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「ツアコンとガイドの違い・・・」 第1章 [旅行のイロハ]

まえがきに代えて・・・ツアコンとガイドは違うので間違えないで!

よく言われるのが、「ツアコンだったくせに・・・」。
まあ・・・ちょっと知ったかぶりをする・・「ど素人」の発言と放置する。
みなさんの中にも「ツアコンとツアーガイド」を間違える人はいませんでしょうか?
K社の役員である。K氏もその一人。
「お前さぁ~ツアコンだったんだろ!案内しろよ!」
この時点で間違えている。こんな人でも役員になれるのだから、日本はなんて住みやすい国。
いや・・・一般人である人々には住み難い国になっている。
ここで・・・ツアコンとツアーガイド(通称:ガイド)との違いを明らかにしておくことにしよう。
そもそも・・・「ツアコン」と言うのは、ツアーコンダクターの略。昔風に言えば添乗員。
「ツアーガイド」とは・・・ツアー案内人。職種が違うのだ。
ここまでの説明で明快に理解できる人は、多分100人に1人ぐらいだからまだ心配しなくても大丈夫。
大会社の社長でも解らないのだから・・・解るのは・・旅行業観光業関係者くらいなのだから。
まあ・・・その中でもごっちゃになっている人間がいるくらい。

では、どのように違うのか説明していくのに・皆さんは「トド観光」主催旅行に参加しなければならない。
皆様・・それでは・・・「旅支度」はよろしいでしょうか?

「第一章 さあ・・旅に出よう!」

今回の旅行はとりあえず・・初回なので・・2泊3日のミステリーツアーにご案内しましょう。
旅に出る・・あなた。まず最初に集合地である。A空港へご集合いただかなくてはなりません。
公共交通機関やタクシー・家族の送迎と様々にご集合いただくことになっているわけで・・・

待ち合わせ場所にいるセンダーとツアコン。きびきび働く若い女の子と、その横にいる低血圧故か太っているせいか未だ謎の中年のおじさん。
誰が見たって・・・「添乗員はあの女の子がいいなあ~」と思うはず。
でも・・残念ながら・・・添乗員つまり・・ツアコンはこの私。オストドなのだから・・諦めてもらうしかない。
キビキビと受付業務をこなしてゆく女の子は、「センダー」つまり・・送り人。
送り人と言っても勘違いしないでください。あの世行きのツアーではありません。
やむを得ず・・目的地が「あの世」になる可能性はゼロではありません。例えば、飛行機の墜落とかもあり得ますので・・
受付をしながら再集合時間を的確に伝えていく女の子の業務は皆さんの集合時間の1時間前から、私ことツアコンとの打ち合わせと称した・・・ナンパじゃなくて・・・口説きでもなくて・・・そうそう・・・打ち合わせから始まっています。
ツアコンである私のスタンバイ時間は、お客様集合時間の国内線なら1時間前以上。国際線なら2時間前以上。
今回は国内線。でもお客様の集合時間は7時。フライトの出発は8時過ぎ・・・家(と言っても・・ボロ〇パート)から来たのでは間に合わないので・・・昨夜は・・・ラブホそれともビジネス旅館?と言いたくなる様な・・・つまり、宿泊料金の安い宿に泊まり、予め手配しておいたタクシーに同僚と乗り込んだのは、午前5時過ぎにタクシーで空港へ到着。
今回はちょっと予算があるので・・・センダーが付くので・・・必死に眠気と闘っていればいい。
この「センダー」とは、センディング担当で空港のチェックイン業務を担当することが、主業務。
この女の子に持参したツアー名称札と航空券。タッグ類を渡しておけば全部やってくれることになっている。
「添乗さぁん・・オールオッケーです。再集合は・・10分後です。」
「おや・・・早いね!脅しが効いたかな?」
私は昨日・・・「出発確認のお電話」と称して・・集合時間の確認および参加者の間違いがないかチェックしてある。そのとき・・・・「集合時間に間に合わなければ・・おいて行きます」と冗談半分、本気半分で伝えてあるのだ。
「それから・・・お預かり物です。」
「あっ!ありがとう・・・」
これ・・・添乗員つまりツアコンを確認しないでセンダーにチップを渡してしまう・・・早合点さん。
しょうがないので・・・薄い財布から1000円札を一枚抜き出し・・・
「ご苦労様!コレで・・後でお茶でも・・・」 口止めの意味もあり・・・まあ・・チップを貰って怒る人間はいません。

ここでポイント! 「チップはツアコンに早目に渡すのがベターです。
特に・・・いい思いをしたい方!一日あたり・・・1000円を目安に包んで渡せば・・・旅費の元手を回収するのが容易です。早合点さんのように、ツアコンの確認をしないで渡すと・・・効き目は低いですよ!

おやっ!お客様方・・再集合もスムーズ。それじゃあ準備しなきゃいけません。腕章・ネームタッグ・会社の旗などを使い込んだパイロットケースから出せば、準備完了です。

「皆様お早うございます。このたびは私どもトド観光主催。2泊3日ミステリーツアーへご参加くださいましてありがとうございます。私、ツアーコンダクターとして皆様のお供をさせていただきます。トド観光のオストドと申します。そこの男性の方・・今一瞬がっかりした顔をなさいましたね?キャンセルされるのはご自由ですが、キャンセルチャージは100%。
つまり・・・お金の払い戻しはございませんので・・・どうぞ宜しくお願いいたします。
それと・・・お荷物のほう・・・機内お預け入れご希望のお客様はいらっしゃいますでしょうか?はい。ありがとうございます。お荷物に入れ歯やカツラを、お荷物の中には入れておりませんね?それかっら・・・貴重品は大丈夫ですか?
後は・・・・割れ物・・・無いようですね。お荷物を預けられる方はこの後、こちらにお残りください。・・・・・・・・」

まず・・・ツアーコンダクターである私の仕事は、会社を代表してのご挨拶。それから・・・所々で人員確認。
そして・・・目的地まで・・・やれ・・・飛行機に乗ってください。はい!トイレは後じゃ・・あれですから・・・そこにあります。
とか・・・雑用をこなし・・・各楽器(各々のお客様)を指揮するのが仕事なんです。
ですから・・・某〇イスのチョコレートをコーティングしてあるポテトチップスの売り場なんか知りません。
あしからず・・・ご了承くださいね!

「では・・・いいですか?次に・・・飛行機に乗りますからね!」

ガイドのいない部分の誘導はツアコンの義務。でも・・・いちいち・・旗を持って「こっちだよ!」ってやるのはどうも性分に合わない。ゲート前で再集合を掛けても・・・混乱を生じるだけ。
勝手に飛行機に乗ってもらうのが一般的。まあ・・心配症のツアコンは集める。
でも・・・私思うのですけど・・・・一番最後にゲートをくぐれば問題ありません。

「ねえ!今日のPAX何人?」
「450名様です。」
「今・・何人通過した?」
「ええと・・・449名様ですね・・・」
「誰だ・・あと一人の馬鹿!・・ああ・・俺かごめん!」

慌てて・・カバンを抱えゲートをくぐり・・・機体に入った途端・・・

ガシャン! ドアのクローズされる音!

つまり・・・これが・・ツアコンが航空会社に恨まれる理由のひとつ。
見送ってくれるGH(グラホ)や整備関係者に見送られ・・・席に着きシートベルトと格闘しているうちに・・・
機体はタクシングを始めています。

「あっ!・・本当にお客さん全部乗ったのだろうか?」 シートベルトを外して数を数えようとするツアコンの私。
そこへ・・満面の笑みを浮かべた・・・スッチー(CAのこと)がやってきて・・・

「添乗さん・・大丈夫です。全員乗っています。」(いいから・・・さっさと座れ!いつか殺すぞ!コノヤロウ!)
「ああ・・そう!」 と言いながら・・シートベルトを装着しないうちに・・・ピン・ピン・ピン・・・と離陸を知らせる合図音。
スッチーは慌てて・・・自分の席に戻り・・・シートベルトを掛け終わらないうちに・・・離陸を始める・・機体。
いよいよ・・・ツアー出発ですが・・・半分の仕事を終え・・眠りに付いたツアコンの私と不安を抱えたお客様の旅は幕を開けるわけです。


「ツアコンとガイドの違い・・・」 第2章へ・・・続く


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「ツアコンとガイドの違い・・・」 第2章 [旅行のイロハ]

ツアコンとガイドの違う点

さて・・・A空港を飛び立った私とそして・・・おまけのお客様。じゃなかった・・・おまけは、この私。

ぐっすり寝込んでいるようn見えるでしょうが、「夢」に魘されているのはしょっちゅうの事。

例えば・・・「業務上過失致傷」とか「業務上過失致死」なんて嫌な言葉が常に一緒に旅しています。

ここで簡単に「業務上ナントカ」に問われる例をご紹介しておきましょう。

皆さんと一緒に乗っているバス。楽しいことばかりじゃありません。

いつ起こるかわからない交通事故。乗っているバスが人を撥ねたり、物を壊すくらいなら・・・まだマシ。

例えば、運転手さんが居眠り運転をしてバスがガードレールを突き破って・・転落・横転なんて言うのも

考えたくないけど起こる場合があるんです。

そうなれば・・・お客様を救出するのが添乗員であるツアコンの使命です。

「例え火の中水の中・・・」と言う言葉どおり、すべてのお客様を安全な場所に避難させる必要があります。

燃え盛るバスの中にまでも飛び込んででも、救出しなければこの「業務上ナントカ」に問われるのです、。

ですから、ツアコン1年生・・いや・・見習いになって研修初日に習う事は、「事故がおきたら死ね!

シャレでも冗談でもなく・・そう習うのです。

泊まっている旅館が火事になってもそうです。自分のお客様が一人でも炎の中に取り残されている場合には、

消防隊の静止を振り切ってでも飛び込まねばなりません。

まあ・・旅行中の皆様の安全をちょっとでも守らなくてはいけないのが、ツアコンの役目です。

旅行中の皆様は私人。つまり労災の適用はありませんけど、ツアコンには適用されます。

あと・・適用されるのは、会社の慰安旅行の幹事様や、しょうがなく修学旅行を引率されている先生などぐらい。

ですから・・・「添乗員気楽な稼業ときたもんだぁ~」と歌わないでくださいね。

もうひとつ・・・ツアコンには大事な役目があります。ツアーコンダクターの意味を分解してみましょう。

ツアー=旅。コンダクター=指揮者。つまり・・旅という限られた時間をいかに効率よく使えるか?

それがツアーコンダクターである人間の裁量ひとつです。

ツアーコンダクターは、「取り扱い主任者」と言われる資格は持っていなくても構いません。

別に、お客様の代わりにキップの手配やら旅館の手配をするわけでもありません。

ツアーコンダクターの必須の資格は、「旅程管理者」と呼ばれるものです。

昔はこんな資格がなかったので・・阿呆でも馬鹿でも、添乗員にはなれたのです。

しかし、オストドがツアコンになったときにこの制度がスタートしていました。

オストドの資格は、「一般旅程管理者」この資格がないと海外での添乗業務は出来ない事になっています。

まあ・・・資格証を首からぶら下げて歩くわけでもないので、持っていない人のほうが多いです。

国内専門の人間は「国内旅程管理者」で充分要件は足ります。

「ツアコンのプロ」 (ツアコンの恥さらしと言うのもいますけど)を自称していたオストドですから、当然有資格者。

その辺のアルバイト感覚の人間とは違います。

おや・・・そろそろ・・着陸のようです。そこでトドのように鼾を掻いて寝ている馬鹿をそろそろ・・起こしてくれませんか?

さあ・・旅の続きをしましょう!

たっぷりと睡眠を貪っていた私。お客様に大事なことを伝えるのを忘れてました。

「勝手にどこかに行かないでくださいねえ~」 機内で怒鳴る羽目に・・・

お客様より先に機外へ飛び出す私。ツアコン7つ道具のうち一つである「旗」をひらめかせ、

勝手にお客様がどこかへ行かれるのを阻止するのも大事な役目。

「ちっ!あのやろう!」 と思われても私の元に集まらざるを得ないお客様。

だって・・・ミステリーツアーですから・・・この先どこへ行くのか解りませんものね?

まず・・・お客様にお尋ねしなければならないことがあります。「おトイレ行かれる方いませんかぁ~」

「じゃあ・・・行きましょうか?」 旗を高々と掲げて歩く私。それに連れられて歩く皆様も恥ずかしいでしょうが、

旗を持って歩くのも恥ずかしいものです。ですから・・海外では旗ではなくバインダーを掲げています。

まあ・・・どっちにしろ「馬鹿」にしか見えませんが・・・・

ターンテーブルから吐き出される荷物の山。勿論、私の仕事があります。

それは・・・預け入れた荷物の個数と出てくる荷物の個数をチェックすることです。

いくらミステリーツアーと言っても荷物がどこかへ行ってしまってはシャレにもなりません。

よく言われる「ロストバゲージ」です。幸い私が優秀なのか?地上係員が優秀なのか?

それとも荷物を積み込んだ航空会社のスタフが当たり前の仕事をしたのか?よく解りませんが、

無事に荷物が出てきました。

ここからは、泣き言を言っても脅かされても、自分の荷物は自分で運んでもらうことになります。

あらら・・・まだ・・・到着口にガイドのアシカ嬢の姿がみえません。

おや?あそこをまるで氷の上を滑る様にやってきたのはガイドのアシカ嬢です。やれやれ・・・ほっ!

お客様の引渡し・・・

ツアコンの案内はここまでです。ここからは、ガイド嬢の出番。

何せ・・こんな・・ど田舎の空港のことなんか、覚えてられません。年間300日も次から次へと旅している私。

乗った飛行機の回数は、年間に肘鉄を喰らう回数と同じ。おサイフの中にはいろんな国の紙幣やコインが

ぐっちゃぐっちゃの状態なんていうこともしばしば起こります。帰ってきたその日に次の旅に出発することも

日常茶飯事。労働基準法なんて言葉に見捨てられています。

さて・・アシカ嬢の後についていくお客様と私。だって・・バスがどこに停まっているか解りません。

アシカ嬢に手渡しておいたバスの座席表がバスの入り口付近に張られ、バスにお客様が乗り込んでいる間に

簡単な打ち合わせをする私。ドライバーは白熊さん。

「じゃあ・・簡単な打ち合わせをしましょう」 と宣言する私。

ミステリーツアーですからお客様に聞こえてはマズイ。白熊とアシカそれにトドの3頭が額をつけるように・・・

「密談」状態で話し合います。そのとき・・・さりげなく「心づけ」をドライバーさんに渡すタイミング。

何せ・・・ツアコンがネコババするわけにはいきません。封筒に領収書を入れてサインしてもらいます。

大体・・・1日1000円x2名分x日数が相場。まあ・・その会社毎に取り決めがあるらしくお任せします。

「ここで・・何分とるでしょ・・そうすると・・・」なんて打ち合わせを終了して・・・

「じゃあ・・・お願いします!」とバスに乗り込む私。

バスが走り出しますと・・・決まって「私のご挨拶」から幕は切って落とされる事になります。


「ツアコンとガイドの違い・・・」 第3章 「ツアコンの行程管理へ」・・・続く・・・

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「ツアコンとガイドの違い・・・」 第3章 「ツアコンの行程管理へ」 [旅行のイロハ]

「ツアコンの行程管理」

お客様をバスに誘導し・・・一番前の座席に陣取る私。
「ずるい~!」と言う声も聞かれますけど・・・ドライバーさんやガイドさんと内緒話もしなければなりません。
何せ・・・ミステリーツアーですから・・・私の手元にあるはずの行程表もありません。
これは・・・嘘です。しっかり・・・カバンの奥底にしっかり・・・仕舞い込んでいる・・はず・・あれ?
ああ・・・あったあった・・・ああ・・びっくりした。
私たち「ツアコン」の大半は旅行業者に属しているほうが、数少ない。
大半が・・・派遣元と言われるツアコン専門の会社にその席を置いています。
私も・・・・トド観光に移る前は・・・とある「ノアの箱舟」と呼ばれていた会社に所属しておりました。
したがって・・・・色々な旅行会社に派遣されることになります。
大体の大手や中小・・・・そしてジャリトラと呼ばれる・・吹けば飛ぶような会社にまで派遣されるのです。
私・・オストドの場合、ノアの箱舟から・・・Kツーの子会社へ移籍(本人の承諾は・・・なかったからほぼ強制)。
その後、T観光へ移り・・・フリーのツアコンとして独立。
まあ・・・トド観光に一応・・席を(結構・・私と一緒に旅をしたいと仰ってくださるお客様が多いので・・)置いています。
フリーになって良かったことは・・・日当が格段に違うことです。
1日何時間働いても・・日給5000円からのスタートが今では・・・1万円とか1万5千円になっています。
どうです?お客様を守るためには命も投げ出さなければならないツアコンの給料・・・安いですよね?
いいこともたくさんあります。ツアコンの日当はそのツアー毎の清算。つまり・・・朝帰国して夜出国すると・・・
一日で二度美味しい!つまり・・・二日分の日当を頂くことが出来るわけです。
その他にも・・・色々役得が一杯あります。まず・・・ホテルでの冷蔵庫代金とかクラブや夜食コーナーのお金を殆ど払いません。業務の電話代もマッサージ代もほとんどタダ!
まあ・・・請求が来れば払いますけど・・・私たちの日報のホテルの評価を書く欄があるので・・・大体、請求してきません。請求されなければ・・・払いませんし、日報に「茶碗蒸しのタマゴが腐っていた」とか「従業員がお客様の部屋で喫煙をしながら・・・布団に寝そべりテレビを見ていた」とか書かない場合もあります。
まあ・・・お客様に対してのホテルからの誠意にお客様が納得していただいた場合だけですけど・・・
あと・・・お土産物屋さんからも何故かお小遣いと称して・・・頂いたりもします。
お客様からも・・・「タバコ代にでもして頂戴」とか「お茶代」と称して、出発前に頂いたりもします。
でも・・これ・・・私だから効果はあるのでして・・・ずぶの素人とかには効き目はありません。
ホテルひとつとっても・・・同じ条件で全部揃うことはありません。眺めのいい部屋(女湯が覗ける場所ではありません)
とか、グレードが違う部屋を平気で主催旅行にも割り当てるホテル。そうなれば・・・心づけを頂いたお客様に割り当てるのが・・・筋ってもんです。

ああ・・・やっと白熊さんバスを発車させました。何せ・・・オンボロバスですから・・・エンジンを掛けるのに時間が掛かるんです。アシカ嬢が・・・「ほら・・さっさと挨拶してよ!」と私にマイクを投げて寄越しますので・・・ご挨拶をしてバスを進めましょう。

「ええ~皆様!改めまして・・お早うございます。このたびは私ども・・トド観光主催のミステリーツアー2泊3日にご参加を賜りまして誠にありがとうございます。私・皆様方のお供を務めさせていただきます。添乗員のオストドでございます。
不束者ではございますが、3日間どうぞ宜しくお願いいたします。なお・・皆様にお願い及び諸注意事項がございます。
まず・・・第一点。これから訪れる場所はどのような魔物が出てくるか解りませんので、ご自身の命と貴重品は必ず、自己責任で管理のほど宜しくお願いいたします。それから・・第二点目でございますが、各見学先でのご集合時間はくれぐれもお守りいただきます様お願い申し上げます。お守りいただけない場合には、ツアーの前途無効を宣言させていただくこともやむを得なくなる場合もございます。山に中に置き去りになり・・そのまま行方不明のお客様もいらっしゃいますので、何卒、円滑な催行にご協力賜ります様、お願い申し上げます。・・・・・」

ここで・・・正式にツアコンからガイドにバトンをタッチするのが、一般的なんです。
ここからツアコンの仕事は行程表にかかれた時間を管理します。なにしろ・・・帰りの飛行機に乗り遅れたら大変。
一回・・・飛行機の出発を遅らせたことがあります。まあ・・遅らせたと言っても・・・ほんの30分ですけど・・・

「ねえ・・・白熊さん・・昼食の場所には何時くらいかな?」
「そうだな・・・12時は廻るかな・・・今日混んでいるもんな・・・」
「ケモノ道ない?」
「あるけど・・・コレじゃ曲がれないし・・・・」
「じゃあ・・・出来るだけ飛ばしてくれる?」
「捕まったら・・・罰金払ってくれよ!」

ツアコンの仕事は段取りが主な仕事。昼食の時間だって・・・1時間なんて取っていたら・・・大変なことになります。
ですから・・・お昼ご飯前の見学先から・・・昼食の会場へ・・人数と大体の到着時間を知らせることが当たり前の仕事。
これを・・・毎日、ホテル・・食事場所等に連絡をして・・・ガイドがお客様を誘導してくる間に・・・観光場所の入場券売り場に走り・・・クーポンを切り、入場の準備をするのです。

ですから・・・ガイドの説明なんて聞いていませんし・・・ここまでどうやってたどり着いたのかも覚えてません。
大体・・・ツアコンが起きているとガイドがやりづらくてしょうがないと言うこともあり・・・大体は昼間寝ています。
何故なら・・・夜の活動に備えないと・・・生身の身体ですから・・・ボロボロ状態になってしまいますから・・・

「ツアコンとガイドの違い・・・」 第4章 「ツアコンは気楽な稼業ときたもんだ?」へ・・・続く・・・・




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「ツアコンとガイドの違い・・・」 第4章 「ツアコンは気楽な稼業ときたもんだ?」① [旅行のイロハ]

「ツアコンのこぼれ話」

さて・・・旅行の初日のお泊りは大きな温泉場でございます。
ここで・・・気をつけなくちゃいけないのが・・・前回、別のツアーで訪れたときみたいに・・・
「食中毒未遂事件」に気をつけねばなりません。
前回は到着が遅れたので・・・助かったけど・・・今回は大丈夫なんでしょうか?支配人に念を入れておきましょう。

「もしもし・・・トド観光のツアコンのオストドだけど・・・」
「はい・・・お待ち申し上げておりました・・・」
「あのさ・・・今日のルームくれる?」

ルームとは・・・割り当ての部屋番号のこと。大体・・4~5名様一部屋とか、色々な条件があるんです。
このとき割り当てられた部屋番号・・・ついでに私の部屋とアシカ嬢の部屋番号も聞いておきます。
まあ・・・オマケとして白熊ドライバーの部屋番号も聞いておきます。

「ええと~2名様が10ルーム。3名様が2ルーム。4名様が・・・ですね?」
「うん・・・そう!ついでに・・・私の部屋と乗務員の分もお願い!」
「かしこまりました・・・・〇階の〇〇〇~〇〇〇が2名様・・・・・」

このとき・・オストドの手には、「館内案内図」が用意されている。
そこの隅っこには・・大抵、部屋名称と名前を記入できるようになっている。そこに・・・2だの3だの数字を書き込む。
お客様のお部屋全室と乗務員の部屋も私の部屋も確保できれば、問題がない。
ただ・・・困るのがツアコンの部屋が同じホテルに取れないケースがある。
私の話ではないのだが、「マーシー」と呼んでいた同僚に聞いた話をご紹介しておこう。

「いやあ~オストド。お前のおかげで偉い目に遭ったんだからな・・・」
「どうした?」
「あのさ・・・お前、スキーツアーの添乗断っただろ・・・」
「当たり前じゃない。俺・・スキー得意じゃないしさ。それに・・銀座のホステスのお姉ちゃんとワントゥーワンでヨーロッパに行ったほうが楽しいじゃない!」
「だ・か・ら・・・俺が酷い目に遭ったの・・・」
「そう?いいから・・言ってごらん。ラクになるよ・・・・」

オストド・・・危険察知能力は人一倍優れているんです。アサイン表を見たとき・・・「こりゃ・・なんとかしないと・・・」と銀座のお姉ちゃんに前から頼まれていた「お仕事」を強引に入れてしまいました。だって・・・男と見ればすぐ色目を使ってくる会社の受付のお姉さまが相棒のツアコン。貞操の危機を感じましたし・・・・

「あのよ・・・あそこのホテル。お前も知っているよな?」
「ああ・・あそこ・・・確か儲け主義でさ・・・ロハのツアコンは・・・男女の区別なく一部屋にするじゃない・・・」
「そうなんだよ・・・それやられたの。」
「馬鹿だなぁ~前もって・・・言っておけば良かったじゃない・・で・・・3泊4日一緒の部屋に泊まる運命だったと・・・」
「そう!到着したらさ・・・そんなアサインになっていて・・・」
「で・・・押し倒したとか?」
「馬鹿野郎!冗談じゃない・・・すぐホテルと掛け合ったけど・・・」
「ふんふん・・・でもあそこ・・・金に汚いからな?それでどうした?」
「まさか・・・一緒の部屋に泊まるわけいかないじゃん・・・俺・・・・」
「一緒に泊まって・・・一緒の布団に寝れば良かっただろ・・・まあまあだよ・・・アレ!」
「馬鹿!そうでなくても・・・飲みに行こうとか誘われているんだぞ・・・」
「そう・・お前だけじゃないぜ・・・男なら誰でもいいみたい・・・それで・・・結果はどうなったんだ?・・俺・・すぐ出発なんだけど・・・」
「今度はどこだ?」
「パキスタン・・・・」
「げっ!変なとこ行くね・・お前・・・」
「俺もそう思うけど・・・・まあ・・・危険手当付くし・・・保険も1億だってさ・・・普段3千万しか付けてくれないのに・・・」
「まあ・・・お前も酷い目に遭って来い!」
「残念でした・・・ガイドも前回と一緒だしね・・・俺・・向こうに拳銃預けてあるもん!」
「物騒なもの持っているな・・・そんなにヤバイのか?」
「いや・・・万一用かな・・・まあ・・・密輸商人ともお友達だし・・・大丈夫だろ・・それより先を話せよ!」
「ああ・・・どこまで話したっけ?」
「一緒の部屋に泊まったところまで・・・」
「だ・か・ら・・・違うって言うの!」
「そうなの?」
「ああ・・俺さ・・・ホテルに掛け合ったんだけど・・・部屋が空いて無くてな・・・」
「うんうん・・で一緒の夜を過ごして・・・・やっちゃって・・・ってオチなんだろ?」
「お前ねえ・・・まあ・・いいや・・それでさ、俺寝るところなくて・・・結局、宴会場に布団敷いて貰ったんだよ・・・」
「まあな・・・ツアコンが客と別のホテルに泊まるわけいかないしな・・・まだ・・・何か隠してないか?」
それがさ・・・草木も眠る‥・丑三つ時・・・・」
「あのさ・・・俺・・・幽霊モノ弱いんだわ・・・まさか・・・アレの生霊が現れたんじゃないだろうな?」
「それより・・酷いよ・・・枕元に座り込まれて・・・あたしの事キライですか?ってやられてみろ・・・」
「うんうん・・・それで・・情に流されて・・やっちまって・・・ゴムに穴開けられたとか・・・」
「お前じゃない・・・アレだぞ・・アレ・・・」
「でもさ・・・部屋暗ければ・・・」
「馬鹿っ!あっちは正社員だろ・・・こっちはアルバイトみたいなものじゃん。」
「契約と言え・・契約・・・・それでどうした?」
「ああ・・このスケジュール見ろよ・・・あんまりじゃない?」

確か・・・彼のスケジュールは、女子大生のグループなどとヨーロッパ方面とか、フルムーンツアーばっかりだったのだが・・・すべてのスケジュールが書き換えられていて・・・・日帰りや老人会の旅行で埋め尽くされていた。

「ああ・・・こりゃ酷い。女の恨みhじゃ恐ろしいからねえ~」
「他人事みたいに言うな!」
「他人事だもの・・・」

そこへ・・・アサイン担当から内線電話が鳴り響く・・・どうやら・・女子大生グループのツアーは私が行くことになったようだ。

「悪いな!俺が・・・ヨーロッパツアー付いちまった・・・」
「てめぇ~土産持って来いよ・・・土産・土産・・・・」
「解ったって・・・飲み会のセッティングすればいいんだろ?」
「ああ・・・それからな・・・一番可愛いのには手を出すなよ!」
「了解!じゃあ・・ちょっくら・・8日間ほど行ってくる・・ん?パキスタンから帰国が夜9時過ぎじゃん・・・それで・・翌日のスタンバイが・・げっ!朝5時半・・・」
「じゃあな!土産忘れるなよ!」
「ああ・・・・」
このような酷い目(私だったら・・・ネコにカツオブシ?だったかもしれないけど・・・)に遭遇してもツアコンはお客様と同館つまり、一緒のホテル内に居なければならない。「万一の火災などの事故に早急に対処しなければならない」のだ。

そうそう・・・ホテルに念を入れるのも忘れてはいけない。

「了解!じゃあ・・・部屋割りは到着時にお渡しします。それより・・支配人さん空いている?」
「はい・・・どのようなご用件でしょ?」
「ちょっと・・・確認したいことがあってね」

実は・・前回泊まった時にお客様を宴会場へ誘導を始めたときのこと。支配人が血相を変えて飛び込んできた。

「オストドさん。お客様に茶碗蒸し食べないで!と伝えてください。」
「はあ?どうして・・・」
「実はですね・・・・」

オストドたちの到着1時間前に先乗りしていたJ社のお客様が茶碗蒸しを食べて・・・「酸っぱい」と言い出したのだ。
よく調べてみると・・・卵を保管してあった冷蔵庫のコンセントが抜けていたことが判明したと言うのだ。

「どうするのさ?お客様誘導しちゃう前だったら・・・片付けられたのに・・・」
「何とかなりませんか?」
「クレーム必死だね。俺・・・看板外して帰らないといけないかもね・・・」

看板を外す・・・つまり・・・旅行社の協定を外すということ。そうなれば・・団体ツアーで食べているホテルは死活問題。
1社が外せば・・狭い業界。次から次へと外してゆくことになる。

「あのぉ~お力をお貸しいただけませんか?」
「そうねえ~」

こういう場面を「カモがネギと鍋とコンロと調味料・・一切合財背負ってやってくる」と言うのだ。
結局、お客様にはお詫びとして、宴会時飲み放題。冷蔵庫無料解放。お土産付きで手を打つことにしたのだ。
お客様が席で待っているので、すぐ踵を返して戻ってゆく・・私。

「皆様・・本日は大変お疲れ様でございました・・・明朝のご朝食はこちらで7時から出発は8時でございます。それから・・・ひとつお詫びを申し上げねばなりません。目の前にある茶碗蒸し・・まあ・・すっかり冷えておりますし、衛生面の心配もございますので、片付けさせていただきたいと存じます。そのお詫びとして本日のご夕食時のお飲み物、冷蔵庫は全てホテル側よりサービスさせますので、ご了解のほど宜しくお願い申し上げます。」

こんな事件?のあったホテルにまた泊まる羽目になろうとは・・・・よっぽどオストドはついていない。

「もしもし・・お電話代わりました。オストドさんお久しぶりでございます。」
「ああ・・支配人?また・・お世話になります。ところで・・・今日は大丈夫だよね?」
「ええ・・・万全の準備をしておりますので・・・・ご到着は?」
「多分・・・6時廻るかな・・・」
「かしこまりました。」

急いで電話を切り・・・バスに大きな荷物を担いで駈け戻ってゆくオストド。
その荷物は「車中のゲーム大会の景品」と称して、半分脅かして土産物屋からせしめてきた・・・グッズ。
総額で・・・多分1万円はくだらない。土産物屋にしてみれば、「強盗」にでも遭遇した気分だろうが、知ったこっちゃない。お客様に沢山の思い出を持って帰ってもらうのが、ツアコンの使命なのだ。
最後の観光地を出発して・・バスは何も無いようなところをひた走りに走る。
ガイドのアシカ嬢に今夜の宿泊地宛クイズの結果発表や、台数当てクイズ。到着予定時間当てクイズをやってもらって・・・せしめてきたお土産をジャンジャン大放出する。その間に・・・どのお客様をどの部屋に押し込むか?
ウンウン唸りながら・・部屋割りを作成しなければならない。
海外のホテルだったら・・・こんな手間がいらないのだが・・・・


「ツアコンとガイドの違い・・・」 第5章 「ツアコンは気楽な稼業ときたもんだ?」②






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「ツアコンとガイドの違い・・・」 第5章 「ツアコンは気楽な稼業ときたもんだ?」② [旅行のイロハ]

またまた・・事件勃発!!

あれだけ・・・「今日は何も無いよね?大丈夫だよね?」と確認してあったのに・・・・
悔やんでもしょうがない。クヨクヨ悩んでいたら・・・ツアコン稼業は務まらない。
心なしか・・今夜の宿泊地が近づくにつれ・・・ドライバーの白熊さん。ガイドのアシカ嬢は、うれしそうに見える。
そりゃあ~翌日の出発まで彼らがすることと言ったら・・・バスの清掃と燃料チェックだけ。
あとは・・・夕食を食べ、好きなときに温泉に浸かり・・・好きな時間に布団に潜り込めばよい。
しかし・・・ツアコンの仕事はこれからが本番。今までの業務は「ほんのオマケ」みたいなもの。
一応・・・ツアコンの勤務時間は朝8時~夜8時までが原則なんだが、原則は破られるためにある。
「ある」と言うより・・・こんな言葉を信じるほうがオカシイのだろう。

「オストドさん・・・・今夜の約束忘れちゃ駄目よ・・・」アシカ嬢に念を押される。今夜・・・飲みに行く約束になっている。
「忘れてないけど・・・何かあったらごめんね!」 バスを降りながら答える私。勿論・・・小声の会話。

決まって・・ガイド嬢と「飲みに行こう」と言うことになると何かあるのが・・・ツアコンの辛いところだ。
バスの到着を確認するとぶっ飛んで出てくる支配人。そりゃあ~前回の「食中毒?未遂事件」を、J社のツアコンと一緒に口裏を合わせ(口止め料も貰っちゃったし・・・)ウヤムヤにしてしまった「恩」か「怨」かは知らないが、支配人の首はまだ飛んでいない。

「オストドさん・・・お疲れ様でした。」
「支配人・・・また、お世話になります。」

この・・・ミステリーツアー。毎日行き先が違う。まあ・・・平たく言えば・・・空いているところに押し込み、安く上げる算段をしているのだけれど・・・

「今日は・・・本当に大丈夫ですよね。こんな暑い日だったら・・・シャレにもなりませんよ・・・」
「ええ・・・大丈夫です。ちゃんと・・・毎日冷蔵庫の電源確認してますから・・・」
「他は?例えば・・・温泉がタダのお湯とか・・・」
「うっ!痛いところを・・・・」

オストドがツアコンをしていたころの「温泉」の分類は厳しいものだった。今は・・・自噴が少ないところに水を足して、温泉と言っているところもあるし、まあ・・・地下水にいくつかの決められた成分が含まれていればいいらしいけど・・
中には・・・ろ過循環のくせに・・・天然温泉とはこれ・・・サギ商法じゃないの?と言いたくなるほど。
中には・・・自噴の温泉では全部の浴槽に充分行き渡らないので、水を足しているところもあるくらい。

さて・・・ここで、ホテルにたどり着いたツアコンの仕事をまず・・ご紹介しておこう。
まずは・・・チェックイン業務が何より優先される。コンピューターが打ち出したものや手書きのもの等がある「宿泊クーポン」を2枚発行する。
一枚はお客様の分。決められた宿泊費・それらに伴う税金・サービス料・入湯税を一括で切る。
もう一枚は・・・乗務員さんの分の宿泊費やツアコンの宿泊費の分。
ホテル側が「ボケ~ッ!」としていれば、一枚で全て切ってしまう。
何故・・・2枚で切るのか?お客様の分は送客手数料として・・・大体10%~13%のリベートが会社に支払われる。
もう一枚のほうは、業務クーポン。つまり・・・お客様ではないので・・・リベートは支払われない仕組み。
ついでに・・・部屋割り表を一枚提出する。これが・・・即座に数枚コピーされ、私の手元にも一枚返ってくる。
これが・・・客室係とか各部門に散ってゆく。だから、旅先のホテルにご自宅から電話が入っても、すぐ繋がるのだ。

そのチェックイン業務を終えると・・・大体一塊になったお客様に、簡単なホテルの施設案内をしてもらう。
勿論・・・お世話にはなりたくないけど・・・非常口の確認も含まれる。
その後、お客様にお部屋のカギを配り終え、夕食の場所・時間を伝えることも忘れてはいけない。
その後、自分の部屋・・・大体・・洋室を割り当てられる。所謂・・・通称「ツアコン部屋」へ荷物を放り込むと、お客様の部屋へご挨拶廻り。
部屋についての確認はこのとき行うのだ。今回は時間が押しているので、パスするけど・・・VIPのお客様のお部屋にはお伺いしなければいけない。
間違えて欲しくはないのだが、ここで言うVIPとは・・・もちろんVIPも含まれるけど・・・最も注意を要するお客様のこと。
集合時間に遅れてくる人や何かあれば・・・「俺はオタクの会社の上を知っているんだ・・・」と脅しをかけてくる馬鹿・・
じゃなかった・・・お客様。まあ・・・こっちも腹を据えかねて・・・・「二度とツアーに乗れないようにブラックリストに上げること出来ますけど・・いいんですか?」とやることもある。
こう言うお客様のことを・・・「虎の威を借りる馬鹿」と私たちは呼んでいる。適当に持ち上げておいて・・・後でストン!と落としてやるのもしばしば・・・まあ・・・「ブラックリスト」の存在は闇の中にある。
もし・・・あなたが・・・色々なツアーに申し込んでも、「生憎満席でございまして・・・」とやられれば・・・その旅行社のブラックリストに載っている可能性があるので・・・あんまり「虎の威」を借りないほうが利口だと思う。
ツアコンの横の繋がりは大きい。ましてや・・・色々な旅行社のツアーに乗る・・・「プロのツアコン」にチェックされたら・・
あとは・・・個人で旅をするしかなくなる。
ましてや・・・政治家の名前とか、政党とか・・・ロータリークラブやライオンズクラブの名前を出さなければ、自分をアピールできない人間は、殆どブラック扱いになっているので・・・ご用心・・・・

次に・・ツアコンのする業務は、宴会場と呼ばれる夕食の場所の確認。特に和風宴会スタイルなら・・・お客様の人数に合わせて・・・席を決めておかねばいけない。ついでに・・・お料理のチェックも欠かせない。
何しろ・・・最近喰い飽きている・・宴会料理。オストドの分の席はそこにはない。
「後で・・・お好みでラーメンでも食べるからいいよ・・・」と申し出ている。ラーメンにおにぎり・・その他、出来立ての物のほうが、美味しい・・・・

無事・・・鬼門のお客様の夕食が通常どおり始まって・・一安心。お客様の食事中に・・・私もお好みに駆け込んで食事をいただきます。ものの・・・20分ほどで食べ終わり(注文して・・出てきてから・・・5分ほどですけどね。)、宴会場へ駈け戻ります。・・・早いお客様から・・遅いお客様を見送れば・・・・大体・・・8時半ごろ。一応・・・・勤務時間は終わりです。
後は・・・アシカ嬢と一杯飲む前に・・・「お風呂」に入らなければいけません。
スーツを脱ぎ捨て・・・浴衣に着替えると・・・なにやら・・・部屋の前ですすり泣く・・・声がします。
「ま・・・まさか?また?何かあったのか?」 大体・・ツアコンの「嫌な予感」は当たります。
ドアから顔を出すと・・そこには浴衣姿のAさんとBさんの二人組の若い女性・・・

「ど・・どうしました?」
「ちょっと部屋へ来てください。」

オストドの腕を引っ張っていこうとする二人。

「ちょ・ちょっと待ってください。ご用件は?」
「部屋の様子が変なので見て欲しいのですけど・・・」
「はぁ・・・でも・・・着替えるのでちょっとだけお待ちください。」

今・・・脱ぎ散らかしたスーツに再び着替えるオストド。まさか・・・ツアコンが浴衣姿でお客様の部屋に行くわけには参りません。スーツを身に纏い、ネームプレート・腕章を付けて出来上がり・・・これなら・・・公私の公・・つまり、他のお客様に見つかっても・・・言い訳が出来ますし・・・・

結局・・・事の真相は布団を敷きに入室した下請けの作業員がどうしても・・・観たいテレビがあって・・敷いたフトンに寝っころがり、TVを観て、タバコを吸っていったのが真相。

「無くなったものはないですか?特に・・貴重品ですとか・・・下着ですとか・・・」
温泉場で多いのが下着ドロ・・・酔っ払いのいたずらも多いけど・・・施錠はオートロック。内部犯行しかありません。
慌てて荷物を調べてもらうと・・・OKとの事。・・・段々・・・怒りが心頭に達してきたオストド。
アシカ嬢との飲み会は・・・パア!間違いありません。

「すみません。ちょっと電話お借りできますか?」

オストド・・・フロントに電話して帰宅した支配人を呼び出させます。とにかく・・・支配人に頭を下げさせるしかありません。慌てて駆けつけてくる支配人とマネージャー。オストドの説明を聞くと・・・顔色がみるみる青くなります。

「こんな部屋でお休みになるのは気持ち悪いですよね?」 お客様に確認します。
「ええ・・・気持ち悪いです。」
「支配人・・・お聞きの通りだけど・・・他の部屋は?」
「それが・・・生憎・・・・」
「貴賓室も空いてないの?」
「空いておりますが・・・」
「ホテル側の責任だよね。すぐ・・カギをお持ちしてください。嫌なら・・・看板外して帰りますけど・・・」
マネージャーが貴賓室のカギを持ってきて・・・すぐお二人様にはそこへお移りいただきます。
もちろん・・・オストドがチェックをしたのは当たり前ですけど・・・・
その後・・・事後策を話し合うために・・・支配人・フロント責任者・客室責任者を交え・・・ホテルのラウンジへ・・・
「本当なら・・・ここで楽しく飲んでいたのに・・・どうしてやろう・・・・」怒りはMAXです。
「何をお飲みますか?」
「俺・・ヘネシーしか飲まないもん!ヘネシー瓶ごと持ってきて!」
全員にも・・・ヘネシーを強要します。結局・・4人で3本半も空けてしまいましたけど、酔うに酔えない・・・この気持ち。

「それで・・どうお詫びするつもり?」
「どうすればいいんでしょうか?」 支配人はオストドに案をださせようとする。
「そうだな・・・不愉快な想いをさせたわけだから・・・旅行代金の倍返しと・・・お土産・・・お車代でいいんじゃないかな」
「それで・・済みますか?」
「まあ・・・誠意を伝えるしかないね・・・一人あたり・・・そうだな・・・計算すると・・・・」

電卓を叩き出すオストド。そこには・・・一人当たり15万円の数字。
それと・・・ホテルからのお土産・・・名産品の詰め合わせ・・・3万円分。

「これで・・大丈夫ですか?」
「まあ・・・なんとかするよ。でも・・・日報には書くからね・・・今度ばかりは目をつぶれないし・・・」
「そ・・そんなぁ~」

まあ・・ここからはダークの部分。オストドしっかり超過勤務代を稼がせてもらったのは言うまでもないこと・・・


「ツアコンとガイドの違い・・・」 第6章 「ツアコンは気楽な稼業ときたもんだ?」③へ・・続く。





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「ツアコンとガイドの違い・・・」 第6章 「ツアコンは気楽な稼業ときたもんだ?」③ [旅行のイロハ]

教科書どおりに終わらないのが・・・・旅なのだ。

そもそも・・・・「ツアコンなんて必要がない。」と思われる方もいらっしゃるだろう。
オストドも「そう!」と感じている一人なのだ。
でも・・・・ツアコンはお守り代わりと考えている人がいる。
まあ・・・トラブル=トラベルと言われるくらい・・・旅に色々な要素は付いて廻ってくる。
ガイドの領分は、ホテル出発からホテル出発までと言われる。例えば・・・翌日にはガイドがチェンジする場合もある。
また・・・バスガイドを山の中・・・熊の棲家に放り出すこともある。この場合は・・・大抵「オバハンガイド」と言われる。
「タダ・・・年齢を重ねただけの軽薄ガイド」だ。こんなガイドが乗るくらいなら・・・乗らないほうがマシ。大体・・・・初日の出発時でわかる。我慢の限界が来るのが、大体2日目の昼ぐらい。彼女らは自分が神様だと考えているらしいが、ここではっきりさせておかねばならない、神様はお客様。そして・・・そのお客様をコントロールしているのは、ツアコンなのだ。大体・・・「オバハンガイド」が来た場合、ドライバーさんは若いのが多い。つまり・・・ツアコンも若ければ・・・オバハンやりたい放題になってしまう。しかし・・・我々もプロのツアコン。わざと・・・山中でガイドにケンカを売る。そして・・・そのまま・・・山中へ「姥捨て状態」に置き去りにする。こんなオバハンガイドが熊に喰われるかそれとも熊を喰らうかは知ったことではない。大体・・・我々・・・「プロコン」にケンカを売って・・・未だ現役のガイドをしていられるお人はいない。
もちろん・・・そういう事件があると、「船車券」と呼ばれるバスのクーポンを渡すことはしない。後日、清算とする。
もちろん「日報」と呼ばれる理由書を付けて担当者に返すわけだから・・・・後で、散々値切られることになる。

さて・・・貴賓室にご宿泊いただいたお客様はいかがだっただろうか?
朝食はバイキングスタイル。さっさと食べて・・・お客様方の到着を待つことに・・・・
ああ・・・いらっしゃった・・・いらっしゃった・・・昨夜の騒ぎのお部屋のお客様。

「お早うございます。昨夜は誠に申し訳けございませんでした。お移りいただきましたお部屋はいかがだったでしょうか?ぐっすりお休みいただけましたでしょうか?それで・・・本日・・・・出発の15分前にバスへお越しいただけませんでしょうか?」
「ええ・・・」
「ホテルの支配人がお詫びを申し上げたいとのことでございまして・・・」

結局・・・ホテルの謝罪と慰謝料をお納めいただき・・・・チョンチョンチョン・・・・と幕を引くことに・・・・・・・
こんなところが落とし所。何も・・・すべて東京に持って帰って・・本社に上げる必要は無い。

社会の自由研究・・・ツアコンの一日体験!?

世間一般では夏休み。我が家にも子供が一人。どうでしょう・・・妻の言うことを聞いているのでしょうか?
そういえば・・・・ここ1ヶ月以上・・・起きている時間に会っていません。
さて・・・夏休みともなれば・・・小さなお子様のお客様もいらっしゃいます。

「ねえねえ・・・添乗員さん」 
「なんですか?〇〇さん」
「あのね・・・添乗員さんて・・・海の向こうのお国とかにも行くの?」
「そうですね・・・・そっちのほうが多いかな?国内は本当に・・・・偶に乗るだけだから・・・・」
「いいなあ~飛行機も一杯乗れるんでしょ?」

確かに・・・ヘタな客室乗務員やパイロットより空を飛んでいる時間は多いかもしれない。少ない年でも年1000時間は軽く飛んでいる。

「僕も・・・大きくなったら添乗員さんみたいになりたいなぁ~」
「へっ?」

そこへ・・・我が子がいなくなったことに気が付いた母親が飛んでくる。

「すいません!お仕事のお邪魔しちゃって・・・・」
「いえ・・・いいんですよ。あのね・・・僕。添乗員になるためには・・・・一生懸命勉強しなくちゃいけないんだよ」
「どんな?」
「まず・・・社会。どこの国はどこら辺にあるか知らないといけないし・・・算数も必要だしね・・・英語も・・・・国語も・・・全部必要だね・・・・国家試験だって受けなくちゃいけないんだから・・・」
はっきり言って・・・そんなに出来が良くてツアコンになんかなる・・・愚か者いや・・・おっちょこちょいはいないけど。

結局・・・・このお子さんは一日。私がお預かりをして・・・・社会の自由研究という名目でお勉強することに・・・・
学校の先生ってつくづく・・偉いと思う。こんなに手が掛かるのを・・一人で何十人と見ているわけで・・・・・
たぶん・・・傍から見れば、ツアコンは「気楽で・・・タダで旅行が出来ていい商売」だと思われても仕方が無いのだけれど・・・・・

「軍艦マーチ!!」

交渉=ツアコンの仕事の総決算。そう言っても過言ではないだろう。
特に・・・・交通機関の欠航ともなれば・・・その後の行程が全て滅茶苦茶になりかねない。
まあ・・・大手の旅行社なら現地のコーディネーターがいるところなんだけど・・・・地方空港に居るときにほどその危険性は高い。それも・・・国内ならまだなんとかなるのだけど・・・海外。しかもガイドが帰った後に発生すると・・・・
「はぁ~やりやがったな!」と臨戦態勢にモードを切り替えるのだ。
まあ・・・・相手がどう思うまいが知ったことではない。反日感情が悪化しても・・・ツアコンのせいではない。
相手が喚きだせば・・・日本語で怒鳴り返す。
引き下がったほうが負け・・・・つまり・・・勝てない喧嘩なら・・・空港の片隅で指を咥えて泣いていればよい。
いずれ・・・日本語の解るスタッフがやってきて・・・ナントカしてくれる。

カルガリー空港で・・・オストドは・・・静かに自分のスーツケースが飛行機に積み込まれてゆくのを見ていた。
(小型のジェット機にはコンテナ搭載ではない。丁度。自分の荷物が一番上に載っていた・・・)
それが・・・積み込まれ・・・・「さあ・・・もうすぐ・・・搭乗アナウンスだな!」とため息をひとつ吐いた。
待てども暮らせども・・・搭乗のアナウンスはない。ふと・・・機体を見ると・・・・一度、その腹に飲み込んだ荷物を、吐き出している機体・・・・「やられた・・・欠航だ!」
突然・・鳴り出す軍艦マーチ!例え・・貧弱な英語力だって・・・なんとかしなきゃならない。
この後・・・バンクーバー観光、翌日の昼には帰国のためにJALに乗る。
「今日の・・後の便は全便・・予約でフル!明日の昼なら席が取れる!」
「ふざけるな!天候じゃない。エンジントラブルだろ・・・すっとぼけてんじゃねえ~さっさと・・・代替の機体持って来い!」
「いや・・・・それは飲めない!」
「ふざけんじゃねえ~ぞぉ!こちっとら・・明日の昼には成田に向かってJALに乗っているんだぁ~お前ら・・JALの離陸止められるのか!馬鹿・・・・・」

悲しいかな・・・オストドの英語の師匠は・・・スラム生まれのスラム育ち・・・所謂スラグ用語なら・・・ポンポン出てくる。

まあ・・・この後の交渉は・・書かないけど・・・・
無事・・・バンクーバー観光もしたし・・・翌日のJALの機体にはお客様全員は乗っておりました。
ただ・・・私の座席が・・・・オーバーブッキングだったんで・・・なかった。
まあ・・・最後に調整シートを頂いて・・・帰ってきたことはきたんですけど・・・・
ニコニコしているだけでは・・・・ツアコンは勤まらないのよ・・・・K.Yさん。


「ツアコンとガイドの違い・・・」 第7章 「ツアコンは気楽な稼業ときたもんだ?」④ギャレーでのヒトコマへ続く・・・





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