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僕たちに明日はあるのか VOL22 [ぼくたちのシリーズ完結編]

-鎮守の森・・・1-

いくら、学生だと言っても・・・

いくら、飲み過ぎで、未成年の分際で二日酔いでも・・・

いくら、「今回は試験勉強しないとヤバイ」と言っても・・・

朝は必ずやってくる。

その朝。僕は抜け出した寝床へ戻るのが、間に合わなければ、

風呂場へ行く。

別棟になっている。優子と僕だけの部屋で朝を迎えても、

決まった時間に僕は風呂場へ行く。

この鎮守の森には、僕が「神泉」と呼ぶ。水が湧き出ている。

先ず、朝を迎えたら、神泉をたっぷりと浴び,身を清め、

この鎮守の森に居る時は、必ず、と言っていいほど・・・

まあ、自分の腰なんだけど、思うように動かない時とか

病因送りにされた時(未だ・・・ないけど・・・)とか・・・

あとは、朝早く鎮守の森を出発して、学校へ行く時以外は、

参道から、社務所や社殿の周りを、掃き清める。

まあ、そこへやってくるのは、決まって地区長か、あとは・・・

地区のお喋りナンバーワンのおばちゃんで、関戸のオババ。

そういえば、関戸のオババにバレて、ものの1時間もしないうちに

地区全部の家が知ることになった。オババだ。

確か、あの時は、大宴会になった。

「おう!神主!どこ・・・行っておった。」

今はそっとしておいて欲しいわけだけど、よりによって・・・

地区長とオババがセットで来るとは、僕は運が悪いらしい。

「はあ・・・沖縄に・・・・」

「沖縄?ああ・・・琉球・・・・何しに・・・」

まさか、ジュニアが邪魔しなかったら、深い海の底に眠っていた。

そんなことが言える訳がない。

「はあ・・・ちょっと・・・英語の勉強に・・・」

これは、嘘にはならない。ブロークンなイングリッシュだけど、

僕は女の子も口説ける様になったし、意思の疎通も図れる。

まあ、そんな機会が来るわけはないけど、上流の方々との会話は

やめておいたいいらしい。

「英語・・・・」

「嫌ですねえ~一応、僕・・・学生ですよ?」

そこへ、ちょっと目立つ様になってしまったお腹をさすりながら、

優子がやって来た。

「おや・・・優子ちゃん!えっ!・・・もしかして・・・」

「もしかしてって・・・なんじゃ・・・関戸の・・・」

「おめでたじゃの・・・優子ちゃん!」

「は・・・はい・・・・」

口止めすべく。お茶に誘ったけど、時すでに遅しで、

「こうしちゃおれん!」と二人はそれぞれ・・・境内を出て行った。

「あちゃ・・・・・」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

僕と優子はため息をつくしかなかった。

昨日も横浜のママの所で宴会だった。多分、今晩も宴会。それも・・・

優子と結ばれたあの日の宴会と同規模になるのに違いない。

「まだか・・・まだか・・・」とせっつかれていたので、

どうなるのか?まあ、僕は3日酔いになるだけだろう。

でも、優子は一体何しにここへきたのだろう。

「優子!・・何か用があったんじゃない?」

「あ・・・そうだった・・・」

「で・・・何?」

「うん!あのね・・・横浜のママにいただいた・・・お祝い。」

「うん。偽札でも入ってた?」

「そっちの方が良かった気がするけど・・・・」

「何さ?」

「あのね・・・いただいたのが・・・・半端ば金額じゃなくて・・・」

昨日帰る時に、ちょっと早いけど・・・

横浜のママから、「出産に必要なものを買いなさい。無理なバイトだめ。」

ママから、それなりに入っていた現金入りの封筒。

そして・・・・

「これは・・・・M子とH子から・・・・貰ってあげなさい!」

通牒が2冊と印鑑が二つ。それが入っていた封筒も優子にぶん投げていたんだ。

「へえ~」

「へえ~って・・・・中身気にならないの?」

「全然・・・横浜のママが慰謝料だっていっていたから・・・もらったけど・・」

「あたしだって・・・そんなに入っていると思わなかったけど・・・」

「数十万くらいでしょ・・・たいした金額じゃないよ・・・」

「ケタ違いよ・・・・宝くじくらい。」

「へえ~じゃあ・・・・それだけあれば・・・・」

「いいの?嫌だったんじゃ・・・」

「宗旨変えしたんだよ。」

「宗旨変え?」

「うん・・・えっと・・いしゃりょうとそんがいばいしょう・・・とか・・」

「えっ?」

「だから。慰謝料と損害賠償。ついでに利息だと思っておけば・・・」

「嫌じゃないの?」

「そうだねえ~嫌だったけど。お金に色はついていないって・・・ママが・・」

それは、昨日の事だった。横浜のママにまた押し付けられたわけだ。

まずは、ママとおじさんからで、多分。一束くらい?だと思う。

多分と言うのは、そのまま優子に渡しちゃったから・・・だ。

次が、各々。僕名義の通帳と印鑑が各1本ずつ。

僕には、横浜のママの他に、実の母親と育ての母親(こちらは姉妹)

妹の方が実母で、まあ僕がお腹の中に居た時?に始まったのか知らないけど、

実の父親(養父の使用人だった人)は、他に女をこしらえて・・・

確か、こっちは5人の子供がいる。

実の母親は、良く判らないけど、僕を産んですぐ」。僕を放り投げて、

歯医者の所へ嫁に行った。こっちは子供が2人。

そうなると、僕は8人兄弟になるわけだけど、そんあのは関係ない。

その後、僕は養父と実の叔母で実母の姉で養父の奥さんに引き取られた。

でも、こっちでも僕は「いらない子」だったわけで、小学校3年生の終わりに

捨てられたんだ。その後、養父は飲み屋の女を家に連れてきたけど、

僕が懐くわけがない。まあ、仲間たちは「ブルドック」と呼んでいる。

出来ればであるけど、ナイスバデイーで優しくて、若い後妻だったら、

多分。僕はしっぽをブンブンと振り回し、懐いただろうと思う。

そんなわけで、貰った通牒2冊は、実母とその旦那から、

慰謝料と損害賠償(産まれたばかりの僕が受けた数々の理不尽による損害)

ついでに、お詫び金とそれらモロモロの利息だろう。

次に、育ての母親からのもので、こちらは、僕が受けた理不尽な体罰の

慰謝料と僕の貴重な時間を潰させた損害賠償と、僕の預金を使い込んだ分の

賠償金らしい。どちらも、横浜のママが取り上げたらしい。

「で・・ね。」

「え・・・ごめん。聞いてなかった。」

「こんなに貰っていいのかと・・・」

「う~ん。ママのはね。それ以外はとりあえず・・・」

「とりあえず・・・」

「使う気はないね。全く・・・」

僕はこんなドロドロの腐れ切った大人が寄越したお金は使いたくない。

使ってしまったら、僕も腐ってしまう。

でも、とりあえず・・・そう。ママが言っていたんだ。

「お金に色はついてないわ。貰うのが嫌なら借りた事にすれば?」

「借りた?」

「そう・・・これからはお金がすごくかかるの。だから、必要な時に・・」

「嫌だけどね・・」

だから、渋々受け取って来たけど、中身はみていない。

僕への慰謝料は、きっと僕の価格だ。言い換えれば、プライスレスではなく、

きっとこの中身が、僕の存在価値なんだろう。

「どうしたの?」優子が僕の顔を覗き込んだ。

そうだ。僕はやることがある。目の前の命。そして、確かに鼓動を打つ

優子のお腹の子供を、プライスレスで守り抜かねばならない。

「優子・・・」

「んっ?」

「お腹空いた・・・・」

その時。優子は何かに気づいたらしい。

「そうだった・・・ご飯に呼びに来たの・・・」

僕と優子は手を繋ぎ。家に戻っていった。

やはり、僕の帰るところは、ここなのだ。

- 鎮守の森・・・2-へ続く。






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