジュニアパパのケビンの命令だった。

「フェアー?アイドントライクスクール」

まあ、学校にはうんざりだった。

「イン・ザ・ベッドが一番ね。」

ケビンも変なおっさんで、つまり、ベッドの中で習ってこいと・・・

因みに僕のフライト教官でもあり、変な日本語を使うケビンも

ベッドの中で日本語を覚えたらしい。そんな話をケビンとしていた時、

いつの間にか現れたサエママが、顔を真っ赤にしながら思い切りケビンのケツを

抓り上げたので、話はとりあえずそこまでになったけど、ジュニアがハイスクールに

行っている間。僕はケビンの空き時間には、一緒に空を飛び、様々なレクチャーを

受けた。まあ、色々な教えがあったけど、「イン・ザ・ベッド・レッスン」なら、

僕はいずれ数か国語を話せる様になるかもしれないとさえ、考えたわけだ。

何しろ、僕は単細胞な生き物だから・・・

リンダは、僕が「ひょんな事」からピアノを弾いているクラブのウエイトレス。

僕はフライト訓練を終えると、そのままジュニアに送ってもらい、開店前にピアノの

練習をしていた。リンダは開店準備をしながら、僕の弾くピアノを聴いていたわけだ。

まあ、僕よりちょっとだけお姉さんで、混血のリンダとまあ・・・その・・・

何だ。彼女の住む簡素なアパートで、一線を越えるまでに大した時間はかからず、

金曜日の夜から月曜日の朝までは、ほぼ一緒に過ごしていたし、いつの間にか

僕はブロークンイングリッシュだけど、ジョークまで飛ばせる様になっていた。

そうそう・・・言い忘れていたけど、僕がクラブでピアノを弾くことになった件も

水兵にからかわれていたリンダを助けたからだ。まあ、これは偶然を超えた必然が

互いを惹きつけたのかもしれない。

「こらぁ~何を考えているのかな?[黒ハート]

僕は現実の世界に引き戻された。

「何でもないけど・・・」

「手が止まってますよ!ウフフ[黒ハート]

「あのね・・・後、1か月あればライセンス取れるんだよ!」

「一週間でしょ[黒ハート]

「美希だけ先に帰って・・・後で来れば?」

「本当にライセンス取れるの?[黒ハート]

「多分・・・でも、航空無線とかも取らなきゃいけないし・・・」

「取らせてあげたいけどねえ~でも、今はだめ・・かな・・・」

「何で?」

「帰れば判るわ[黒ハート]

僕は何も知らなかった。いや、正確には知ろうともしなかった。一人合点して

ここまでやって来たのだ。

- 空の向こうに 3へ続く -









nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:お笑い

nice! 3

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。