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僕たちに明日はあるのか VOL14 [ぼくたちのシリーズ完結編]

-空の向こうに 7-

悪たれ連と巫女’sを乗せるため、僕はグルグルと同じ行程を繰り返し、

「民間機のパイロットは大変だ」と少々反省をし始めた。

何故なら、「僕」と「ジュニア」は散々、「民間機」の邪魔をしてきたのだ。

ジュニアに至っては、「トイレ」に行きたくて、「エマージャンシー」を

出した。まあ、僕たちが編隊を組んで飛んでいる飛行機には、トイレは付いていない。

ちょっとその辺に停めて、「立ちションベン」は、出来ない。

まあ、「尿瓶」があれば、「そこに済ませて・・・」と言えるけど、

「窓を開けてポイ!」も出来ないので、降りるしかない。

そうなると、「僚機」として、飛んでいる僕も降りることになるので、

「あちゃ~混んでいる」と思えば、地球環境には悪いとは思うのだけど、

離陸待機中の旅客機には、無駄な燃料を使わせることになるけど、

ジュニアが、適当な理由を「理由」を付けて、「最優先」で降りる寸法だった。

「う~ん。こんなに点検した日はないよな・・・」

降りて、飛び立つ間、残燃料を調べ、ついでに機体のチェックを終わらせねば、

再び舞い上がることは出来ない。

「もう!これで・・・終わりなんだな。」呟いていた。

何しろ、その日乗り込んでいた機体は、最終点検をえ、トーイングされていった。

その時だった。

僕は少々の感傷を抱きながら、格納庫へトーイングされてゆく、機体を追う様に

歩き始めていた。

「だ~れだ?[黒ハート]

僕は、後ろからいきなり抱きつかれ、背中に当たる胸の膨らみに懐かしさを感じ、

でも、その瞬間、両手で目を塞がれている状態だった。

「ま・・・まさか・・・」

そこには、恥ずかしそうにモジモジしている優子と、背中にはミサがぶら下がり、

ついでに、さっきまで「吐いていた・・ハズ」の悪たれと未だ縛られている兄さんが

転がっていた。

「な・・」何でと言う間もなく、今度は僕の口が手で塞がれた。

「私たちも・・・乗せてくれる?」

「急に乗せろといわれて・・も・・・」僕は、ケビンを見ると、

「ノープロブレム!フライトプランは出してある。」

「で・・も・・・・」

機体は既に格納されている。

「セスナなら・・あるぞ!ついでに3時間分の燃料入れてある。行ってこい!」

「行ってこい!と言われましても・・・」

僕はフライトプランすら見ていない。渡されたプランによれば、ケビンが僚機を

操縦して、僕は訓練生として一緒にと言うより、後ろを飛ぶことになっている。

コースは、離陸後、トレーニングエリアへ飛び、そしてグルリと一周することに

なっている。

「この・・・くそ親父」と言いかけて、

僕は黙って頭をペコンと下げた。

本来なら、僕は「最後」は終えていたはずだった。

「ケ・・・じゃなくて、ボス!」

「どうした?シン!」

「どう考えても、この時間からのフライトだと・・・・」

「夜になるわな・・・・」

「そ・・そうじゃなくて・・・・」

「計器飛行での着陸になる。まあ、シンの腕前なら大丈夫だ!」

「だ・か・ら・・・・」

「ノープロブレム!ほら・・・」

ケビンが指さしたのは、僕が軍関係のプロペラ機なら、トレーニング

目的でなら、操縦しても良く、計器飛行もしていいと書いてある

まあ、車で言えば、「仮免許」みたいなものだろう。

「あくまでも・・トレーニングだ!まあ、シンだけなら俺は乗らないけど・・」

コーパイ席にのりこみながら、ケビンがウインクして見せた。

「あれ・・・これ・・・・」

僕とジュニアが「ソロ訓練」に挑んでいた時に、ケビンが操縦していた機体だった。

機体外周のチェックを終え、操縦席の左側。つまり、機長席に滑り込む。

「トレーニーを外して、これを付けろ!」とケビンは、僕にピカピカに光る

機長を示す4本の金色のモールがまぶしかった。

「け・・・ケビン!」

「ほら!さっさとやるんだ。チェックを終えたら・・・」

「ラ・・ラジャー・・・・」

僕はシャツの肩から、トレニーマークを外すと、金モールを付け、計器チェックを

終えた。

「オールグリーン!チェックイスコンプリート!」

「ほら!女神を迎えに行ってこい!ジェントルマンらしくな・・・」

笑いながら、ケビンは僕の肩を小突いた。

「女神?女神ねえ~どっちかと言えば・・・・」

その時だった。

操縦席ノドアをコンコンと叩く音がした。

「まだぁ~[黒ハート]」とケビンが言う「女神」の一人なのだろう。

ミサが顔を出したのだ。

「準備できたけど・・・本当に乗る?トイレ無いけど・・・」

「乗るの!でも・・・おトイレないの?[黒ハート]

「うん。浮いちまったら・・帰ってくるまで我慢してもらおう!」

「間に合いそうも無かったら・・・[黒ハート]

「バケツにする?」

「バカぁ~[黒ハート] 本当に心配したんだからね。」

「ご・・ごめん!」

「いいけど・・もう早合点は止めてね・・・[黒ハート]

「早合点?いや、あれは・・・・」

「あれは・・・ね・・・・[黒ハート]

ミサの説明によれば、優子の言葉足らずとちょっとした奇跡と

僕の許容量がオーバーしたらしい。

「と・・・とにかく迎えに行かないと・・・[黒ハート]

「そ・・そうだった・・・ケビン!迎えに行ってくる!」

そう言い残すと、僕とミサは手を繋ぎ優子が待つ事務所へ向かった。

どこにも、「死角」はあるもので、僕とジュニアがいつも隠れて一服する

場所へさしかかったとき、ミサが足を止め、僕とミサの影はひとつになった。

そして、僕の腕はすっかりホールドモード状態で、優子が待つ事務所へ向かった。

正直。僕は何と言っていいか判らなかった。

もおう、一回だけ飛べる嬉しさはある。でも、”ちょっとした奇跡”は、僕の操縦に

耐えられるのだろうか?とさえ、考える暇は残っていなかったし、ここまで飛んで

きたのだから、多分、手に負えなくなる前にケビンに操縦を託せば済む話だ。

事務所の前には、相変わらず”縛られたままの兄さん”が転がっていた。

この状態で、学校に連れて行けば、謝肉祭(袋叩き)が待っているのにと、思う。

現に、兄さんに対する僕たち以外の生徒の人望はない。

まあ、事あるごとに、竹刀や木刀を持って、僕たち以外の生徒たちを追いかける。

僕たちも、多分、100いや1000発くらいは叩かれているけど、

反対側に廻った今考えると、これほど僕たちの将来を心配してくれている

教師は多分いないとさえ思う様になった。

「お~い!そろそろ・・・いいんでないかい!ビール奢ってもらえなくなる!」

僕は事務所のドアを叩いた。きっと・・・いや、絶対に「見世物」にしようと、

隠れているバカたちを外へ出すことにしたのだ。

-ラストフライト 1へ続く-















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