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僕たちに明日はあるのか VOL24 [ぼくたちシリーズ最終章]

-鎮守の森 3-

社務所へ這う這うの体で戻った僕。

僕は定期試験を控えた。他の高校生と同じ様に

いや、正確に言えば、僕が開いているのは、教科書ではない。

どうやら、先生方の間では、僕が「クビになった方が良い」と

思う先生方と「クビだけは助けてやろう」という先生方が居る・・らしい。

まあ、二人は説明しなくても判ると思う。兄さんこと学年主任で、

僕たち「社会関係奉仕部」の顧問。そう優子のお兄さん。

それと、禁断の関係(生徒と先生だしね・・・)の美希。

この二人は判るんだけど、続々と学校に届く感謝状と表彰状。

おまけに、学校内部の癌は放逐したし、ついでに信州遠征に出かけている

村からは、それなりの用地(古い木造の学校だったはずの建物が建っている)

そこを寄付されたらしく、そこをトンテンカンカン・・と内装。

いいや・・・聞いた話では腐った床とトイレを直して、給食室は、台所。

教室には、これまたどこからか・・・貰った2段ベッドを入れて・・・

ついでに貸布団屋を経営しているOBから、古いものを貰って・・・

僕が沖縄でベッドの中で英語を習ったり、飛行機の操縦訓練を受けたり、

そんな事をしている間に、佐々木クンたちは、肉体労働をしていたらしい。

まあ、そんなわけで、「こいつらは少しは役に立つ」と考えたのか?

それともわが身が可愛いために、報復を恐れているだけなのか?

それなりの数の先生たちが、一目を置きだしたらしい。

まあ、強硬に「クビ」を主張している先生たちも居るけど、

大体は、僕らに車に「特製燃料」を入れられた先生。ついでに言えば、

駅の階段でドサクサ紛れにケリを入れたら、階段下に転がった先生とか

平穏で平和を望む(僕らの学校では無理だと思うけど・・)先生とか

そんなのは未だ居るらしい。

「勢力図は・・・4対6くらいだけどね・・・」と美希が言っていたので、

僕をはじめ仲間たちは、今回の試験もそれなりの点数を求められている。

試験は習った所しか出ない。つまり、要領だけは人一倍の僕たちは、

先生方の「アンチョコ」つまり、教科書ガイドだけ手に入れば、

なんとかなる。

この・・・教科書ガイドは、教科書出版会社から買わねばならない。

直接買える会社(弱みは握っているところ)はいいけど、それ以外は、

書店経由になってしまう。

まあ、僕の手元。いや、僕たちの手元には、全教科の教科書ガイドを、

兄さんから、「まあ・・・なんだ。参考書みたいなもんだ・・・」と

配られたので、後は・・・傾向と対策を狙えばいいし、万一のために、

問題用紙は持ち出せないけど、それなりの情報協力者はいる。

この情報協力者は、僕たちの先輩にあたる人なんだけど、偶然にも

僕の実家の近所の釣具屋の息子。

つまり、実家が潰れても困るらしいので、情報をくれる。

まあ、それなりのお返しは、ダンボール箱一杯のビニ本を届けおいてある。

この・・・「先輩」は、メインのお仕事が、印刷室勤務なんだ。

「試し刷り」と称して、試し刷りをしてから、ナンバーリングする。

つまり、試し刷りにはナンバーリングされていない。

「さてと・・・やるか・・・・」

まあ、教科書ガイドを一読すれば、及第点は取れる。

応用できるか?それで点数は上がるわけなんだけど・・・

そうは問屋が卸さないのは、Yクンの数学だ。

理系のクラスに居るのだが、1回喰らったのだった・・・

「大丈夫だよな・・・あいつら・・・」

そう思いながら、手に入れてある過去問題集を解いていると、

何やら外が騒がしい。

「お~い!」と呼ぶ声は、紛れもなく佐々木クンで、

単体でこんな「いなか」までやってくる奴ではないので、

外へ出てみると、全員揃っている。ついでに兄さんが居る。

「あん?どうした・・・」

「実はな・・・・」

佐々木クンによれば、畜生じゃなかった

地区長が本祭りの準備に緊急招集をしたらしい。

「あっ・・・道理で・・・どこかに電話していると・・・」

それは、昨日のことだった。

「今年も豊作だし・・・ついでに鎮守様・・・」

鎮守様と言うのは、僕が今居る。魔女の森こと鎮守の森で、

一応、人間のオスは、僕だけが居住を許されており、

後は、鶏の「委員長」の一羽と後は池に居る鯉に釣ってきたハヤに

オスが居るくらい。それ以外は、全部・・・なのだ。

昨日、僕が帰って来たので、大宴会になり・・・(村人全部が来た)

その時に、何やら相談しており、どこかに地区長が電話していると思ったけど、

緊急招集をしていたらしい。何故なら地区長の孫。由香ちゃん2号は、

白〇クンの将来の奥さんなのだから、まあ断れなかった・・・らしい。

それに・・・もうひとつ。優子のお腹がバレたらしいので、

「よくやった・・・・」と僕は散々飲まされ、酔いつぶれた。

「お・・・思い出した・・・あ・・・アレ・・か・・・元凶」

そんなわけで・・・全員。誰一人欠けることなく。集合したのだ。

「でもよ・・・お前ら断れよ・・・偶には・・・」

「無理だろ・・・」

「試験大丈夫なのかよ・・・・」

「ああ・・・コレ!お前の分。コピーしておいた・・・」

「ふ~ん・・・・」

そこへ兄さんが加わってきた。多分・・・何か言いたいのだろう。

「あのな・・・」

「はい・・・・」

「今回は、手加減無しでいい。全部満点たたき出してやれ・・・」

「いいんですか・・・手加減しなくて・・・」

「ああ・・・そういうことだ。」

「ところで・・・後ろいますよね?」

「人気者はつらいというところだ・・・」

「教えてくれなくていいですよ・・・一人ずつ潰しますから・・・」

「えっ・・・ど・・どこまで・・・知っている?」

「アルバイトですか?1点いくらとか・・・あと・・・・これは拙いですよね」

「えっ・・・?」

「気持ち悪い写真ですけど・・・ね?知り合いから貰いました。」

「・・・・どこから・・・」

「いやですねえ~この中に写っていますか?」

兄さんが指をさしたのは、僕らに理解を示した風に近寄ってきた

美術のタヌキだった。

「なるほど・・・」

胡散臭いと思っていたタヌキだ。あれは確か1年の1学期だった。

1年坊主は、美術や音楽等の選択授業があった。

まあ、その時に・・・まだ新車と言ってもいいくらいの車に乗ってた

タヌキの車に3年生を自転車に無理やり乗っけて、突っ込ませていたのだ。

「あれ・・かぁ~懐かしいよな・・・なあ!部長。」

「うんうん・・・・懐かしい。大人しくなったと思ったら・・・」

「また壊すか・・車?」

「いいや・・・この際。この写真の皆さんには、即刻退場かな」

僕が兄さんに見せた写真は、Sさんがから貰ったばかりのホカホカ。

お相手達は、PTAの口うるさいオバさんたち。

Sさんの傘下のシノギだったらしいけど、「お守りに使え!」と

貰った写真だった。

「兄さん・・・相談なんですけど・・・」

「な・・・なんだ。」

「これ・・・全校にバラ撒いても面白いですよね?外部流出させたり・・・」

「・・・・・やめ・・・・」

「了解です。学校潰しちゃ洒落にならないし・・・ただ・・・」

「ただ?」

僕はニヤリと笑った。

-鎮守の森 4に続く-
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