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僕たちに明日はあるのか?VOL1 [ぼくたちのシリーズ完結編]

-まえがきに代えて-

「僕」です。ご無沙汰をしておりました。「未来の僕」は、

「じょ・・冗談じゃない!」と拒絶しやがりましたので、

ちょくら乗っ取る事にしましたが、「未来の僕」はすっかり

おっさんになっており、幾ら自分の未来とは言え、文句のひとつや

ふたつは言いたくなります。

悪たれ連の悪ガキ共は、すっかりおっさん化しており、見る影もありません。

青〇クンは、すっかり信州の片田舎で、偉そうに説教を垂れるくせに、

相変わらず、年に数回も上京してくる始末ですが、「未来の僕」をはじめ、

大岩クンこと今は黒岩君等「しっかりと尻に敷かれている組]は、迷惑顔。

携帯電話という便利なものを持っていても、着信があっても、殆ど無視だとか

まあ、渋々(いや・・・ノリノリの間違い)で、付き合うのは、佐々木クンをはじめ、

奥様や家族からも諦められている(見捨てられたと言うほうが、正しい?)か、

自由気ままな独身者Yクンだけみたいです。

まあ、そんなおっさんでも、お金だけはある様なので、遊んでくれる子はいるみたい。

そうそう・・・「未来の僕」の記憶をついでに読み解いてみると・・・・

「僕」自身も「噓だぁ~」と叫びたくなる事も

あったみたいです。

まあ、一言で言わせてもらうと、やっぱり、バカはバカのままみたいです。

封印しておけば良かったのに、「僕」を引っ張り出してきたのですから、

責任を取ってもらわねばなりませんよね?

そこで、ナビゲーターは、「僕」がしっかりおこなわせてもらって、「未来の僕」の

記憶を掘り返してみたいと思います。

あっ・・・最後にもうひとつ。

確か、九尾の狐。すっかり飼いならされているみたいです。

でも、あの頃は、スマートだったはずですが、今では一瞬。「狸」と見間違えました。

数えてみると・・・あれ?数が増えています。一頭だったのが、今では4頭の「狸」

どうなっているのか知りませんけど、これからときどき、「未来の僕」をジャックして

お話を完結させてもらわないといけません。

まあ、それまでは、時々かどうか知りませんが、「未来の僕」の夢の中で暴れてやろうか

そう考えておりますが・・・・

まずは・・・そうだ。僕。高校卒業できたのか?その辺から調べてみたいと思います。

あっ!そういえば、「未来の僕」は、僕の予想に反して、お酒を飲んでいません。

寝る時に変な薬を飲んで、無理やり睡眠をとっているみたいです。

それでは、皆様!完結編の本編でお会いしましょう。

-翼 1 -

「用意はいいか・・・・ぶ・ちよ!」

「それだけはやめろ!ジュニア!」

「そっちもやめてくれないか?」

「やめない。お前の名前じゃん。親父さんは残念だった。」

「ああ・・お前が来るのを楽しみにしてた。」

「だろうな~オン・返しそびれてしまった。」

「ところで、ハニーとリトルベイビーは元気か?」

ジュニアは話題を変えてきた。僕もジュニアもしめっぽい話は

似合わないらしい。

「ああ・・・おかげ様でな。」

「連れてくれば良かったろ?」

「婆さんが離さない!」

「婆さん?」

「覚えてるだろ!楊ママ!横浜で中華食わせたろ?」

「ああ・・あのマダム」

「やだやだ・・アメ公は相変わらず・・か」

僕は22歳になっていた。18歳でパパになった。

横浜のママは、横浜のパパが突然の病で亡くなり、ミーチャンと

同じお墓に遺骨を納めると、店を手放した。

いや、手放したというよりは、僕のために手放してくれたと言っても

過言ではない。僕の子供は日本からちょっとだけ離れたT島で、

ママの庇護を受け順調に育っている。

「あとで・・・決着つけるか・・・あの時の・・・」

「そう願いたいところだけどな・・・今夜の便で帰らなきゃいけなくて」

「オーマイゴッド!気は確かか?」

「急な仕事のオファーがあってな・・・」

「OK!腕がなまってないか見てやる。」

「あのな~ジュニア。オレ。ライセンスないんだってば・・・」

「ノープロブレム。ライセンスは俺が持っている」

「だ・か・ら・・・俺は、ノーライセンス・・・まあいいか・・・」

僕はジュニアのお父さんの愛機だったセスナの機長席つまり、左席に座り

あの頃の様に親指を立てて合図を送った。

ただ、あの頃。コーパイ席に座っていたのは、ジュニアの親父さんで、

僕に翼の素晴らしさを教えてくれた。

「・・・・セスナN3445・・・ランウエイ22・・」

「ランウェイ22。ラジャー!」

僕はゆっくりとスロットルを開ける。

「と・こ・ろ・で・・ランウェイ22ってどこだ?」

僕はジュニアに尋ねた。

「マップいるか?」

「お前がナビゲートしろ・・バカ!」

何とか滑走路にたどり着き、管制の許可を受ける。

勿論、僕ではない。何しろ久しぶりに操縦かんを握るので、

心臓はバクバク状態。いや、こうなったら、俎板の上の鯉と

言えばいいのだろうか。

「ほれ・・・さっさといけ・・・シン!」

「ラ・・ジャ・・グレイ!」

ジュニアの親父さんは、元戦闘機乗りで、僕に「シン」と名付けた。

ジュニアことグレイは、初フライトが曇りつまり、空が灰色だったからだ。

僕はスロットルを全開にして、ただ・・・中央線だけを見つめた。

周りの景色に気を取られてい居るほど暇ではない。いや、楽しむ余裕はない。

「OK!・・・ローテションだシン。」

「ラジャ・・・」

僕がゆっくりと操縦かんを引くと、数年ぶりに座った親父さんの愛機は、僕を

空へ連れて舞い上がっていった。

「シン!フライトレベル。ツーサンウザンで、レフトヘッディングゼロ・フォー・ゼロ」

「バンクは?」

「テンいや・・・フィフィティーン」

「ラジャ」

「アンド。クライム。フォーサウザン」

高度2000フィートで左旋回。バンク角15度。方位040に向かい。

高度を4000フィートまで上げろとジュニアことグレイが僕に告げた。

「なあ?ところでどこへ行くんだ?」

「洋上で訓練やって・・・フラップは?」

「ああ・・・フラップ1。」

「フラップ1」

「フラップアップ。」

「なあ!シン?」

「あん?」

「いつまでフルにしているんだ・・・」

「いけねえ~フィフティ?」

「そうだな・・・フィフティ」

「ラジャ」

「フォーサウザン。」

「ラジャ・・・フォーサウザンアンドフィフティパーセント」

スロットルを戻し、水平飛行へと入った。

僕とジュニアを乗せたセスナはカリフォルニアの空へ溶け込んで行った。

ー翼 2へ続くー













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僕たちに明日はあるのか?VOL2 [ぼくたちのシリーズ完結編]

-翼 2-

僕はアメリカの空を、ジュニアのサポートを受けて順調に高度を上げていた。

僕とジュニアを乗せたセスナは、オンボロ状態。

ジュニアのお父さんだった「ダディ」の愛機で、僕とジュニアは空の楽しさ

そして、厳しさを学んだ懐かしい機体だ。

「OK!シン。トレーニングエリアだ。」

「トレーニングエリア?」

「ああ・・・ここからは、お前は自由だ。シン。但し・・・」

「あん?」

「今、中間地点。10サウザンフィートに居る。」

「10サウザン?確かに高度計は合っている気がする。」

「貸し切りだ・・・この空。」

「いいのか・・な。」

「ああ~ここは、航路から外れているし、トレーニングエリアだからな。」

「そうか・・・言い忘れてたけど。」

「なんだ?」

「お前のパラシュート使うなよ!」

「何で?」

聞くまでもない話だ。僕はちょっとしたいたずらをパラシュートに仕掛けている。

わざわざ・・・アメリカくんだりまで、飛んできたのだから、これくらいは

多分、許容範囲だ。

「なるほどな・・・お前も使うなよ!」

「あん?」

「お前のは使い古しだし、コード切れかかっている」

「と・・・言うことは、ドローか・・・」

僕とジュニアは空を存分に駆け回った。ジュニアはフライトスクールの教官で、

適格に僕にアドバイスをくれている。

いつの間にか、空は赤みを帯び始めていた。

「さて・・そろそろ帰ったほうがいいよな?俺ナイトフライトはやったことがない。」

「ああ・・こいつじゃ無理だな。一泊だけしないか?」

「あん?」

「最新鋭のリアジェットの初飛行にご招待しようかと・・・」

「ごめん。無理・・だ。今夜の便で帰って・・・日本に到着したら・・」

「アライバル?」

「ああ・・・その日の夜には、またこっちへ向かって飛ぶけど・・・」

「はあ?アンビリーバボー。こっちに居て、客だけ飛ばせば済む」

「そうしたいけどな・・・仕事は仕事。」

「真面目になったもんだ!」

「一応・・・かな・・・適当には・・・・」

僕はツアーコンダクター。つまり、添乗員の職を得ていた。

ネズミーランドのオープニングキャストもやったけど、家族を養うのには

稼がねばならない。

そんな時にSさんから、「いい仕事あるぞ!」と紹介を受けたのが、

この仕事だ。

やり様によっては、お土産物屋等のリベートやバックマージンやら、

お客様からのチップだけで、僕の年代が稼げるであろう最高額に近い金額を

稼いでいる。しかも、税金はお給料の分だけだから、これ以上文句は言えない。

まあ、時々Sさんの頼みで、〇〇興産やら△x興業とウサン臭い人たちの

懇親会などの特別なお仕事は廻ってくるけど、チンピラ組織と違い、任侠の方々は

それなりにチップをはずんでくれるので、割がいい。

ついでに、とある銀座のお店のママを上客に掴んでいるので、結構な稼ぎを得ている。

まあ、最近は遠征先もとい添乗先でお客様がトラブルに巻き込まれた時などは、

Sさんに助けを求めている。求めているというより、「餅は餅屋」というらしい。

「なあ・・ぶ・ちょ~ぉ」

「やめろ!ジュニア。俺は・・・もう部長じゃねえぞ。」

「じゃあ。いいんちょ~ぉ」

「それもやめろ。」

「あいつらどうしてる?」

「あいつら?」

「ああ・・・悪たれ連とちょっとこわい・・・」

「ああ!あいつらね。元気じゃねえか・・・・きっと。」

「あん?会ってねえのか?」

「会ってないねえ~ここ数か月。」

僕が添乗員を始めて、泊りの仕事が入りだした時を思い出した。

「お~い!ご指名入ったぞ!」

僕はガランとしたオフィスの片隅で、添乗報告書と格闘していた時だった。

「まさか・・」と思い無視をしていたのだけど、僕に話しかけていたのだ。

何しろ、周りに居るスタッフは、すべて内勤社員で添乗には、よっぽどの事が

ない限り、行かない人たちばかりだ。

僕も、女性の先輩が「お腹が痛い」と仮病を使ったので、予定変更で九州一周ツアー

4泊5日のツアーを出発の前日。それも夕方に申し渡されて飛んできたばかりだった。

「はい?」

「今度はご指名で北海道だってよ・・貸し切り!」

「貸し切り・・ですか?」

「ああ・・・行ってこい。」

僕は打ち合わせに出かけた。普通、ツアーの場合、添乗員の手元には、遅くても

前日には参加者名簿は来るのだけど、当日。幹事さんから渡されることになっていた。

「誰だろ?」僕はちょっとだけ腑におちなかった。何しろ、まだ泊りの仕事が始まった

ばかりだったし。まあ、アンケートはそれなりの点数はもらっているけど、初めての

”ご指名”なわけだから、誰が指名をくれていたのか?判らなかったのだ。

「まあ・・いいや。」

僕は軽い気持ちで添乗に必要なクーポンや送客書、添乗金を受け取ると、ねぐらに飛んで

帰ったのだ。

ー サプライズ 1」-に続く。


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僕たちに明日はあるのか?VOL3 [ぼくたちのシリーズ完結編]

-サプライズ 1-

ツアーコンダクターの一日は、滅茶苦茶に始まる。

例えば、朝に帰ってきて、お仕事が完了し、そして夜

また、新しいお客様を連れて飛ぶと二日分の日当を得る。

僅か、数時間で二日分稼げるときもあれば、27時間労働もある。

例えば、成田空港を12時に飛ぶとして、お客様の集合時間は、

2時間前の10時なのだが、気の早いお客様は、9時に来ることも

しばしば起こる。

会社からは、国際線出発なら、2時間前。国内線出発なら、1時間前

これは、お客様集合時間の前。だから、僕は8時には空港でスタンバイする。

そうなると、逆算すると、8時にたどり着くためには、始発バスに乗る。

国際線に乗り込んで、14時間。乗り換えで4時間。そこから、約2時間の

フライトを経て、僕は地球の裏側に居ることもある。

でも。それだけでは終わらない。空港でおよそ1時間ないし2時間かかり、

そこから、バスで2時間ほど。ヘトヘトになり、ナイアガラの滝近くの

ホテルに居ることもある。それでも、まだ、その日は終わってないので、

夕食にご案内して、ベッドを出てから30数時間ぶりにベッドに倒れこむ。

一人かどうかは別にしても睡魔は襲う。夢の中で電話が鳴る。

トロントの毛皮屋の社長に違いない。

「明日!宜しく・・ね!」

ふざけるな!と怒鳴りたくなるのだけど、R(リベート)の割がいいので、

愛想よくしておく。何しろ、売り上げの15%を税金のかからないお金が、

懐に飛び込んでくるので、美味しい仕事なのだ。

「リムジンでしょ?」

会社が用意しているバスは使えない。毛皮屋に高級リムジンを用意させ、

CNタワーの夜景ツアー無料ご招待と称して、毛皮屋へ連れていき、帰りに

ガイド嬢と一緒お客様を連れて展望台へ登ればよい。

勿論、ガイド嬢にもお小遣いを渡し、口止めは必要だけど・・・

「はいはい・・判りました。行けばいいんですよね。」

「うん。」

「会社からは、契約解消で寄らなくてよいと言われていますけど・・・」

「15いや・・20でいいでしょ?」

「お土産くれるかな・・・連れていくにしても・・・」

「何個?」

「お客様全員分。そうだ・・・あの、ミンク製の犬・・・」

「あれでよければ・・・用意するよ!」

「じゃあ・・明日。8時に来てください!」

これで商談は成立。売り上げの20%。お客様には、一個5000円のぬいぐるみを

プレゼント。おまけに高級リムジンでツアーに含まれていない夜景までオマケ。

悪い話ではないはずだ。折角、トロントくんだりまでわざわざ来ているのだから、

寝る時間を削っても、CNNタワーから眺める夜景は綺麗だし、ロマンチックな

気分に浸ってもらえばいい。お客様全員分の犬のぬいぐるみは、僕にもちょと

役得になる。4人家族でも二人でも1個上げるだけだから、僕の手元には、多い時で

10個ほど残る。これは、見込み客の「お姫様」と呼ばれるお姉さま方へのお土産。

正しく、一粒で二度おいしいことになる。

僕に指名をくれるお姉さま方のうち、上客と呼んでいる「お姫様」には、ミンクの

ショールを貰ってゆくこともあるけど、お姉さま方が毛皮のコートを買うときは、

毛皮屋の親父さんが、日本で営んでいるお店に紹介するのだから、このくらいの

役得は既に織り込まれているのだろう。まあ、お金の出所は僕の知ったことではない

多分、一流企業のスケベ親父に出させているのだろうけど、僕にとってお金に色は

ついていない。

「明日もがんばりましょ・・・」そう呟くと、僕は眠りにつくことになる。

明日は、ナイアガラの滝名物の「霧の乙女号」に乗り、花時計を眺めたりしながら、

昼食は、ナイアガラの滝を眼下に眺めながらの回転レストラン。

あんまり美味しくないので、僕はガイド嬢ときっと階下のビュッフェを食べに行く。

僕の分で二人分のご飯に代えてもらえるので、変更を頼んである。

ついでに、明日の朝ご飯のチケットもガイド嬢に上げてしまったので、僕は朝霧の中

早朝散歩とシャレ込み。地元の人に紛れ込んで、2ドル99セントの朝食を食べるのだ。

パンケーキにメープルシロップをたっぷりとかけ、ターンオーバーで焼き上げた目玉焼き

そして、カリカリに焼いたスモークの効いたベーコンとコーヒー。これで充分だ。

そんなことを考えていると、ベッドサイドの電話がまた鳴る。

「また・・・か・・・」と一瞬僕の頭を横切る。

僕も30数時間ぶりなら、お客様もほとんど同じなわけで、バスにお湯を張っているうちに

階下に溢れさせてしまうことも起こりえる。

カナディアンイングリッシュに寝不足の僕の頭はきつい。何しろ、僕の英語は碌な習い方を

していなかった。誰にどう習ったのかはさておき、僕の英語は殆どブロークンイングリッシュ

こういう時には役に立ったためしはない。何しろベッドで寝ながら覚えた英語は、あまりに

ヒドイ英語に決まっているからだ。

フロントに呼び出され、降りてゆくと、「やはり」である。

「やはり」をやらかしたお客さんが、小さくなっている。

「海外旅行保険はご加入いただいておりますよね?」

「はい・・・」

「ちょっとお見せいただけますか?」

大抵、個人賠償責任がついているので、保険会社とホテル側の話し合いで済む。

「大丈夫ですね・・・保険使えますから・・・」

僕は恐縮するお客さんを制すると、フロントへ交渉に向かう。

まあ、階下の宿泊者には、気の毒だけど、僕はツアーのお客さんを守る義務がある。

「よう!くそったれ・・・」僕は精一杯の笑顔で話しかける。勿論の日本語だから、

まず、彼らにはわからない。まあ、判ったとしても気にしないのが、僕のスタイル。

何しろ、ツアーコンダクターの営業時間は、朝8時から夜8時までだから、時間外

それも、30数時間ぶりのベッドから、引きずりだされた恨みもある。

毎度のこととばかりに、保険会社へ連絡させ、諸手続きを終える。

「これで大丈夫ですので、お休みください!」とお客様を部屋へ送る。

大体、こういうお客様からは、出発時に「心づけ」なるものをいただいている。

お部屋に送り届けると、僕は貸し借り表を作成する。こういうお客様こそが、

リピーターとして、指名をいただけることが多いのだ。

「明日・・買ってもらおう!毛皮・・・」とつぶやいて、僕はまたベッドに潜り込む。

「まあ・・・平和だよな!今回は・・・」とつぶやくこともある。

僕にとっての「平和」とは、「アプライズ」があるかどうかで決まる。

Sさんの紹介のヤーサンの旅行の方が、「サプライズ」よりはましだ。

僕の添乗員生活は、とある会社に入った時からだった。

その会社は、あちたこちらの旅行会社へ添乗員を派遣する会社だった。

だから、今日はA社明日はT社そして一週間後には、K社の添乗員として

あちらこちらを渡り歩くのが仕事だった。

忘れられないのが、「バスが事故ったら、お客様を全力で救出しろ」だの

マスコミが来る前にお客様から、旅行会社名が特定できる全てのモノを

回収しろだの。燃え盛るバスの中に飛び込めだの。

いざ、事故があれば僕は、きっとこの世には存在しないことになる。

まあ、仮に助かっても、お客様に犠牲者が出れば、現場責任者として

それなりのペナルティー。何でも、業務上ナントカというらしいが、

塀の中に押し込まれる可能性があるという研修を、「嫌!」と叫びたくなる

くらい、研修三昧の日々を過ごし、期待と戸惑いとちょっとした投げやり気分で

初日を迎えた添乗初日の朝のことだった。

この日は、「日帰りツアー」で、小田原の梅園出かけるツアーだった。

お客様は、フル。40名様。先輩が1号車をそして、僕は2号車の担当。

ついでに言えば、別の場所からの出発もあるので、総勢13台のツアーだ。

「あと・・一組。12名様で終わりなんだけど・・・」

先輩の1号車は、既に定刻15分前には、出発してしまった。

僕は焦りと「ノーショー」つまり、「現れないお客様」の

準備を始めねばならない。

そんな時だった。

「よぉ!待たせたな・・・」と久しぶりに佐々木クンが僕の前に現れた。

「て・・・てめぇ~」と言いかけたとき、僕にとって不運な一日が、

始まろうとしていた。

何故なら、僕が出かける時には、揃って見送っていたはずの、リリーズ。

そして、悪たれ連のメンバー。

特に青〇クンは、このためにわざわざ仏教大学から抜け出し、

わざわざ、新幹線でやってきたのだ。

リリーズ2名。青〇・Y・白〇・佐々木。そして、変態小児科に同じく変態

産婦人科を目指している。悪たれ連ドクター見習いの2名。

「あのさ・・佐々木!」

「あん?」

「12名だろ・・・残りは?4名。」

「そろそろ来るだろ?ションベンに行っている。」

「あのね。お化粧直しでしょ・・・」美希はまだ、先生気取りらしい。

美希は、僕のせいで、学校から、追い出されたのに、まだ、先生なのだ。

「ま・・さ・・か・・・」と僕が言いかけたとき、

「お待たせぇ~」とカオリさんを先頭に四名の巫女’s。正確には元巫女’sが

飛び込んできた。

「やはり・・・」

僕は呪われていた。いや、元をただせば、僕から「情報」を聞き出した。

相変わらずの「ナンカ妖怪」いや、妖艶なリリーズの二人の、笑い声が

そこには、響き渡っていた。

「あはは・・・なるほど・・ね。」

僕とジュニアは、僕のフライトに合わせて、空港のバーでビールを

ラッパ飲み競争を終え、バーボンの入ったグラスを傾けていた。

「酷い話だろ?俺・・・初っ端から怒られまくってさ・・・」

「まあな。でも、あいつららしい。」

「ついでに言わせてもらうと、お前も参戦していたよな・・・」

「ああ!偶々・・でいいんだけ?日本語?」

「まあ・・合っている様な、無い様な・・・」

「こっちに来る前にお前に会いたっかたし」

「まあ、負け組は、ご挨拶にくるのが礼儀だしな・・」

「くそぉ~てめぇのラッキーパンチ食らわなきゃ・・・」

「反対だって言いたかったのか?船から落としても良かったんだが?」

「どういう意味だ。」

「お前を海に投げだして、サメのエサにすれば良かったかと・・・」

「でも、お前はしなかったな。」

「お前もな・・・もう一杯飲めるかな?」

「ああ・・・そうだ。チェックインしておいたぞ!ホレ!ボーディング。」

「サンキュー。ジュニア。」

僕は受け取ったボーディングを眺めた。いつもの色ではない。

僕が乗る予定のJ〇Lは、クラス毎に色分けされた帯で乗るクラスが判る。

「お・・・おい。ジュニア・・・これ・・・・」

「ああ!エコノミー満席だったんで、ガールハントついでに、切り替えといた」

「あの・・な。俺のチケット。エージェントディスカウントの・・・」

「知っている。まあ、俺様にかかれば、ちょろいもんだ。」

僕は、格安だったはずのから、プラチナいやそれ以上に化けた。

ファーストクラスのボーディングパスを拝むと、上着のポケットに、

一緒に受け取ったパスポートに挟み込みしまった。

「それより、並ばなくていいんだから、もう一杯遣ろう!」

「ああ・・・」

僕はこの時、この日がジュニアと飲み明かす最後になるとは、

知らなかった。

機上の人となった僕は、彼が不時着で、足を損傷して入院。

そして、アフィアの女としらず、ガールハントして、そのマフィアに

撃ち殺されたことを知ったのは、彼の死後。一か月が過ぎたころに、

会社のメールボックスに紛れていた一通のエアーメールと、同じ頃に

届いた最後に飲んだバーボンだった。

その日の夜。久しぶりに泥酔した僕の夢の中にジュニアが現れた。

「おい!ぶちょぉ~」

「部長じゃねえて・・言っているだろ。このデコスケ。」

「美味い日本酒飲みたいな・・・あれ!かんぱいだっけ?」

「寒梅だろ。」

「そうだった・・・日本語。むずかしいね。」

僕は、次の日。ジュニアい会うべく、休暇をもらい。彼や彼の父親が

眠っているミルウォーキーへ行くべく機上の人となった。

勿論、ジュニアが飲みたがっていた寒梅を旅の道連れとして・・・・

-サプライズ2-に続く。





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僕たちに明日はあるのか?VOL4 [ぼくたちのシリーズ完結編]

- サプライズ 2-

僕は夢に魘されても、惰眠を貪っていた。枕元の電話が鳴る。

モーニングコールだ。

「う~ん。」多分、僕は5時間も眠っていない。いないけど、朝の散歩に出かける。

ナイアガラの朝は日中とは違い、僕を幻想の世界に誘う。

ガイド嬢に朝食券を上げているので、行きつけになりつつある2ドル99セントの

朝食を摂りながら、抱えているファイルを開く。

このファイルには、スケジュールは勿論、お客様情報も載っている。

「ったく・・・てめえらでツアコンだせっての・・・」

僕はつぶやいた。本当は今回のツアーは、ご褒美のはず。某国と某国の国境を

訪れるために、警察署へ行き、署長に賄いを渡し、

用心棒に一人。警察官を借りる。

賄いも。警察官への心づけは、700円くらいだが、武装警察官の同乗と、

この地に強い部族のガイドをさらに一名乗せている。ドライバー氏は、

元軍隊勤務の軍曹だったし、僕を含めガイド達も全員“武装”している。

くそ暑いけど、ジャケットの内側にホルスターをぶら下げ、

実弾が装填されている銃と、ポケットには、数十発分の弾丸が入っている。

その前日、僕はホテルへ到着すると、すぐ、ガイドに連れられ、

ブラッグマーケットで、僕はひたすら射撃訓練をさせられたのだ。

「いいか!撃ち合いになったら、撃て!」

僕はこの時、「くそぉ~騙された。危険手当って・・・このことか」と思った。

だから、担当のF氏は、僕に危険日当を2000円と旅行傷害保険の

死亡保険金が、3000万から1億円への増額、そして、

このカナダツアーが、ご褒美についたわけだ。

峠へ向かう途中、ゲリラかと思いたくなる。密輸商人から、

「心配するな!帰りにウチに寄れ・・・」と言われたのは、

不幸中の幸いだったのだろう。”彼の手配”で、撃ち合いにも

ましてや、皆殺しに合わずに、僕たちは隣国へ無断入国し、

そして、国境を跨いで写真撮影までしてきた。

そのご褒美だったのに、とんでもない。VIPがこのツアーには

参加されていた。

「いいかい!くれぐれも粗相は・・・」

粗相を心配するのなら、自分が行け!と怒鳴りたい気分だが、

チケットは既に僕の名前で発券されていた。

「大体さぁ~テレビ局のプロデュサーが何なんだ?」

僕は、ウエイトレスが注いでいったお代わりのコーヒーを飲んだ。

今日の予定は、朝一で、霧の乙女号に乗るのだけど、僕は乗らない。

あんなもの、1回乗って、ずぶ濡れになれば充分だ。

その後、ナイアガラ市内の観光を済ませ、一時間で一周するレストランで

お仕着せの昼食タイムとなる。僕は、階下のビュッフェレストランで、

ガイド嬢と「夜の打ち合わせ」をしながら、食事をすることになる。

その後、僕は多分、昼寝をしながら、トロント市内へ向かい、市内観光を

終え、ホテルにチェックインをし、夕刻、市内のレストランでロブスターの

ディナーを摂り、徒歩でホテルへ一旦、戻る。そして、希望者のみ高級?

リムジンの迎えを受け、日本人経営の毛皮屋でひと稼ぎさせてもらい、

お客様と共にCNタワーからの夜景にご案内することになっている。

明日は、また飛行機に乗り込みエドモントンと言う都市へ飛ぶ。

「さてと・・・ヤバッ!」腕時計は帰る時間を過ぎている。

僕は、ファイルを抱えホテルに向けてダッシュする羽目になる。

夜中に荷物は、ホテルスタッフの手により、回収されているので、

荷物をチェックしてバスに詰め込むために駆け出した。

「ったく・・・・あいつらまで来るとは・・・・」

はっきり言えば、このツアーは、ご褒美ではない。

何しろ、新婚さんの中に、佐々木クンご夫婦と白〇クン夫婦が居る。

僕と悪たれ連のうち、この二人を除く面々は、一日に二度も結婚式に

参列させられており、僕は知らなかったけど、出発地の成田空港で

僕は事実を知らされたのだ。その事実を知るまでは、

「同性同名っているんだな」とパッセンジャーリストを眺めていたのだ。

そこへ、某テレビ局のお偉いさんというプロデュサーもいる。

「踏んだり蹴ったりじゃぁ~」と叫ぶ。僕の姿がそこにあったのだ。

「どうしました?」ガイド嬢が尋ねてくる。

「別に・・・あっ!おはよう!」

「おはようございます。朝ごはん美味しかったです。」

「よかった!」

ガイド嬢も今晩は、トロントに一泊することになっているので、

小さなバックを積み込んだ。

「お客様の荷物は・・・」

「全部揃っている・・・・うん。大丈夫。」

そこへ新婚ホヤホヤの佐々木クンと白〇クンがやってきた。

勿論、白〇クンの奥さんは、昔。「神主のお兄ちゃん!」と

駆けてきた由香ちゃん2号なのだ。

「ったく・・・お前ら!いい加減にしてくんねんかな・・」

「いいじゃん!指名してやっているんだから、ありがたく・・」

「指名料もら・・あっ!いいこと考えた!」

建前は、いくら悪たれ連ノメンバーでもお客様。

億悪様と言えば、僕にカモにされても仕方がない。はずだ。

「なあ・・お前ら、今晩毛皮屋行くけど・・・一枚くらい」

「高いんだろ?」

「日本で買われる半分くらいのお値段でいかがでしょう!お・客・様!」

「でもな・・・」

「うちの子が飢えるんですけどねえ~」

「判った・・・買えばいいんだろ?」

「そういうこっちゃ・・・サクラ頼む!よ・・・この通り。」

僕は、二人を拝み倒した。何しろ、添乗員の給料はウソぉ~と叫びたく

なるくらい。安い。

まあ、年間300日くらいは、お金を払わず、飲み食いできる。

ついでに、つまみ喰いも勿論ある。まあ、身体を張っているわけだ。

添乗員を始めた頃は、日給で5千円。そして今は8千円。

まあ、「R」と言うリベートとお客様からいただくチップで命を繋ぐ。

「ところでさぁ~委員長!」

「だ・か・ら・・・何年言わせればいいんだ!バカ」

「悪い。お前メシ喰ったのか?」

「ああ・・・可愛いウエートレスが居る店でな・・・」

「汚ねえ~」と異口同音で二人が叫ぶ。

「おい!後ろで嫁さん睨んでいるぞ?」

「や・・・やば・・・」

「何の悪だくみしているのかな?神主の・・・」

「ゆ・・じゃなかった。お客様。今は添乗員でございます。」

「かしこまらなくてもいいじゃん。お兄ちゃん。」

「まあねえ~そういえば、毛皮のコート買ってくれるって!良かったね。」

「うん。」

「奥様方良かったですねえ~いいハネムーンになりますよ・・・・きっと」

「ちょっと・・・待っててくれる?こいつにカタ付けないと・・・」

奥さん方を置いて、二人に拉致される僕。

「コートはねえだろ・・・コートは・・・」

「大丈夫!安くさせるし。日本に帰ってからお支払いだから・・・」

「しかしよぉ~」とため息を付く二人。

「それとも・・・お前ら!成田離婚させてやろうか?どっちかがなれば・・・」

「なれば?」

「うん。丁度10・・・・いや、20組目っ!」

「寝言は・・・」

「寝言じゃないんだな・・・添乗員怒らせると怖いよ・・・」

「うっ・・・・」

「お前ら言葉通じないしな・・・」

「ぐっ・・・」

「テーブルマナーとか大丈夫か?」

「ほ・・・他の新婚・・・」

「ああ・・・心づけくれたお客様にはね。教えておいたけど・・・」

「えっ・・・いつ?」

「お前らが、機内で爆睡中だった。太平洋上空で!」

「起こせ!」

「何で?心づけ出さない客には、教える義理は・・・」

「出す!出せばいいんだろ。いくらだ?」

「そうねえ~ご両親が送りに来たカップルは、5万入ってたっけ・・」

「じゃあ・・・5万でいいだろ?」

「ええとぉ~毛皮のコートにストールあっ!ミンクで宜しくな!」

「んぐっ・・・・」

「あのな!お前ら同じ日に結婚式やりやがって・・・俺ら大赤字だ」

「わ・・」

「いやならいいんだけど・・ねえ。何しろ、給料少ないんで・・・」

「判った!ホレ!」

「なんだ用意してあったんじゃん・・さっさと出せっ!」

僕は二人から半ば強制的に心づけを奪った。

「ところで・・・白〇。お前。アレ予備あるか?」

「いや・・俺もお前に聞こうと思ったんだよ佐々木」

「あん?どうした・・・」

「委員長!どっか薬局ねえか・・・」

「ドラッグストアー。で?アレって・・・・アレか?」

「ああ・・お前。昨夜どこに居た!」

「部屋で寝てたな・・・大人しく。まあ、夜中に水漏れやったのもあったけど」

「お前の部屋行ったんだよ!貰おうと・・・」

「何時?」

「俺も行った。10時くらいだったか・・・」

「俺は9時半。お前は居なかった!」

「寝てた。」

「うそこけ・・いや。あのかわいこちゃんとか?」

「昨夜は一人。身体が持つわけねえだろ。」

「何で・・・」

「いいか?考えてもみろ!パキスタンから帰ってきて・・・」

「うん。」

「それで、お前らの結婚式をはしごする前に打合せと精算して・・」

「ああ!それで今日ここに居るんだぞ!ところで、昨晩はヤラなかったのか?」

「ま・・その・・・なんだ。結婚したわけだし・・・」

「そ・・そうだよ。別に要らなかったし・・・」

「じゃあ・・・要らないね。コレ・・・」

僕はドラエモンのカバン顔負けと自負する添乗用のパイロットケースから、

いかにも・・包んでますといった包装紙に包まれたアレを取り出した。

「あるのか・・・」

「まあねえ~。コレで成田離婚もあったくらいだし・・・」

「うそぉ~」

「いや、ホント・・お前ら、嫁さんに文句言ってねだろうな・・・」

「いや・・・つい・・・」

「うちも・・・」

「バカか!ったく・・・ホレ!これ持ってけ!1ダース入り」

「悪い・・・」

「大人しく毛皮買ってやらねえとしらないからな・・・」

「ああ・・判った!成田離婚じゃ・・・なあ!」

「ああ・・・仕方がない・・・か。」

「いいか。釣っちまった魚にもエサくらいやっておかねえと・・・」

「おかないと?」

「ジ・エンドだろ・・・きっと・・・今晩少し飲むか?」

「いいねえ~嫁同伴でいいか・・・」

「ああ!」

「ところで、何でこんなモン持っているわけ?」

「俺様が優秀だからかな・・・」

僕のパイロットケース。つまり、飛行機のパイロットが持っている

あのカバン。勿論、本物で某航空会社のお偉いさんの弱みと引き換えに

ありがたく頂戴したもの。その中に添乗7つ道具と「今度産むさん」を

リストと睨めっこして、数ダース入れ、ついでに、女性用のアノ日用の

用品まで入っている。ついでに言えば、睡眠薬とごまかすビタミン剤と

細菌性下痢止めから風邪薬まで一通り入っている。

「でも、何でこんなもん・・・」

「コレが成田離婚の主たる要因もあったので・・・」

「なるほど。」

「お前らくらいだ。恋愛組は・・・後はお見合い組だぞ」

「本当か?」

「ああ・・・ほぼ・・だな。」

話しながらホテルへ戻ると丁度、出発の一時間前で、

他のお客様がロビーへ降り始めていた。

「お前らチェックアウトしたか?」

「ああ・・・いや・・・まだ。」

「さっさとしろ!」

僕は二人を置き去りにすると、フロントデスクに駆けてゆく。

例のVIPだ。

「おはようございます。夕べは良くお休みになれましたか?」

こうして僕の忙しい日々が始まった。








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「僕たちに明日はあるのか」 VOL5 [ぼくたちのシリーズ完結編]

-サプライズ 4-

この日はいつも厳しい。何しろ、時差の波を乗り越え、ついでに

太平洋を飛び越え、おまけに目が醒めてから、延々と続く大地を眺め

まあ、僕はこの間に、ギャレーで休憩中のCAのクルーミールを分けてもらったり、

「リンゴ食べる?」

「うさぎさんにしてくれるなら・・・」とか

まあ、僕よりお姉さんたちには違いないので、“特技”を使う。

偶に、美味しい思いもあるけど、「空砲」も多くなる。

まあ、「下手な鉄砲数打てば当たる」というけど、弾倉が空になる頃には、

数発の”命中率”になっているので、まあ、たのメンツよりは、マシなのかもしれない。

ギャレーで、お姉さま方にタバコをむしり取られ、まあ、飛行機が動き出す前に

「免税品」のタバコを数カートン持ってきて貰っている。

「添乗員さんは今晩はどこ泊まり?」

「酷いんだよね。この仕事。シカゴから、トロント。そして、ナイアガラまでバス」

「ご愁傷様!でも、トロントには・・待っているんでしょ?か・の・じょ!」

「居るわけ・・ない・・でしょ!」

僕は少々焦り気味になる。「強いて言えば、特定は居ないだけ」が正解なのだけど、

「さてと・・・この辺で退散しないと・・・いけないかな・・・」

この間に”早業”で、数人の連絡先は入手している。いや、手渡されている。

「じゃあ!ご馳走様!少し寝ないと・・・」

そんな「事」をしているから、寝不足になる。寝不足になるから、バスの中で寝る。

こんな生活は、「身体に良いわけはない。」

昨日は、朝起きて、一番のリムジンバスに乗り込んだのが、朝の6時だった。

8時にカウンターの一角を占拠して、受付を開始して、飛行機の出発は、12時。

十数時間のフライトを経て、シカゴ。そして、その4時間後に出発で、

トロントへ飛び、この日2回目の入国審査を経て、バスでホテルに入ったのが、

もう夜。ホテルのレストランで夕食を食べて、諸々の雑務をこなした。

今日は、朝から、ナイアガラ観光にトロント市内観光。

ナイアガラでは、1時間で1周する展望レストランで、

お客様には、景色と昼食を楽しんでいただいている中、僕は階下にある

ビュッフェレストランで、ガイド嬢を口説いているのか?

それとも、純粋に食事をしているだけなのかは、毎度の事になっていて、

トロント市内のレストランでは、巨大なロブスターと格闘して、

夕方に高級リムジン数台に分乗して、佐々木クンと白〇クンには、

一枚数十万円のミンクのコートを売りつけ、CNNタワーで夜景を楽しみ、

そして、今。僕はホテル最上階のバーで、ご機嫌になっている奥様を

連れ、すっかり毒気が抜かれた佐々木クンと白〇クンの五人じゃなくて、

ついでに、ガイド嬢も同席しているので、6人で飲んでいた。

「まあまあ・・・”乾杯”だな・・・お前らけれで・・・くっくっく・・・」

「あ?て・・てめえ~」

「奢るからさ!好きなの飲めっ!」

「いいのか?」

「ああ・・・その代わり、飲みすぎに“気をつけろよ”新婚さん!」

この日は売上が良かった。佐々木クンと白〇クンは、「破産」と喚いていたけど、

そんな事はどうでもいい話で、僕の懐は温かかった。

ついでに、お小遣いも別に貰ったので、奢るだけだけど・・・

「しかし・・・ジュニアは死ぬまで馬鹿だったな・・・」

「まあな・・・まさか、墓の前でお前らに遇うとは思わなかったけどな・・・」

「そうだな・・・墓の前でみんなで飲んだっけ・・・」

僕たちが飲んでいるのは、ジュニアが愛した「バーボン」だった。

その後、他愛もない話をして、”早々”に引き上げた。

何故なら・・・彼らは、新婚さんだし、僕にもこの後の「用事」があった。

翌日の朝。すっかり・・目の下にクマが出来ている。僕たち悪たれ連と

一段と輝きを増している奥様方とそして・・・が、居た。

「おう!・・・・」

「おう!じゃなかった・・お客様!ごゆっくりお休みいただけましたか?」

「お前も・同類だろ?」

「そうですねえ~多分。ところで・・・ハウメニー?」

「足りっかな?後、何泊だっけ?」

「本日はジャスパーでお泊りいただいて、明日からバンフで2泊。バンクバーで・・」

「一泊だろ!身体持つかな・・・」

「持てばいいですねえ~ビタミン剤で宜しければ・・・ホレ!」

黄色く見える太陽を見ながら、僕と佐々木クンと白〇クンは、僕が手に入れていた

「マムシトスッポンを粉にしたモノに、中国4千年の歴史の漢方薬」と

もしかしたら飲みすぎかもしれないけど、ビタミン剤を10錠ずつを

ミネラルウォーターで流し込んだのだ。

「お客様!そろそろバスにお乗りいただくお時間です。

僕たち「悪たれ連」は、ノロノロと絞首刑に向かう囚人の様にバスに乗り込んだ。

オマケになるけど、ガイド嬢の手元には、昨夜。僕が肩にかけた。ミンクのショールが

入った紙袋が握らてていたのは言うまでもない。

バスは、乗り込んだ途端。爆睡モードに入った「僕たち」とお客様を乗せ、

一路、トロント国際空港へ向けて走り出していた。

-サプライズ 5-に続く。




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僕たちに明日はあるのか? VOL6 [ぼくたちのシリーズ完結編]

-ごあいさつ-

皆様!委員長こと部長の僕です。大変長らくお待たせしました。

僕たちのシリーズ完結編です。

何しろ、未来の僕はコノシリーズが始まってから、激変期を迎えているようで、

確かに、美希と一緒に手相を見てもらったら、「大器晩成型」と言われたことがあります。

何でも。もうじき僕はおじいちゃんになるんだとか、大きい仕事があるんでと

渋る未来の僕は、僕の目から見れば、滑稽で時々ぶん殴りたくなります。

未来の悪たれ連の姿は、この場を借りてご報告しますと・・・

佐々木クンは、家業を継ぎ、変態産婦人科は、「もうやってられっか!」と婦人科だけに

したそうで、独身はYクンだけです。まあ、彼は「僕たちの中の変わり者」変人で、

「ヘタ!」のくせに、鉄砲を数撃つことは出来ない性格が、災いしたのでしょうか・・・

まあ、未来の僕がこの先「どこまでゲロ!」するのか、判りません。

いや、僕自身も知らない未来を見るのが、悲しいような楽しいようなと色々ありますが

どうか最後までお付き合いのほどお願い申し上げまして、舞台はもうちょっと遡るとか

それでは、開演のお時間になった様でございます。

-サプライズ 5-

あれは、出来れば封印しておくべきだった。いや、そもそも僕に関わった人にとって、

僕に「出会わなければ」良かったのかもしれない。

僕の高校生活は、この上ない幸せだけで終る。そう信じていた。

信じていたけど、僕に与えられた運命だけは、どうしても変えられなかった。

僕は「表裏一体」いや、「楽よりその何倍もの苦があることが人生」だと

思っていなかった。

それは・・・一体いつだっただろう。

この先。僕は「神主」で生きると決めていたはずなのに、ある日を境に僕を取り巻く

環境は変わっていった。

何もかも嫌になり、死を選ぼうと思っても、そして、行動をすれば、それだけ、

僕の大切な人たちにとんでもない「災い」が待っていたのだ。

ここから、僕がどんな惨めなことになったのか?それが、今生きるいや、生かされている

僕を造ることになったのだろう。

ある日。それは、突然僕の周りに起こり始めた。

そう、僕がその昔。悪魔に魂を売り渡した。代償だったのだ。

僕は定期的に「強制健康診断」を受けさせれていた。

まあ、時々、意識が遠のいて、僕は光の塊となり飛び回っていたし、

相変わらず、ピンクのウサギさんの着ぐるみを着て、仲間たちは、オオカミの着ぐるみで

病院に入院している子供たちの慰問をしていたので、そのお礼ではないけど、

僕たちのある行為でその「被害」に遇っていた女医さんとナース軍団に、

身ぐるみをはぎ取られ、「強制健康診断」で徹底的に調べられていた。

Yクンは、「お婿にいけない」と泣き叫んでいたくらいだから、

それなりの検査&検査だったのだ。

僕をはじめ、その他のメンバーは、「タダだし。いいじゃん」と言っていたけど、

その頃、優子に少しづつ病魔が襲っているとは、夢に思わなかったのだ。

そして・・・その日が突然僕の目の前に現れたのだ。

-遥かなる航路 1-に続く。
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僕たちに明日はあるのか?VOL7 [ぼくたちのシリーズ完結編]

-遥かなる航路 1-

その日。僕は全てを投げ出していた。

いや、逃げ出していたのかもしれない。佐々木クンにだけ、

「学年主任にコレ!渡しておいてくれ」と一書き添えた封筒を

わざわざ郵便で送るために、ポストに投函した後、僕は紗栄子の店に顔を出した。

「ちょっとだけ・・・いいかな?」

「いいも悪いもないわ!ベッドに行く?」

「後でね・・・ちょっと電話借りるよ。悪いけど・・」

「じゃあ!お買い物に行ってくるね。美希も来るの?」

「多分、来るんじゃない!俺が居なければ内緒にしてくれる?」

「いいけど・・条件次第かな?」

紗栄子は僕に身体を擦り付けて、キスを迫ってきた。

まあ、「旅立ち前」に悪くはない。

「ちょっと夜出かけるんでそれまでなら・・・」

「何か美味しいモノ・・・買ってくる!あっ!」

「何?」

僕の手は本人の意思とは関係なく紗栄子の身体を弄っていた。

「あのさ・・・買い物前に一回!」

「いいね・・」

僕はお店のカウンターで紗栄子をノックアウトしたのが、まだ、お昼前だった。

「洋食屋さんでいいでしょ?今日は臨時休業にしちゃおう。」

「夜に出かけるんだよ・・・」

「いいの!」

タバコを咥え、勝手知ったるカウンター内に入り、コークハイいや・・正確には

コーラはほんの少しで、たっぷりとウイスキーを注いだグラスを片手に、紗栄子の

身支度いや正確に言えば邪魔をしながら、紗栄子を弄っていた。

「30分で帰るからね。」そう言うと、紗栄子は僕が窒息死するんじゃないかと思う

くらい長い間僕の口を塞いでいた。

紗栄子が出ていくと、僕はとある所に電話をしていた。

僕のミスと言えば筆圧が強かった。メモには、僕のその後の行動が示されていた。

とあるところ。つまり、船会社に目的の船に乗れるか?問い合わせていた。

東京港を出港して那覇までの船旅。いや、片道切符の行く当てのない。

死に場所を求める死出の旅と言えばいいのかもしれない。

その日。僕はいつもの迎えを待っていた。

やってきた優子の車は、僕にとって、初めて居心地が悪かった。

「あにね・・・ちょっと話があって・・・」

「いいけど・・何?」

僕は座り心地が悪かった姿勢を直していた。その後に続く言葉が、

僕のために付かれた?だとは思わないで・・・

優子の話を聞いた僕は、咄嗟に叫んだ。

「優子!車止めて・・・電話してくるから・・・忘れていたことがある。」

そして、僕は電話ボックスめがけて走り出した。けど、電話ボックスに入り、優子が

目を離したその瞬間を待って、僕は雑踏の中に逃げ込んだのだ。

「判りました。出航は夜で・・手続きは1時間前から・・・」電話を切った途端

ドアを開けて紗栄子が帰って来た。

「お帰り・・・」

「良かった・・・」

「何が?」

「もう居ないかと・・・」

「どこかに行くの?」

「行かない!まだ・・約束果たしてないもん!ゴハンは?」

僕は少しだけ嘘をついた。今晩の出航ではなく、明日の出航になっていたから、

今晩は紗栄子の所に居て、明日。早朝に逃げ出そうと決めていた。

「1時間くらいかかるらしいわね・・・いつもの飲む?」

紗栄子が買ってきたのは、赤まむしドリンクとユンケルの組み合わせが、入った袋と

「コレ!飲んだら大丈夫かな?」と思うくらいの、「マムシとスッポンの粉」だった。

「えへっ[黒ハート]今夜は臨時休業しましょ!美希は来るかもしれないけど・・・ね![黒ハート]

まあ、これから先、嫌と言えるくらい眠れるだろう。僕はコクンと頷き、

それ等を一気に飲み込んだ。

「うへ~こ・・粉が・・・」

「はい!お水!」

差し出されたグラスの水を飲み干した。

「ねえ~ピアノ弾いて[黒ハート]

「了解!」

僕はこの店で初めて弾く曲を弾いた。それはせめてもの紗栄子に対して

お別れを告げる曲でもあった。

多分、紗栄子が僕の事を全部知ったときには、僕は多分。存在しない。

そんな思いを込めた。

「何か悲しい曲ね[黒ハート]でも・・・」

「でも、アタシもこんな風に死にたい。アナタの腕の中で[黒ハート]

そして、次の朝。静かに眠りについている。紗栄子と美希にそっと別れのキスをすると

早朝の街に出た。

「あっ!アノヤロー大丈夫かな・・・」

僕は電話ボックスに飛び込むと、佐々木専用の電話番号を回した。

眠そうな声で電話にでてきた。

「あっ!佐々木!悪いけど‥お前宛に郵便送っておいたから、学年主任に渡してくれ!」

一方的に僕はそれだけ告げて、電話を切ろうとした。

「ちょ・・ちょっと待て!お前何処にいる?」

「なんで・・・」

「何かあったか?」

「何もない。今夜ちょっと出かける。」

「出かけるってどこだ?」

「今は言えないな!後で連絡・・・」

「会えねえか!」

「お前。今日ガッコーだろ?」

「バカか・・今日は休み!」

「そうだった。」

「どこに居る?」

「浜松町に向かってる」

「浜松町?飛行機か・・・」

「まあ、そんなもん。」

「じゃあ!新橋のSL前!12時でどうだ。」

「判った!」

僕は佐々木君にだけは、全てを話すつもりだったもかもしれない。

まあ、悪たれ連こと社会関係奉仕部の事も仲間たちの面倒も頼まなければ、

「どこか知らない所」へ行くにしても、最低限伝えることが義務だと考えた。

新橋の駅前広場。SLが見える喫茶店で僕は、SLの前を見ていた。

佐々木クンだけなら、僕は姿を現し、そうでなければ、喫茶店で書いた

別れの手紙を投函して、僕は旅立つことにした。

12時ちょっと前に佐々木クンが現れた。どうやら、一人らしい。

「よう!」僕はコインロッカーに「怪しまれないための荷物」を放り込んだ後、

佐々木クンに歩み寄った。

「おう!メシ食ったか?」

「ああ・・・さっきな。」

「俺も喰った。サテンでも行くか・・・」

「どこに行く?」

「ウチの店あんだよ・・・そこでいいか・・・」

「お前の所。どんだけ商売するんだ?」

「知るか・・・今度は、フーゾクも始めるとか。」

「いいねえ~お前の親父らしいわ!」

「あのさ・・出かける寸前に・・」

「あん?」

「美希先生から電話あったけど・・・お前知らねえかって・・・」

「散々ノックダウンしたんだけど・・・」

「昼間から言うかぁ~」

「おかげでヘロヘロなんだけど・・・」

「ほれ!」

佐々木クンが渡してきたのは、「いつものセット」そして・・・

「ほれ!おまけ!」

「なんだこれ?」

「何でもお袋のところ・・・」

「あのラブホ・いや・・連れ込み」

「どっちでもいいや。そこで売るんだと・・・まあ、効くかどうか確かめねえと」

「良心的だねえ~って・・・俺モルモットか?」

「お前が一番じゃねえのか・・・少なくとも、お前は金払わないでヤレるし・・・」

「うんうん。お前らは、金使って。センコーに見つかるし・・・」

「思い出させるなっ!」

「ついでに・・リンちゃんだもんな・・・」

「殴るぞ!・・・」

「そんで、何だって?」

「居場所知っていたら教えろって!」

「教えたのか?」

「今は教えねえよ・・理由も言わねえし・・」

「サンキュー」

「聞いてもいいか?」

「後で話すよ!いや・・渡したほうが早い」

「後で教えるんだな?」

「ああ・・・サテン行こう!」

「おう!見送らせろよ・・いいな!」

「ああ!そのつもりだ。でも・・・」

「なんだ?」

「誰にも言わないでくれよ・・・」

「困ったら電話しろ!約束だ。」

「ああ・・そうする。」

佐々木クンのお父さんが経営する「ノーパン喫茶」でしばし床だけ眺め、

「ちょっと待っててくれ!」

僕は乗船券を買いに行き、そして佐々木クンに手紙を渡した。

「じゃあ!」

「おう!」

そして、僕は船に乗り込んだ。幸い。偽名で乗れたし、経由便だから、

僕がどこにいるのか?皆目の検討はつかないだろう。

ー-遥かなる航路 2-へ続く。


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僕たちに明日はあるのか?VOL8 [ぼくたちのシリーズ完結編]

-遥かなる航路 2-

佐々木クンと別れ、僕は海の上。まあ、厳密に言えば「船上」から、陸を眺めていた。

途中、いくつか港によるらしいこの船を選んだのは、どこかの港に上陸するか?

それとも、深夜に深そうな所で飛び込むか?僕は迷っていた。

もう、僕には「帰る場所」はない。と一方的に決めていた。

大きく手を振る佐々木クンを眺めながら、僕は心の中で謝っていた。

「悪い!・・・」そう口に出しかけたとき、船は汽笛を残して、離岸していた。

「ん?」

小さくしか見えなかったけど、佐々木クンがビンタを喰らっている。

「あれ?」

僕が佐々木クンと「最後と決めていた夕食」を摂っていた頃、紗栄子の店では

ちょっとした騒ぎになっていたと後で聞いた。

僕の筆圧を鉛筆で塗りつぶして、ココを割り出したのだろう。

まあ、乗船名簿には、僕は偽名で住所も出鱈目に書いている。

僕が捕まって、護送された後聞いた話では、最後までしらばっくれて、

僕の肩を持ってくれたらしい。「仲間のためなら、大嘘を吐いて地獄へ行く」が、

悪たれ連の掟だったかららしい。

佐々木クンに渡した封筒には、やはり、「退学届」を入れておいて良かったそうだ。

ここからは、佐々木クンが話してくれた話をしよう。

「痛ぇ~な!暴力ババァ~」と佐々木クンは言ったらしい。

「あんた・・・誰に・・・」

「先公だよな・・・くそったれ!ホラ・・・これが欲しかったんだろ!」

佐々木クンに預けた。僕の「退学届」を、美希の鼻先に突き付けた。

「ついでに・・・俺も辞めるわ!後。宜しく!」

「ちょ・・・ちょっと・・待って!受け取れない」

「受け取れ!くそババア!コレが欲しかったんだろ・・・」

「そうじゃなくて・・・どこに行ったか知らない?」

「さあな・・・」

「船会社に聞いても、そんな人乗ってないって・・・」

「だろうねえ~」

「知らない?本当に・・・」

「ウチの荷物を運んでいる船に手を振っていただけだぞ・・・・」

「どこに行ったか知らない?委員長・・じゃなかった部長」

「どうでもいいじゃん!あんな奴。どこかで好き勝手にやっているか・・・」

「好き勝手?」

「そうじゃなきゃ・・・身元不明の死体でも探せばいいじゃん!」

「ば・・馬鹿!あんた・・仲間でしょ!」

「仲間ねえ~そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。」

「えっ!」

「教える訳ないでしょ!仲間なら・・・」

「そう・・・そうよね。でも、あの子勘違いしているみたいで・・・」

「勘違い?」

「まあね。完全に勘違い。いや、勘違いさせる様に言ったのが悪いんだけどね。」

「ふ~ん。あいつ・・・」

「何か知ってる?早とちりする前に止めなきゃ・・・」

「今の船の行先当たるしかないんじゃない!・・かな・・・」

「何で?」

「そこまでは言えないけどね。じゃあ!」

美希が手を離した瞬間に佐々木クンは、逃げ出したらしい。

まあ、逃げ足だけは僕らは早い。何故なら、大人が考えにくい所へ

逃げ込むことも偶にある。

悪たれ連の面々は、ジャイアンツファン。つまり、ジャイアンツが負けると

機嫌が悪い。機嫌が悪いと、八つ当たりもしたくなるので、野球観戦に行けば、

負けた時もそうだけど、勝った時も、場外延長戦をする場合がある。

まあ、10人くらいなら、佐々木クン一人で潰しているので、僕らは体力温存して

いるけど、まあ、お決まりで警察に追いかけられることもあるけど、

球場から、数百メートル走って横丁に逃げ込み、とあるビルに消える。

このとあるビルは面白い造りになっているし、ここのオーナーは、佐々木クンの家

だから、ビルの隙間へ出る「僕ら専用の非常口」から、数件並んでいる佐々木クンの

家のビルを抜けると、地下鉄へ逃げ込める。

まあ、僕らは佐々木クン以外逃げる必要はないけど、つい警察官を見ると、

逃げる癖がいつの間にか身についている。まあ、叩けばホコリは出なくても、

塵くらいは出るのが、僕らの日常なのだ。

そんな事になっているとは知らない。早とちりの僕は、数日に渡る船の中だった。

「そろそろ・・かな。」

僕は深夜のデッキに出た。

「ちっ・・これで吸い納めか・・・」

ぽつんと呟くと、1本だけになったタバコに火を点けた。

この一服を終えれば、今は真っ黒にしか見えないけど、夜が明ければ綺麗な海底に

僕は横たわっているか?魚のえさにでもなっているだろう。

そんな僕を物陰から見ていたのは、コールサインは、グレイのジュニアだった。

今、最後の一服を投げ捨てると僕は手すりによじ登ろうとした瞬間だった。

「ヘイ!ユー火を貸してくれ・・・」

「はあ?ライターも持ってないのかよ!くそったれ!外人」

「ソリー」

「ほらよ!」ポケットからライターを取り出して渡した瞬間。僕の身体は宙に浮き

そして、甲板に叩きつけられた。

「てめえ~」言い終わるかどうかの瞬間に、僕の繰り出したパンチは、ジュニアのジュニア

目掛けて飛んでいた。

まあ、そうなると、殴り合いになるのは、当たり前。

お互い相当なパンチの応酬線だった。

「これで終わりだ!」「フィニッシュね!」僕とジュニアのパンチは、クロスして

互いに甲板に伸びたのだった。

「ジャップのくせにやるな!」

「うるせーアメ公」

「ドローだ。」

「ドローか・・・まあいいや!タバコくれ!」

「ああ・・・」

僕はタバコを受け取り、ノックダウンするべくパンチを繰り出したけど、

簡単に受け止められてしまっていた。

「ドローだけどな・・俺は空を飛べる。お前はムリだろうけど・・・」

「ざけんな!」

この時、僕は不思議な感覚だった。もう海底に眠るのは先延ばしでも、

いい気がしていた。

「何と呼べばいいんだ。」とジニアが聞いてきたので、「ブチョー」と答えた。

「お前は?」

「グレイと呼んでくれ」

「外人のくせに日本語上手いな。」

「ああ・・マミー。いや、かあさんと言うのか、ジャパニーズだからな」

「なるほどね・・・」

「ブチョー何処へ行くんだ?マイハウスに来ないか?」

「ユーのハウスか・・・」

「パパのだけどな・・・軍のパイロットだし。エアープレーンの・・・」

「飛行機」

「ヒコウキのティチャー・・・」

「教官・・だろ?」

「それ・・やっているから・・・お前も飛べるかもしれない。」

「グレイの操縦じゃなかった・・・フライトは、ソーリーだけどな」

僕の部屋は、2段ベッドで、他の乗客が居なかったので、ジュニアが引っ越してきた。

まあ、一緒にウイスキーを回し飲みしながら、時々、デッキに出てタバコを吸った。

僕はその時知らなかったけど、美希は学校をさぼり。僕の行方を捜していたらしい。

確かに、那覇港に着いた時、それらしい人影を見たけど、僕はジュニアを迎えに来た

車に押し込まれていたのだ。

- 空の向こうに 1 -へ続く。



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僕たちに明日はあるのか?VOL9 [ぼくたちのシリーズ完結編]

-空の向こうに 1-

あれからどれだけ経ったのだろう。

ジュニアの家にとりあえず、居候を始めた僕は、始めた翌日から、

ジュニアと一緒にパパさんの飛行訓練を受けることになった。

最初は、ジュニアが操縦桿を握り、飛び立った瞬間。僕は「乗らなきゃよかった」と

何しろ、ヨタヨタと滑走路に向かい、「ジュニアパパであるケビンに怒られていた。

「ふんふん・・・悪い例は判った」

「ホワッツ?」

一通り、ジュニアの訓練が終わると、僕の番になった。

座学は、ケビンの話す英語を、サエママが、通訳してくれ、実機訓練になったのだ。

単発つまり、エンジンが一個しかない。単発飛行機のいきなり左席に座らされ、

今日までで都合30時間以上は訓練を受けていた。

「オーケー。フタリでフライトね。」

二人は顔を見合わせた。空へ飛びあがるのだ。それも、二人だけ。

僕とジュニアは、気が付けば、大空に浮かんでいた。交互に操縦桿を操作していた。

でも、後ろに乗っているはずのケビンの姿はなく、その代わりに、近くを飛びながら

無線で指示を送ってくるのだ。

ジュニアは、訓練を少しサボっていたし、ハイスクールもあるので、僕がいつの間にか

追いついてしまっていたわけだ・・・

「ユーハブ!」僕はジュニアに操縦桿を渡した。

「アイハブ!」ジュニアは、仕返しとばかりに、急降下を始めた。

「やると思った。この単細胞!」

「お前が先に・・・」

その時、ケビンの怒鳴り声が、コックピットから流れた。

「今度はアクシデントでないね。二人ともバツ当番・・・」

「ゲッ!」

「Oh!my・・」

「ゴッドねえ~そうだ。グレイ!」

「なんだ!シン・・・」

「あのさ・・プリーズ テル ミー」

「ホワッ?」

「Gotはどこに居るんだ?」

「ホ・・ホワイ?」

「うん。神様。あっゴッドね。天国にいるのか?」

「メイビー」

「天国かぁ~どこにあるんだろ!」

「アイ ドン ノー」

そこへ、ケビンパパの声が響いてきた。

「ユーたちのゴットは、ミーだ。そして・・・それは、空の向こうにある。」

確かにそうかもしれない。僕はぼんやりと操縦席の左側の窓の外を眺めた。

僕がこんな事をやっている間。佐々木クンそして、悪たれ連はのメンバーは、

連日の様に「あれは取り調べ以上だった」と言っていたけど、散々絞られていたらしい。

少なくとも、佐々木クンでさえ、僕がどこで船から降りたのか?それとも、

海に落ちたのか?飛び込んだのか?さえ、知らなかったわけだから、

昨夜の「とりあえず電話」で30分以上も、ギャンギャンと喚いていた。

「お前!生きているのか?」

「生きていなけりゃ電話出来ないだろ・・・」

「霊界からのお誘いじゃ・・・」

「来るか?ここは天国だぞ!」

「あの世か?」

「やっぱり馬鹿なのか?まあ・・天国に近いところだ。」

「近いところ?」

「ああ・・ハブにやられたら、あの世行きになるか・・」

「判った!沖縄か・・・」

「沖縄だけどね・・・」

僕は、正確に言えば、ここ1週間前から、とあるクラブでピアノを弾いていた。

ケビンとジュニアに連れられ、行ったクラブで、ピアノを弾いたのが始まりで、

このクラブで演奏をしているバンドリーダーから、「代演」を頼まれた・・・

そんな訳で、僕は昼間は操縦訓練を受け、夜はバンドのピアニストが、

復帰してくるまでの間だけ、働いているのだ。

「おい!シン!」

「う・・・うん?」

「ファイナルランディングだ。ユーハブ!」

「ラ・・ラジャーアイハブ!」

ジュニアがタワーに着陸許可を取り、僕に親指を立てた。

「ラジャー!ランディングチェック&ファイナルフラップ!」

僕はゆるやかに右バンクで降下を続けた。

「ランウェイ インサイト!」

そのコールと共にタワーから着陸許可が出た。

まあ、そこそこの着陸だったらしい。「カミカゼボーイ!」と

何回怒られたのか忘れたけど、最初の着陸よりはマシだっただろう。

僕が駐機場に向かっている頃にケビンの機体が滑り込んできた。

「なあ!ジュニア!」

「あん?」

「バツトーバン(当番)やりたいわけ?」

「仕方ないよな・・・」

「だよな・・・」

僕が駐機させた横にケビンの機体が滑る様に入ってくる。

ヨタヨタのボロボロ状態で入ってきた僕とは違う。

まあ、半分は僕のせいだけど、半分は、ジュニアが僕を大笑いさせたのだから、

半分はジュニアのせいだろう。

「OK!ボーイ’ズ!明日から・・・ソロだ!」

そういい終わらないうちに、気が付いたらしい。

「その前に、カーウオッシュ!」

「やっぱり・・・」

僕たちは士官のマイカーを洗車するバツ当番をしなければならない。

まあ、中にはチップをくれる士官もいるので、ちょっとしたお小遣いが

稼げるわけだ。

ジュニアが運転するバイクの後ろに乗り込み、僕たちは外へ出かけた。

僕はクラブの裏手で降ろしてもらい、アルバイトへ向かい、ジュニアは、

「ガールハント」をしに、街へ出てゆく。

「あっ・・・そうだった。電話しなきゃ・・・」

僕は近くの公衆電話へ飛び込み、勝手にコレクトコールで電話を掛けた。

「あっ・・・佐々木!俺だけど・・・」

「に・・逃げろ!・・うわっ!」

「お・・おい!佐々木・・・」

「もしもし[黒ハート]どこにいるのかしら?」

電話を強奪したのは、紗栄子だった。

「ど・・どこって・・・・」

「後ろに誰か居ない?[黒ハート]

恐る恐る後ろを振り向いた途端、まるで鬼の形相で美希が立っていた。

「な・・なんでここが?」と言いかけたときには、逃げる場所はなく、

僕の腕は思い切り捩じり上げられていたのだ。

「連れて帰るわね」

僕から受話器を取り上げ、電話に向かって言った。

「無理!約束あるから・・・」

「何で!帰えるの!」

「か・え・れ・な・い。」

「何で?」

僕は美希に事の次第を喋るしかなかった。

「あと・・・1週間はムリ。」

「1週間?」

「そう!1週間あれば、帰ってくるから・・・」

僕は電話ボックスのガラスと美希に挟まれている時に、バッドタイミングで

ジュニアがガールハントに成功したのか?ハオスクールの同級生なのか知らないけど

女の子を乗せてバイクで滑り込んできた。

「ヘイ!何してんだ?シン・・・」

「見たらわかんだろうが・・・」

「シン?[黒ハート]

「まあね・・・痛ぇ~から放せ!」

「ダメ![黒ハート]

「まだ・・・何か隠してるわよね?シンって・・何?[黒ハート]

「飛行機の操縦習ってんの・・・」

「えっ?[黒ハート]

「明日からソロだし・・・」

「ソロ?[黒ハート]

「単独飛行!」

「へえ~[黒ハート]

「だから・・・それもあって・・・シンってのは、タッグネーム」

「あっそ[黒ハート]

「あっそって・・・いつ・・・こちらに?」

「今朝!佐々木君ゴーモンしてたから・・・[黒ハート]

「ゴーモン?あっ・・・拷問ね・・・可哀そうに・・・」

「口割らすのに時間かかったわ・・・[黒ハート]

「へえ~」

「へえ~じゃないでしょ![黒ハート]

「で・・・いつまでこちらに?」

「一緒に帰る日までね‥[黒ハート]

「ど・・どちらにお泊り・・・」

「ホテルしかないでしょ・・・」

「うんうん・・・そうだよねえ~」

「あなたは?[黒ハート]

「ジュニアの家に泊まるからさ・・・訓練もバツ当番もあるし・・・」

「ダメ![黒ハート]

「ダメって・・・あっ!ステージあるんだ!行かなきゃ・・・」

「飲んで待っているからね[黒ハート]

「あのぉ~そこに止まっている車は・・・」

「レンタカー。あっ!どうしよう![黒ハート]

「あなた・・運転出来たはずよね[黒ハート]

「そ・・そりゃあ~ね。でも、公道は拙いと思うけど・・・」

「あらぁ?運転しているわよね[黒ハート]

「もう・・行かなきゃ!高いのダメだからね。」

僕は店の裏手に駆け込む。まあ、「逃げるが勝ち!」と言う言葉もある。

「ジュニアじゃないけど・・・オーマイゴッド!」とぽつんと呟いた。

-空の向こうに 2-へ続く。


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僕たちに明日はあるのか?VOL10 [ぼくたちのシリーズ完結編]

ー 空の向こうに 2 -

僕はある事件がきっかけで、バイトと言うより、ピアニストのビルの代わりに

毎晩2ステージ。週末にはほぼ朝までのステージを、こなさなければならなかった。

まあ、簡単に言えば、軍属を半殺しにしていたら、その仲間が、ナイフを振りかざし

そこへ割って入ったというより、おせっかいのビルが、刺されてしまったのだ。

だから、僕はビルの代わりにビルが、復帰できるまでの条件で、ピアノを弾く羽目に

なったというわけだ。

幸い、ビルの傷は浅かったのだけど、「恩を返さなければ男が廃る」というわけだ。

僕もそれなりにチップも貰えるので、一石二鳥?いや、ケガの功名?どちでもいいけど

ビルの太鼓判をもらって、ステージに立っている。紗栄子の店と違うのは、ここでは

僕が歌う必要はない・・はずだったのだ。ちゃんと女性ボーカルがいるんだから・・・

ところが、そうは問屋が卸さないのが、世の中らしい。

1回目のステージを終え、楽屋に戻り喉を潤していた時だった。

「おい!ニューフェイス・・・ピアノマン!」

「ホワッ!ボス!」

「ユーにリクエストね。」

「はあ?」

僕は天を仰いだ。あのまま、ボブが助けなければ、僕は楽に

なっていたか、今、こんなことをしていなくても済む話だったが・・

「いいフレンズ居るじゃないか・・・」

楽屋に来ていた包帯姿のビルが笑っていた。

「そ・・・ソングは・・・」

「やってこい!」

「でも・・・」

「ミーも聴きたいわね・・・」

ボーカルのリリーが微笑んだ。

「お・・・オーケ・・・・・」

果たして、この店で日本語バージョンがふさわしいか判らないけど、

僕が何とか少し喋れる様になった英語は、完全にブロークンイングリッシュ。

まあ、先生はが先生だったので仕方がない。

僕は相変わらずの生活で、週末一緒に夜まで・・・・ベッドで習った英語は

この先、僕にとっては、少々厄介なことになるけど、それは先の話だ。

つまり・・・なんだ。僕は「英語を学ぶ相手」を間違えたけど、厳粛なクリスチャンに

教会に連行されるより、週末だけの自由を選んだ。「健全な男の子」なわけだ。

「ボス!ジャパニーズOK?」

「ノープロブレム。ホワッ?ソング・・・」

「キャント・テイクマイアイズオフユー&アンチェッドメロディー・ウイアーオール・・」

「OK!サムライ!」

また、僕の呼び名が増えたらしい。

バンドメンバーのサポートがあり、僕は2回目のステージを終えることが出来た。

まあ、僕は3曲だけのリクエストを終えた後、お客さんたちから破格のチップを貰った

「ボス!コレ・・・」

「ユアーズ!」

その夜のチップは、全部僕がもらえることになった。ビルも要らないというし、

他のメンバーも受け取らなかったのだ。

「サムライ!シーユートウモロー!」

僕は、メンバーたちに担がれ、客席に降ろされた。そこにはいい感じになっている

ジュニアと彼女が楽しそうにしゃべっていたし、美希は僕の腕をしっかりと掴んで

いたのだ。

「あ・・あのですね。英語のレッスンもあってね・・・」

「だあめ![黒ハート]

僕のレッスン相手。つまり、週末。ベッドの中で「何のレッスン?」と言われても

仕方がないレッスン相手のリンダが睨んでいたけど、とにかく、この酔っ払いを

ホテルに送っていくしかない。

「ジュニア!先に帰るぞ・・・」

「ああ!シーユートゥモローフライト・・・」

僕は酔っぱらっている・・ハズの美希を抱え、レンタカーに積み込んだ。

乗せたと言うべきなのだろうが、正確に言っても積み込んだ。

「もうちょっと・・ジェントルマンになれませんかしら[黒ハート]

「よ・・酔っぱらっていたんじゃ・・・」

「あんなもんで潰れるあたしじゃ・・・」

「ですよねえ~まだ・・飲む?」

「何がいただけるのかしら?[黒ハート]

「ええとぉ~ハブ酒があるよ!泡盛って・・・あの馬鹿!」

僕はカバンをのぞき込むと、二匹のハブが入った酒瓶を発見したのだ。

「ウフフ[黒ハート]

「あ・・あのね。今日は・・・」

「だあめ[黒ハート]

「明日は・・ソロフライトもあるし・・・」

「だあめ[黒ハート]

「ところで・・・ホテルは?」

「ちょっと・・遠いかな。万座の・・・」

「げっ!俺・・無免だって・・・」

「だあめ[黒ハート]一週間。タップリ・・・・クス[黒ハート]

「オーマイゴッド!」

「何か言ったかしら[黒ハート]

「万座って・・・高くない?」

「だって・・ねえ~[黒ハート]壁薄いと・・・[黒ハート]

「あの・・・睡眠も大事じゃ・・・」

「ベッドは大事よね[黒ハート]

「だ・か・・・ら!」

「ダメッ[黒ハート]

「先生でしょ・・・」

「今はね。どうなるか判らないけど[黒ハート]

「えっ?」

「嘘よ!ホテル・・そこね。[黒ハート]

「えっ!」僕はブレーキを掛けた。

「あのさ!もうちょっとで行き過ぎるところでしょ!」

ホテルの駐車場に車何とか停めて、トランクからスーツケースを運び出した。

「あん?」

「なあに?[黒ハート]

「これ見覚えあるんですけど・・・」

「あなたのステージ衣装ね。持ってきたの![黒ハート]

「恐れいります・・・」

「素直でよろしいわね。[黒ハート]

「ところで・・・チェックインは?」

「済ませてあるわ![黒ハート]

「そんじゃあ!部屋までコレ!運んで・・・戻るか・・・」

「だあめ[黒ハート]

美希の瞳が全てを物語っていた。

きっと僕はまた、明日。少なくとも、寝不足は確実になるのだろう。

そもそも、僕が何故英語を学んでいたのか?ちょっと時間をさかのぼらなければ

ならない。

空の世界では、英語が必須。リーディングやグラマーは、何とかなる。

でも、リスニングやスピーキングだけは、少々だったわけで、これは、学校教育の

弊害だったわけで、それに僕の周りを見回しても、変な日本語を話すジュニア以外、

流暢な英語を話す様な、「物好き外国人」は存在していなかったのだ。

「ユーはイングリッシュスタディーしないと・・・」

ジュニアパパのケビンの命令だった。

「フェアー?アイドントライクスクール」

まあ、学校にはうんざりだった。

「イン・ザ・ベッドが一番ね。」

ケビンも変なおっさんで、つまり、ベッドの中で習ってこいと・・・

因みに僕のフライト教官でもあり、変な日本語を使うケビンも

ベッドの中で日本語を覚えたらしい。そんな話をケビンとしていた時、

いつの間にか現れたサエママが、顔を真っ赤にしながら思い切りケビンのケツを

抓り上げたので、話はとりあえずそこまでになったけど、ジュニアがハイスクールに

行っている間。僕はケビンの空き時間には、一緒に空を飛び、様々なレクチャーを

受けた。まあ、色々な教えがあったけど、「イン・ザ・ベッド・レッスン」なら、

僕はいずれ数か国語を話せる様になるかもしれないとさえ、考えたわけだ。

何しろ、僕は単細胞な生き物だから・・・

リンダは、僕が「ひょんな事」からピアノを弾いているクラブのウエイトレス。

僕はフライト訓練を終えると、そのままジュニアに送ってもらい、開店前にピアノの

練習をしていた。リンダは開店準備をしながら、僕の弾くピアノを聴いていたわけだ。

まあ、僕よりちょっとだけお姉さんで、混血のリンダとまあ・・・その・・・

何だ。彼女の住む簡素なアパートで、一線を越えるまでに大した時間はかからず、

金曜日の夜から月曜日の朝までは、ほぼ一緒に過ごしていたし、いつの間にか

僕はブロークンイングリッシュだけど、ジョークまで飛ばせる様になっていた。

そうそう・・・言い忘れていたけど、僕がクラブでピアノを弾くことになった件も

水兵にからかわれていたリンダを助けたからだ。まあ、これは偶然を超えた必然が

互いを惹きつけたのかもしれない。

「こらぁ~何を考えているのかな?[黒ハート]

僕は現実の世界に引き戻された。

「何でもないけど・・・」

「手が止まってますよ!ウフフ[黒ハート]

「あのね・・・後、1か月あればライセンス取れるんだよ!」

「一週間でしょ[黒ハート]

「美希だけ先に帰って・・・後で来れば?」

「本当にライセンス取れるの?[黒ハート]

「多分・・・でも、航空無線とかも取らなきゃいけないし・・・」

「取らせてあげたいけどねえ~でも、今はだめ・・かな・・・」

「何で?」

「帰れば判るわ[黒ハート]

僕は何も知らなかった。いや、正確には知ろうともしなかった。一人合点して

ここまでやって来たのだ。

- 空の向こうに 3へ続く -









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僕たちに明日はあるのか?VOL11  [ぼくたちのシリーズ完結編]

ー ここまでのあらすじ -

僕はある決断をへて、沖縄へ行くフェリーに乗り込んだ。

少なくとも、帰る気は無くなっていた。いや、帰る場所すら無いと思い込んで

船に乗り、この辺なら僕の魂の抜けた。きっと海水でぶくぶく状態に膨れた

屍は、僕の計算上ではどこへのたどり着かず、静かに海底の奥底に沈むはずと

確信して、飛び込もうとした時に、お節介にも止めたジュニアと殴り合いになり、

「うちに来い!」と強引に連れていかれ、ジュニアの家に居候させてもらい、

「神様と呼べ」というジュニアパパの猛特訓を受けて、いつの間にか僕は

空を飛び始めていた。

「ユーはイングリッシュスタディ・・・」しろと言うケビンの命令と

「スタディ・イン・ザ・ベッド」の有難い?かどうかはさておき、僕はリンダから

ブロークンだけど、いつの間にかそれなりに話せる様になったのだから、

「やぱり神様なのだろうか?」と思ったりしていたわけだ。

まあ・・・佐々木クンは、さぞかし拷問されたみたいだ。

-空の向こうに 3-

「た・・・太陽がぁぁぁぁぁ~」

「どうしたの?[黒ハート]

「き・・・きいろぉ~見え・・・・る。」

「大げさねえ~[黒ハート]

「今日は初ソロだって言ったでしょ・・・・腰が・・・・」

「やあねえ~[黒ハート]えっち[黒ハート]

「ど・・・どっちがぁ~」

それから、2時間後。僕は空の上に浮かんでいた。

最初のソロフライトは、空港の外周を廻る。どこを探しても、僚機であるはずの

ジュニアが操縦する機体もましてや、ケビンの操縦する機体は見えない。

ひとりぼっちの空の上だけど、地上では豆粒ほどにしか見えないと思うけど、

周回を廻り、ランディングするだけ、わずか数分の空の旅になるのだ。

「タワー・ナンシーナイナーナイナー・・・」

僕はタワーコントロール。つまり、空港の管制塔に着陸の許可を求めた。

最初のソロフライトは、ちゃんとタキシングできるか?ちゃんと離陸できるのか?

そして、決められたパターンを飛行できるのか?そして、着陸。そして、

決められた駐機場に戻れるのか?それが問われる。

因みに、プロペラ機とジェット機の周回経路は違う。プロペラなら、「よいしょ!」と

ラダー操作や操縦桿を操作すれば、済む話だけど、ジェット機はそうはいかない。

でも、所要時間は違う。

「あはっ!いたいた・・・」

空のうえから見ていると、あれは絶対ジュニアしかいない。ヨタヨタと滑走路に侵入し

ヨタヨタとまるでへびがのたくっている。

「あいつは・・・昨日!腰使いすぎたのか・・・人の事は言えないけど・・・」

その時、僕の機体はヨタついた。

「あっ!」と言い終わるか終わらないうちに、ケビンの罵声が響いてきた。

「シン!ランデイグ・アボート。タッチアンドゴー!」

まあ、最終着陸態勢にはいっているのによそ見をしたからなのか?

それとも、風の影響なのか?

待たされてい出発予定の民間機のパイロットには申し訳ないとは思うけど、

あちらはプロで、こちらはアマチュアなので、でっかい図体に大量の航空燃料を

詰め込んだ機体の上に、堕ちられるよりマシだろう。

「タワー・リクエスト・タッチアンドゴー」

まあ、タワーも苦々しく思ってはいても、さっさと今上がっていったアマチュアと

これから降りてくるアマチュアをどうにかしないと、大惨事になりかねないから

「さっさとタッチアンドゴーで再上昇して、周回パターンに入れ!」と指示を

送ってきた。

「怒っているよねぇ~きっと・・・」

アイドルに絞った回転数を上げ。少々ハードになったけど。再び沖縄の空へ浮かんだ。

僕の機体とジュニアが操縦する機体が、安全圏内に避難すると、出発機は離陸できる

でも、順番に降りないと、着陸機は上空でホールドしなければならない。

「また・・・バツ当番だな・・・きっと・・・」

僕は目の前を飛ぶジュニアの機体を目で追った。

「一発で降りろよ!そうでなきゃ・・・甲板掃除も加わるかもしれない。」

結局、ジュニアも焦りからか、ミス・ド・アプローチになり、管制の指示で、

一度、海上の訓練空域へ追い出された。僕はなんとか、着陸に成功して、

グランドの指示を受け、駐機場へ戻ってきた。

エンジンを止め、最終チェックを行ない、機外へ出ると、冷や汗か暑さの

せいか?汗がどっと噴き出してきたけど、車輪止めを忘れては、ペンキ塗りも

追加されると思ったので、しっかり機外点検を怠るわけにはいかない。

「「ふう~あいつ・・・どうしているかな?」ジュニアはまだ降りてこない。

お怒りモードの民間機の離着陸の嵐が過ぎ去ったときに、やっと帰って来た。

勿論、僕とジュニアはケビンから、たっぷりとお叱りを受けたのは、言うまでもない。

僕は、最終着陸態勢に入っていたときの、よそ見。ジュニアも同じ。仲良く2時間の

補習教習が待っていたのだ。まあ、バツ当番は管制官たちの車の洗車だけで済んだので、

ラッキーと言わざるを得ないだろう。

まさか、その日の夜にケビンから、「青天霹靂」な発言が出るとは、予想すら出来なかった。

僕とジュニアがその話を聞いたのは、僕が演奏しているクラブの片隅で、

僕は出番と出番の間の休憩時間で、ジュニアはガールフレンドとのデート中だった。

- 空の向こうに 4-に続く












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僕たちに明日はあるのか?VOL12 [ぼくたちのシリーズ完結編]

- 空の向こうに 4 -

ケビンは「陽気な飛行機ヤロウ」。真偽のほどは定かではなかったけど、

「それなりの武勇」の持ち主。メンタルだけは「繊細」ではない。

何でも、「繊細なメンタルの持ち主」は、ミサイルを撃ったり、機銃を

撃たねばならない時など、「ファイター」には、一瞬の判断とっさに行わねば

ならないらしい。でも、テクニックには、繊細さも求められるらしいのだから、

僕やジュニアから見れば、まるで「雲の上の人」に見える。

今は「実戦にはロートル過ぎだ」と言っているし、現に「教育」が主な仕事だ。

ついでに言えば、僕とジュニアはケビンに連れられ、とある所へ一度行った。

まあ、「耐G」と言われる訓練に、空きがあったので、いつの間にか

「にわか候補生」として、「耐G訓練」を受けた。

ついでに、パラシュートの使い方も習ったし、実践に近い降下訓練も受けた。

おまけに「健康診断」いや正確には「航空身体検査」まで、終えていたのだ。

成績は、「ドッコイドッコイ」と言ったところだ。

まあ、骨折はしなかったけど、擦り傷・切り傷は当たり前で、二人共。

「もう!いや!」と言うほど、ドロ水の中に落ち、その度に頭から散々水を

かけられていた。

大声で言えないけど、ファイターつまり、戦闘機にも乗せてもらった。

多分、パラシュート訓練も耐G訓練もそのためだったのだろう。

洋上にある基地から相当離れた。まあ、一言で言えば、「堕ちても一般人に迷惑」を

多分、掛けない所に連れて行かれたこともある。

僕とジュニアはそれぞれ別のパイロットの操縦する機体に乗り込み、ほんの数分だけ、

「ユーハブ!」といきなり操縦桿を握らされたのだ。

僕にとって、幸いだったのが、愛読書だった「ファントム無頼」だったので、

操縦桿いや、スティックを握り、ちょこまかと指示に従い、動かした。

まあ、幸福だったのはここまでで、模擬戦で急上昇に急降下そしてロール地獄が、

僕たちを待っていた。道理で、ケビンが、「ションベン漏らすなよ!」と

言っていたのを、思い出したのは、時既に遅しだったけど、ジュニアは涙と鼻水と

小便を漏らし、僕は悲鳴は上げていたけど冷や汗くらいで済んだのは、きっと

僕の組んだパイロットの腕が良かっただけかもしれないけど、放心状態だったのは

確かな話だった。

その後、僕たちは「計器飛行」の訓練を受け、地上に戻らされたのだ。

まあ、「バツ当番」も毎日の様にあり、ついでに「遥かに続く」マラソンが

僕とジュニアは、走るのは早くなったはずだけど・・・

そんなある日にケビンから話があると呼び出されたのだ。

僕とジュニアニハ、予期しない話だったのだ。

「あと・・・ワンウィーク!」

僕たちは耳を疑った。ケビンは、このままでは「空」から降りることになるので、

「民間エアライン」に転籍するとのことだ。

サエママのことを考えれば、いつ戦場に旦那を送り出すのか?そんな不安の日は

無くなるので、めでたいお話。これを機に太平洋を越えた「本土」へ移るわけで、

問題はジュニアだった。ジュニアは、ミックス。つまりハーフ&ハーフなので、

色々あるわけだ。

聞いたところによると、ジュニアの親戚の家は、僕たちの学校のすぐ近くにある。

「なあ、ジュニア!ウチの学校に来るか?」と僕はいつの間にか、そう言っていた。

僕が通っていた学校は、「バカでも入れる学校」だったし、本人たちは隠していたけど、

ハーフちゃんも実は沢山いる。

まあ、「踏み絵」の儀式だけは教えなきゃいけないけど、これは仕方がない。

この「踏み絵の儀式」は、簡単なことだ、例えば僕たちのリクレーションでは、

よくお相手になっている「チョン校」と呼んでいた学校とヤルときは、必ず、

「お互い様」で、「ハーフ」が真っ先に口火を切る。それだけのことだ。

まあ、当分、いや、いずれ、ぶち当たるとは思えるけど、その時だけ「先陣」を

務めることになるけど、運悪くぶち当たるとすれば、「女の子の取り合い合戦」が

あったときくらいで、ここ2~3年はやっていない。

もしかしたら、ハーフちゃん効果もあり、僕たち悪たれ連のナンパ率は上がるかも

しれない。

「ベンキョー難しいんだろ・・・」

「平気平気・・・実はな・・・」

まあ、僕たちの悪たれ連こと「社会関係奉仕部」に所属すれば、嫌でも3年で追い出して

くれるだろう。

「ホントにダイジョウブなのか?」

「まあな・・・タイガク喰らわなきゃだけど・・・その時はママの所へ帰ればいい。」

その時だった。

ウエイトレスのリンダが僕を呼びに来た。

「ピアノマン!シゴト・・ね。」

僕は時計を見たけど、まだ、次のステージまで充分な時間があったはずだった。

まあ、訝る僕の腕に手を掴む。周りを見回すと、他のメンバーはまだ飲んでいるのだ。

「いいから・・・[黒ハート]

まあ、更衣室で「その充分な時間」を過ごし、僕はちょっとフラフラの状態で、

ステージに向かう羽目になったのだけど、これが、リンダとの別れになるとは、

夢にも思わなかった。

その頃、悪たれ連のメンバーは、僕が乗った船に乗り込み、ゲロゲロ状態で、

こっちへ向かっていたのを、僕は知らなかった。

「んっ?」

美希がいつもの席にいない。そう気づいたときに、クラブのドアが開き、

美希と紗栄子、そして来るわけがないと思っていた巫女’sの面々が入ってきた。

そこに居ないのは、優子とミサだけだった。

「やっぱり・・・・来るわけないよ・・な。」

僕はその時まだ「ある重大な事」を知らずにいたのだ。

-空の向こうに 5-へ続く。

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僕たちに明日はあるのか?VOL13 [ぼくたちのシリーズ完結編]

- 空の向こうに 6 -

「問題は・・・ペーパーテストだよな!」

「シンは、喋れる様になったろ・・・」

「バカ!問題はリーディング&グラマーだ。」

「グラマー?って・・こっちか・・・」

ジュニアは、自分の胸の前で、ある曲線を描いて見せた。

「違う!って・・・」

「あはは・・・判っている!ジョークだ!」

「笑えないけど・・・な。」

そして、泣いても笑っても・・多分、これっきりの試験になった。

「物理」だけなら、なんとかなる。いや、学年トップの成績を

収めた「物理」は、全試験パーフェクトで来ている。

物理だけなら、何とかなる。飛行力学はバッチリだけど、

一抹の不安があるとすれば、僕のブロークンイングリッシュと

ペーパー試験だけだった。

ジュニアの方は、1回だけ着陸の際に、不運があったので、

今回の試験は受けられない。何しろ、五体が満足ではないので、

航空身体検査で落とされる。

「シン!ガンバレよ・・・」と背中を押されたけど、

僕には一抹の不安があった。

口述試験は、何とかパスした。実機による試験官同乗による試験も

何とかなった。でも、やはり、ペーパーテストだった。

合格点にわずか1問分だけ足りなかったのだ。

「残念だったな・・・シン」

「仕方ないよな・・・こんなもんだ。」

「また受ければいい。それより・・クロカン行くか?」

「お前・・・その怪我じゃ無理だろ!」

「俺は・・パッセンジャーだ。操縦はお前がやる」

「はあ?いいけど・・・ライセンス」

「補習と言うんだろ!ジャパニーズでは・・・」

「ああ・・・だけど・・・」

「ボスが飛んで来いってよ・・・」

「へっ?あれ・・・飛んだことないぞ!」

僕は驚いた。

何しろ、訓練で飛んでいた機体ではない。

「む・・・無理じゃねえか・・・アレ」

「コーパイ席見ろ!ダディーが乗っているだろ・・」

「あっ・・・なるほど・・・じゃあ!大丈夫・・かな?」

ケビンに「いや!」と言うくらい2時間ほど怒鳴られながら、

離陸そして、着陸を繰り返し、エプロンに戻ってくると

懐かしい面々である悪たれ連の連中が首を長くして待っていた。

その足元には、「引率」してきた兄さんが、何故か「簀巻状態」で

口には、猿轡がされていた。

「よう!」

「よう!じゃねえや・・・この大馬鹿野郎!」

「悪かったって・・・それより・・・何だソレ!」

「ああ・・コレ?お前の飛行機に載せて、東シナ海にでも放り込むかって・・・」

後で聞いた話では、ゲロゲロ状態だった悪たれ連を鼻で笑っていたそうだ。

まあ、陸に上がった途端、ボコボコにされて、この姿だったわけだ。

「いいけどねえ~海洋汚染になるだろ?」と

僕は兄さんこと学年主任の上に座った。

「じゃあ!ミンチ状態にしてサメのエサとか・・・」佐々木クンが笑った。

「ミンチ?どうやって・・ココには調理道具ねえけど・・・」

「「そいつのプロペラでずばっと・・・」

「やだなぁ~ねえ・・・兄さん。じゃなかった学年主任?」笑いながら

僕は兄さんの猿轡をほどいた。

「ヤ・・ヤメロ!バカ共」兄さんの第一声だった。

「どうせおれら馬鹿ですから・・・そうだ!」

「なんだ・・ブチョー?」

「戦闘機のエンジンで砕くか?」

「いいねえ~どうせ、卒業までに処分する予定だったし・・・」

「おーい!ジュニア!」呆れてみていたジュニアを呼び寄せた。

「みんな!コイツ!もウチの学校に来るって・・新メンバーのジュニア!」

僕はみんなにジュニアを紹介した。

「おい!ジュニア!手伝えっ!」

僕たちは、もう一度、喚き散らしながら、真っ青な顔をしている兄さんんい猿轡を

もう一度はめ込み。担ぎ上げた。

「ところで・・・兄さん!佐々木達がお世話になった様で・・・」

ウンウンと課を縦に振り続ける兄さん。

「オン!は返さないとダメですよねえ~」

その時に僕たちは。近くに止めてあった戦闘機のエンジンに近づいていた。

「今晩のビールでもいいけど・・・」佐々木クンが止めなければ、

僕が止めても、きっとエンジンの中に投げ込まれるところだったろう。

何度、海に落とそうかと思ったに違いないからだ。

まあ、「ミンチ」の掃除も面倒だし、ジュニアの歓迎会もあるし、

巫女’sの飲み代にリリー’sの飲み代で、僕の昨夜の稼ぎはなくなっていたのだ。

猿轡を再び外すと、兄さんが諦めきった顔で、「出す!」と言ったので、

そのまま、離陸準備をしている。つい、さっきまで飛んできた機体の客席最前列に

放り込み、ジュニアがその横に座った。

「で・・・誰が乗るんだ?時間もあるしな・・・」

「そりゃ~ね。まずは・・・美希センセイだろ・・・紗栄子さんい・・・」

悪たれ連の連中だけで、2回。巫女’sにリリー’sで、2回。

これが、コーパー席に座る。ボスことケビンが決定したことだった。

ジュニアは全フライトに勉強のためにのることになったのだ。

「チェックコンプリート。スタンバイOK!」外部点検を終え、

僕はキャプテンシートに滑り込んだ。

「OK!リクエストクリアランス!」

ケビンがタワーにコンタクトを行った。

「シン!OK!タキシング!ライトサイドクリアーランウエイ・・・」

「ラジャー」

僕は、左側の障害物を確認した。

「レフトクリアー。」

スロットルを注意深く押し出し、タキシングに入った。

滑走路エンドに近づくと、タワーから離陸許可が出た。

「ナンシーナイナー・・・・クリアーフォーテイクオフ!」

「テイクオフ!」

スロットルをテイクオフの位置に押し込み、この日で最後になるだろう

フライトのため、片手で操縦桿を握り、スロットルを右手で握っていた。

- 空の向こうに 7- に続く。


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僕たちに明日はあるのか VOL14 [ぼくたちのシリーズ完結編]

-空の向こうに 7-

悪たれ連と巫女’sを乗せるため、僕はグルグルと同じ行程を繰り返し、

「民間機のパイロットは大変だ」と少々反省をし始めた。

何故なら、「僕」と「ジュニア」は散々、「民間機」の邪魔をしてきたのだ。

ジュニアに至っては、「トイレ」に行きたくて、「エマージャンシー」を

出した。まあ、僕たちが編隊を組んで飛んでいる飛行機には、トイレは付いていない。

ちょっとその辺に停めて、「立ちションベン」は、出来ない。

まあ、「尿瓶」があれば、「そこに済ませて・・・」と言えるけど、

「窓を開けてポイ!」も出来ないので、降りるしかない。

そうなると、「僚機」として、飛んでいる僕も降りることになるので、

「あちゃ~混んでいる」と思えば、地球環境には悪いとは思うのだけど、

離陸待機中の旅客機には、無駄な燃料を使わせることになるけど、

ジュニアが、適当な理由を「理由」を付けて、「最優先」で降りる寸法だった。

「う~ん。こんなに点検した日はないよな・・・」

降りて、飛び立つ間、残燃料を調べ、ついでに機体のチェックを終わらせねば、

再び舞い上がることは出来ない。

「もう!これで・・・終わりなんだな。」呟いていた。

何しろ、その日乗り込んでいた機体は、最終点検をえ、トーイングされていった。

その時だった。

僕は少々の感傷を抱きながら、格納庫へトーイングされてゆく、機体を追う様に

歩き始めていた。

「だ~れだ?[黒ハート]

僕は、後ろからいきなり抱きつかれ、背中に当たる胸の膨らみに懐かしさを感じ、

でも、その瞬間、両手で目を塞がれている状態だった。

「ま・・・まさか・・・」

そこには、恥ずかしそうにモジモジしている優子と、背中にはミサがぶら下がり、

ついでに、さっきまで「吐いていた・・ハズ」の悪たれと未だ縛られている兄さんが

転がっていた。

「な・・」何でと言う間もなく、今度は僕の口が手で塞がれた。

「私たちも・・・乗せてくれる?」

「急に乗せろといわれて・・も・・・」僕は、ケビンを見ると、

「ノープロブレム!フライトプランは出してある。」

「で・・も・・・・」

機体は既に格納されている。

「セスナなら・・あるぞ!ついでに3時間分の燃料入れてある。行ってこい!」

「行ってこい!と言われましても・・・」

僕はフライトプランすら見ていない。渡されたプランによれば、ケビンが僚機を

操縦して、僕は訓練生として一緒にと言うより、後ろを飛ぶことになっている。

コースは、離陸後、トレーニングエリアへ飛び、そしてグルリと一周することに

なっている。

「この・・・くそ親父」と言いかけて、

僕は黙って頭をペコンと下げた。

本来なら、僕は「最後」は終えていたはずだった。

「ケ・・・じゃなくて、ボス!」

「どうした?シン!」

「どう考えても、この時間からのフライトだと・・・・」

「夜になるわな・・・・」

「そ・・そうじゃなくて・・・・」

「計器飛行での着陸になる。まあ、シンの腕前なら大丈夫だ!」

「だ・か・ら・・・・」

「ノープロブレム!ほら・・・」

ケビンが指さしたのは、僕が軍関係のプロペラ機なら、トレーニング

目的でなら、操縦しても良く、計器飛行もしていいと書いてある

まあ、車で言えば、「仮免許」みたいなものだろう。

「あくまでも・・トレーニングだ!まあ、シンだけなら俺は乗らないけど・・」

コーパイ席にのりこみながら、ケビンがウインクして見せた。

「あれ・・・これ・・・・」

僕とジュニアが「ソロ訓練」に挑んでいた時に、ケビンが操縦していた機体だった。

機体外周のチェックを終え、操縦席の左側。つまり、機長席に滑り込む。

「トレーニーを外して、これを付けろ!」とケビンは、僕にピカピカに光る

機長を示す4本の金色のモールがまぶしかった。

「け・・・ケビン!」

「ほら!さっさとやるんだ。チェックを終えたら・・・」

「ラ・・ラジャー・・・・」

僕はシャツの肩から、トレニーマークを外すと、金モールを付け、計器チェックを

終えた。

「オールグリーン!チェックイスコンプリート!」

「ほら!女神を迎えに行ってこい!ジェントルマンらしくな・・・」

笑いながら、ケビンは僕の肩を小突いた。

「女神?女神ねえ~どっちかと言えば・・・・」

その時だった。

操縦席ノドアをコンコンと叩く音がした。

「まだぁ~[黒ハート]」とケビンが言う「女神」の一人なのだろう。

ミサが顔を出したのだ。

「準備できたけど・・・本当に乗る?トイレ無いけど・・・」

「乗るの!でも・・・おトイレないの?[黒ハート]

「うん。浮いちまったら・・帰ってくるまで我慢してもらおう!」

「間に合いそうも無かったら・・・[黒ハート]

「バケツにする?」

「バカぁ~[黒ハート] 本当に心配したんだからね。」

「ご・・ごめん!」

「いいけど・・もう早合点は止めてね・・・[黒ハート]

「早合点?いや、あれは・・・・」

「あれは・・・ね・・・・[黒ハート]

ミサの説明によれば、優子の言葉足らずとちょっとした奇跡と

僕の許容量がオーバーしたらしい。

「と・・・とにかく迎えに行かないと・・・[黒ハート]

「そ・・そうだった・・・ケビン!迎えに行ってくる!」

そう言い残すと、僕とミサは手を繋ぎ優子が待つ事務所へ向かった。

どこにも、「死角」はあるもので、僕とジュニアがいつも隠れて一服する

場所へさしかかったとき、ミサが足を止め、僕とミサの影はひとつになった。

そして、僕の腕はすっかりホールドモード状態で、優子が待つ事務所へ向かった。

正直。僕は何と言っていいか判らなかった。

もおう、一回だけ飛べる嬉しさはある。でも、”ちょっとした奇跡”は、僕の操縦に

耐えられるのだろうか?とさえ、考える暇は残っていなかったし、ここまで飛んで

きたのだから、多分、手に負えなくなる前にケビンに操縦を託せば済む話だ。

事務所の前には、相変わらず”縛られたままの兄さん”が転がっていた。

この状態で、学校に連れて行けば、謝肉祭(袋叩き)が待っているのにと、思う。

現に、兄さんに対する僕たち以外の生徒の人望はない。

まあ、事あるごとに、竹刀や木刀を持って、僕たち以外の生徒たちを追いかける。

僕たちも、多分、100いや1000発くらいは叩かれているけど、

反対側に廻った今考えると、これほど僕たちの将来を心配してくれている

教師は多分いないとさえ思う様になった。

「お~い!そろそろ・・・いいんでないかい!ビール奢ってもらえなくなる!」

僕は事務所のドアを叩いた。きっと・・・いや、絶対に「見世物」にしようと、

隠れているバカたちを外へ出すことにしたのだ。

-ラストフライト 1へ続く-















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僕たちに明日はあるのか VOL15 [ぼくたちのシリーズ完結編]

-ラストフライト1-

泣いても、笑ってもと言うのは、こういうことを言うのかもしれない。

夕方から夜間にかけて飛ぶのは、これが初めてで、もしかしたら

もしかするかもしれない。

ケビンは、「ユーの腕だったら大丈夫!」とは言ってくれたけど、

本当に上がってもいいのか?

自問自答しながら、「乗れ!」と言われて、ついキャプテンシートに

乗り込んでしまったけど、疑問が渦巻く。

コーパイ席では、ケビンがてきぱきとチェックを行い、

ついでにクリアランスを要求している。

「OK!シン・・・GOだ。」

その声に釣られて、僕はスロットルを押し込んでゆく。

「レフトサイドクリアー」と僕が言えば、ケビンは

右サイドを確認して「ライトクリアー」と言う。

昼間の訓練では判らなかったけど、今、僕の前には

夕闇が迫る滑走路が続いていて、まるで誘蛾灯の様に

目の前に光のラインが続いている。

その美しさに見とれていたら、いつの間にかクリアランスが

出ていた。

「ランウエイヘッディング!テイクオフ!」ケビンが叫ぶ。

僕は我に返り、スロットルを更に押し込んでゆく。

「V1・・・・ローテーション・・・・」

ふわりと機体が持ち上がり、1地番星が輝く空に向けて操縦桿を引く。

「セスナ・・・・フライトレベル・・ヘッディング240・・・・」

トレーニング用の空域へ向かう。

「アイハブ。シン!女神が何か言いたそうだ。」ケビンガウインクして見せる。

「ユーハブ」僕はそう答えて、操縦桿から手を放し、ヘッドセットを外した。

「なに?」

「あのね。赤ちゃん」

「聞こえないよぉ~大きな声で言って!」

「あのね。赤ちゃんできた!」

「へっ・・・」

暫く。僕の思考回路は予期しない。いや、正確には「こんなところで言うか?」

もっと言えば、僕がはるばるここまで来た理由はそもそも・・・

そう。そもそも・・・優子が別れ話を切り出したから。

そして、僕は深い海の底に眠る貝になるべく、フェリーに乗りこんだら、

お節介ものジュニアと殴り合って・・・そして、今トレーニングは積んだけど、

口頭試験で失敗して、ライセンスが取れなくて、ワンモアチャンスもなく、

今、ラストフライトの操縦桿を握っているわけで・・・

僕の頭の中をここ最近の出来事が、グルグルと廻っているわけで、

でも、赤ちゃんが出来たってつまり、それが別れ話の原因だとすれば、

僕の子ではないのかもしれない。

枠の脳細胞は、そう結論を出した。

「よ・・・良かったじゃん!」

「あ・・・ありが・・・」

「幸せに・・・・」

そこへミサが口をはさんできた。

まあ、身さが口を挟んでくれなければ、相当な修羅場になっていたはずだ。

僕の頭の中は、すっかり、優子は別の誰かと・・・となっていたわけで、

僕と優子の間の子とは全くと言っていいほど、考えていないのを

感じ取っていたらしい。

「あのね。誰の子だと思うわけ?」

「そりゃあ人の子だよね。犬や猫じゃあるまいし・・・・」

そういった瞬間。僕の目の前には火花が飛んでいた。僕は後頭部を思い切り

殴られていた。

「あのね・・・」僕は頭をさすっていた。

「何よ・・・」

「端折られて言われても・・・判らないよ!」

ミサの説明によれば、優子のお腹の中の子は、正しく僕の子だという事。

僕がまだ。退学届けは出したけど、高校生なので、優子は一人で産んで

育てるつもりだったこと。

それをみんなに言わないものだから、横浜のママをはじめとする

お姉さんたちが、優子に真意を聞き出し。僕はそこのところは、違うと思う。

強引に口を割らせた方が正しいと思ったけど、黙って聞いていた。

「な・・・なんで・・・・ど・・・どうして・・・」

そういうのが精一杯だった。

これで、僕の中ではすべての疑問が繋がった。

佐々木クンが美希に言われた。「誤解」そして、今ここに集結している

社会関係奉仕部の面々と巫女’s。そして、ついでに兄さん。

「優子・・・本当?」

「うん・・・・迷惑なら・・・・」

「迷惑なわけないっしょ・・・パパか・・・いいね。嬉しい!」

僕には本当の家族は今までいなかった。

僕は夢を見ているのだろうか?

思い切り頬を自分で抓ろうとした瞬間。

僕の後頭部はあり得をしない方向。つまり、さっき助け出した

兄さん事。学年主任に思い切り殴られて・・・・

「痛ぇ~」となったわけだ。

「ケビン!アイ・・・ハブ!」

「OK!ユーハブ」

僕は、トレーニングエリアからの離脱許可と同時に出たナイトクルーズへの

コースに向けて、優雅かどうかは知らないけど、嬉しさとちょっとの不安。

そして、地上に降りたらの手厚いであろう袋叩きを覚悟しながら、バンクを切った。

-ラストフライト2-へ続く
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僕たちに明日はあるのか VOL16 [ぼくたちのシリーズ完結編]

- ラストフライト2 -

トレーニングエリアから、クルーズモードへ入り、ケビンに操縦を交代する。

この辺まで来ると、特に、民間パイロットも、軍のパイロットたちも、

我先に着陸しようとやってくる。

それでなくても、トレイニーである僕の存在は彼らの妨げになる。

確かに、この時間は、ジェット機たちが、空を駆け巡り、その後流を喰らえば、

僕が操る腕では、墜落するのが関の山だ。

ケビンの操縦を横で眺めていると、いずれ僕もこのくらい出来る様になるのか?

いや、そんな日は来ない気がする。

「シン!ファイナルアプローチだ。ユーハブ!」

「へっ・・・あ・・・アイハブ!」

僕に再び操縦を代わった。無鉄砲としか言えないケビン。

「へっ?」

兄さんが小さく口を開いた。

多分、ケビン以外は、生きた心地がしないかもしれない。

昼間の空港は、もう慣れていて普通の顔をしているのだけど、

僕の目の間には真っ暗な世界にまるで空を舞う蛾をを誘っているかの様な、

ライトを信じ、そして、計器だけを頼りに降りてゆくしかない。

「シン!ノンハードライディング!」

僕の手の中は、汗がびっしょりで、喉はカラカラだ。

「ランウエイ、インサイト。ランディング」

僕の心臓は爆発しそうなくらいだ。

心の中で、「いいか。今日はコウノトリ。コウノトリの様に降りるんだ。」と

スロットルを絞り、機体姿勢に注意をとことん払い、今までこんなランディングを

したことはないと言えるくらい。ふんわりと着陸をした。

気が付けば、誘導路を経由して、いつの間にか駐機場まで帰ってきていた。

余談になるのだけど、その時。コントロールタワーで眺めていたのは、

僕とジュニアを落とした試験官だったそうだ。

エンジンを止め、最終チェックを終え、僕は機外へ出た。

まず、初めに降りてきたのは兄さんで、手を貸す振りをして、そのまま

地面と仲良くしてもらった。

次にミサを抱きかかえて降ろして、最後に優子を抱きかかえて、そのまま

事務所へ歩いてゆく。

「ねえ・・・重くない?」

「全然・・・でも・・・ちょっと太った?」

言い終えるか終えないかタイミングで、いいつの間にか囲まれていた

巫女’sにボコられる羽目になった。

すでに、地上の奴らは別ルートで、「驚愕の事実」を知らされていて、

僕を袋叩きにする準備はできていたらしい。

優子を降ろした瞬間。僕はシャンペンシャワーならぬ。コーラシャワーを浴び、

気が付けば宙に舞っていて、そのまま落とされボコボコ状態近くになりかけた瞬間

「てめぇ~ら。アタシの旦那に・・・」

その一言で、僕は解放された。

「さあお祝いだよな・・・部長!」と佐々木クンが何かを企んでいる。

「だよな・・・と言いたいところだけどさ、バイトあんだよ!」

「いつまで?」

「もうちょっと・・かな・・・あと。10日くらいか・・・多分。」

「うんうん・・・死ぬまではたらけ!パパだもんな・・・・」

「あ・・あのな・・・・」

「そこで飲ませてもらうからいいんだよ・・・・ジュニアも仲間呼ぶって・・・」

「も・・・もしかして?」

「決まってるだろ!お前の・・・オ・ゴ・リ・・・」

「げっ!」

「ミーもな。」ケビンも来る気満々らしい。

「勝手に・・してくれ・・・・」

そこへ・・・・

「Q・・・・この子ったら・・・・」

「げっ!マ・・ママ・・・」

横浜のママまでやってきていたとは知らなかった。

「優子に聞いたの・・・おめでとう!」

「あ・・・し・・・知っているわけ?」

「当たり前でしょう!」

その日の夜。僕がバイトしているクラブは、「関係者以外お断り」状態になり、

ついでに、僕とジュアを落とした試験官から、「コングチュレーション!」と

何かのカードをもらった。そのカードの存在が僕が判るのは、先の事。

クラブの中はお祭り騒ぎで、いつもと違うのは、優子が手にしているグラスには、

アルコール類が一切入っていない。

兄さんは僕たち悪たれ連の仕業にかかれば、赤子の手をひねるより簡単に、

スペシャルカクテルで早々に潰しておくことにした。

「で・・・どうするんだ・・・パパ!」

「そうねえ~金は稼がないといけませんわな・・・」

「学校は?」

「行くよ!ジュニアの面倒も見なければいけないらしいし・・・」

「ああ・・・」

ジュニアは、兄さんが東京に電話をして、入学が決まり、叔母さんが、

僕たちの学校のそばに偶然住んでいるので、そこから、通う事になり、

まあ、学校にとっては厄介者が増えると言うことで、社会関係奉仕部預かり

これが条件なのだから、仕方がない。

まあ、見た目だけで言えば、きっと僕たちの「ナンパ大作戦」では活躍を

してくれるハズ。まあ、僕はこれを機会にホステス養成学校だの、

売春婦養成学校だのそして、偶に相手にされるはずもないであろう。

お嬢様学校とかで行ってきた。ナンパ大作戦からは引退させてもらおうと思う。

何しろ、僕はパパになるわけだから、お金を稼がなくてはいけない。

「でさぁ・・・佐々木。頼みあんだよ!」

「あん?」

「部長引き受けてくんねえか・・・俺。バイトしないと・・・」

「みんなで土方やればいいじゃんか・・・」

「ノーサンキュだな。でも、ありがとう。」

僕は佐々木クンに久しぶりに頭を下げた。

-悪魔との取引 VOL1に続く -





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僕たちに明日はあるのか VOL17 [ぼくたちのシリーズ完結編]

- 悪魔との取引 VOL1 -

僕は忘れていた。いや、忘れようとしていたのかもしれない。

あれは、いつの日だっただろう。

僕が、親戚中で一番嫌いな親父の妹。

まあ、向こうも嫌っていたのであろう。この家には、僕と同じ年の

息子がいるが、僕と同じでアウトロータイプ。

でも、僕が油なら、向こうは水。しかも、僕と同じ名前だから、

余計に腹が立ち、殴り合いを顔を合わせる度にやるわけだが、

いつもながら、理不尽に怒られるのは僕だけだった。

その訳がわかったのは、僕が小学校4年生のある日だった。

僕の母親だった人が家を出て行った。

しばらくして、見覚えのある。そう、母方の祖父の会社で、

働いていた職人さんたちが、母親の荷物を取りに来ていた。

その後、母親とは2回しか会っていない。

不思議なもので、自分の気分次第」で、僕を殴ったりして、

ついでに、やりたくもない日舞をやらされ、僕は多分。

人間の子供ではなく、まるでお人形ごっこのお人形さん。

飽きられたので、捨てられたというわけだ。

その頃、父と呼ぶ人は。一番災難だったのだろう。

僕の記憶の中には、父という存在は限られていた。

運が良くて年1回。運動会の応援と父親参観くらいの記憶

偶に休みの時に年数回。どこかへ連れて行ってもらったり、

後は、毎日の様に午前様だっただったので、偶に一緒に

お風呂へ入るくらいの記憶しかなかった。

そんな父が僕が閉じかけている殻を破ろうとしても、

それはそれで無理がある。

そこへ、先に出てきた叔母いや、僕とっては敵であるのだが、

何かのはずみ。そう確かまた、殴り合いをしていた時に

「貰われっ子」のくせにと僕だけを殴りつけてきたのだ。

それを聞いていた別の叔母が、相当怒っていたから、

「そうなんだ」と・・・・

それから、僕は子供らしさを捨てて、悪魔と契約をしたわけだ。

悪魔との取引は、簡単なことだった。

まあ、最後は僕は僕の命を持って、その対価を払うことになるのだろう。

まず、最初のターゲットは叔母だった。

叔母の旦那、つまり、叔父なのだけど、僕が願ったその日。帰らぬ人となった。

他の親族。例えば父の兄は、旧国鉄マンから、父の会社へ。

父の末妹の叔母とその旦那で樺太からの引揚者だった叔父も、

父の会社で働いていた。

でも、その時、亡くなった叔父は、親戚筋が経営していた鉄工所の

一工員に過ぎなかったので、生活は大変だったらしい。

まあ、父のところへ来ることがあると、父は機嫌が悪かった。

次に、願ったのは僕と父を捨てた母親への復讐だった。

こちらは浮気相手であり、母の再婚相手共々、「死んだ」という

風の便り。いや、正確には僕の血が唾がっている本当の従弟の

情報だったので、間違いはない。その従弟は葬式に参列したらしい。

ついでに、おまけを悪魔は付けてくれた。

僕が産まれたことすら憎んでいた本当の祖母まで、あの世へついでに

送ってくれたらしい。

そして、もうひとつ。僕は僕を産んで捨てた母親への復讐を願った。

「殺さなくていい。出来るだけ苦しめて苦しみだけを与えて・・・」

僕の願いは叶えられることになった。

そして、最後の願いになった。

「死にたいんだ。」僕は悪魔に頼んだ。

そして、ある日。僕は入水自殺を図ったのだけど、偶然。いや、必然なのか

僕は通り掛った優子のお父さんに助け出され、そして、僕の体の中には、

不思議な力が宿すことになったのだ。

-悪魔との取引 VOL2へ続く-
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僕たちに明日はあるのか VOL18 [ぼくたちのシリーズ完結編]

-悪魔との取引 VOL2-

事実は小説より奇なり。

この言葉は、誰が言ったのか?僕は知らない。

いや、興味すらなかった。

偶然だったのか、それとも必然だったのか判らない。

途中まで、悪魔は僕の願いを叶えるべく、動いたはず。

そうでなければ、悪魔は僕からの「対価」を受け取れない。

「はず」なのだ。

そう言えば、この島へ渡る船の甲板から飛び込もうとしたら、

ジュニアの邪魔にあったわけだし、僕はきっと自ら死を選ぶ

そんなことすら、出来ないと考えたほうがいいのだろう。

僕はぼんやりと考えていた。

まあ、これからは、当面。「死んでいる暇」はなさそうだ。

優子のお腹の中には、「小さな命」が宿ったわけで、

「魔女の巣窟」じゃなかった。鎮守の森で、巫女’sの面々に

育てられる「我が子」の行く末だけが、ちょっと恐ろしいだけだ。

「う~ん。男だったら・・・」

「何、独り言を言っているんだ?」

「あのさ!佐々木。ヤローだったら・・・恐ろしくない?」

「何が・・・」

その瞬間、僕の目かから星が飛んだ。

「い・・・いてぇ~」

「男の子だったら・・・いらないわけ?」

優子が僕の頭を振り回したバックで殴ったわけだ。

「あ・・あのね。考えてみて!お‥俺の子だよ!」

「そうですけど・・・何か?」

「男だったら・・末恐ろしくない?」

優子は腕を組んで考え始めた。

巫女’sの面々に紗栄子に美希のリリーズも同じ様に考えている。

「あのさ!男の子ってママに似るっていうわよね。」

「だと・・・いいですけど・・・あっ!」

僕は気が付いてしまったと同時に口から出ようとした言葉を

飲み込んだ。

僕に似ようが、優子に似ようが・・・

ついでに言えば、他の巫女’sの面々のお腹が膨らむこともあるわけで、

リリーズも然りだ。

何しろ、兄さんに言われているはずの、「否認」じゃなくて「避妊」は、

気を付けていない。

まあ、それは今は良いとしても、問題は・・・「誰が産んでも恐ろしい」と

いう事に違いはない。

いずれに似ようが、どっちみちカラスの子はカラスで、ナマズの子はナマズ。

カエルの子はカエルにしかならない。

ここまで来たら、「笑って腹を括ることしかない」だろう。

「お前ら!集合」兄さんこと学年主任で、引率責任者が呼んでいる。

悪たれ連は、帰りも船で先に帰ってゆく。

巫女’sも仕事があるので帰らねばならない。紗栄子も「お店開けなきゃ」と

優子も先に帰ってゆく。優子とミサはとりあえず、横浜のままの所へ、

「緊急呼び出し」に答えねばならない。

肝心の僕は。まだ2週間ほど帰らない。そうなると、「遠征中」という事になり、

引率者と言うより、監視担当という事で、美希も残ることになった。

悪たれ連の面々は、僕とジュニアが用意した「ちょっとしたお土産」を

大事そうに抱え、船に乗り込んでゆく。

お土産の中身は、秘密だ。まあ、飲んだら大変なことになった。

吸血鬼は、生き生きとした肌つやを手に入れ、僕は赤マムシとユンケルの

「いつも」のセットで生き延びていたからだ。

-帰京VOL1に続く-






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僕たちに明日はあるのか VOL19 [ぼくたちのシリーズ完結編]

こんにちわ。過去の世界から再びやってきました。

僕こと委員長こと部長とか呼び名が一杯ある「僕」です。

「お前は将来。碌なヤツにならないだろう。」と見限られて数年。

いや、皆様のいる世界で言えば、数十年経っているそうです。

今の僕であった男は、見る影も、覇気も無くなってきていますね。

やはり、学校の先生が言っていた「将来碌なヤツ・・・」は、

当たっていたのかもしれません。

今の僕は、「地球と喧嘩したら・・・負けたぁ~」とか

やはり、「馬鹿は死ななきゃ治らない!」のでしょう。

多分、現世の僕=つまり、未来の僕の腰が思わしくないのは、

半分以上、僕のせいかと思いますが、それ以外もあったはず。

未来の僕は、「タイムマシーンがあったら、自分自身を殴ってくる」とか

そんなことを言っているだけで、やはりバカです。

さて、お話は昭和の世界に戻ります。ちなみに、僕とジュニアが

ライセンスを取れなかったのは、散々「民間航空」の皆様の邪魔をした。

まあ、邪魔=安全をないがしろにしたと言う判断だと聞きました。

「撃ち堕とされなかっただけまし!と思え」と言われたくらいです。

それでは、どうやら開演のお時間がやってきた様です。

- 帰京 1 -

僕は戸惑っていた。

隣でアホの様に喜んでいるジュニアは、暫く放って置いても

罰はあたらない。はず・・・

僕が、死に場所を求めて船に乗ってから、色々な事が起きた。

そして、僕は何の因果なのか考えるのは、やめにして、

横に座っているアホを、責任を以て「護送」するのが当面の

役目だ。

僕たちの学校は、脱落者が多い。

例えば、「こんなバカ校に居たら、人生終わる」そうほざいた奴は、

どうしてだか僕には見当もつかないけど、コンクリート製の古い階段で

落下して、コンクリート製の壁に突っ込んだ。

確かに、「こんなバカ校」には、来なくて済む様になったけど、今では

身体中を包帯でグルグル巻きにされ、もうちょっとで「別の理由」で

人生を終わるところだったみたいだ。これは、担任から知らされた事で

事実らしいが、阿保らしいのでこれ以上の詮索は不要だと僕は思う。

まあ、その頃、いきなり数人の顔が、学校から消えていて、僕のクラスは

「少し」隙間ができたらしい。

音信不通になったやつもいる。

確か、内申書と入学試験の結果が数値化され、取り合えず

「トップで入学。総代にもなったはずだが、気が付いたら、

学校中どこにもいなかった。聞いた話だけど、浪人して

もう一回受験する。そんな奴は、とある公園の大きな木に、

「逆さま状態」で、素っ裸で、「大事な所」だけ、「前バリ」で

隠されていた・・・・らしい。

ここで「前バリ」を知らない人に説明しておくと、〇活〇〇ノで

「映っちゃったら、映倫通らない。」そんな所を隠すものをいう。

また、ある奴は、電車のホームから落ちて行ってしまったけど、

そのホームは、その時間帯には、電車は入らないのだけど、

窓に鉄格子のある病院に入院して、それっきりの奴とか、

でも、一番多いのは、「こんなバカ校で留年する奴見たこと」と

言いかけ、佐々木クンが睨んでいたので、「お前は素行面でだろ!」

まあ、その一言が原因で、入学早々殴り合いをしていたし・・・・

意外だったのだけど、「こんなバカ校」でも、年間数十人が、

「成績不良による・・・なんちゃら・・・」でいなくなってゆくのだ。

だから、ジュニアみたいなカモ。じゃなかった。転校生は、学校にとって

また一人、金づるが入学したことになる。みたいだ。

ジュニアが転校してくるために受けた「入学試験」は、僕たちの定期試験が

そのまま、使われると言う有難い情報を、大量の泡盛を献上して、酔っ払った

兄さんから、聞き出して、「終わったら忘れていいから」と、マークシートの

問題だったので、上から番号を覚えさせておいた。

「なあ・・・シン。じゃなかった・・・ブッチョウ!」

「あん?どうした?」

「カワイイコ・・いるだろ?」

「カワイイコ・・・・・あ・・・女子?残念だけどな・・・ヤローばかりだ。」

ジュニアは、現実に引き戻され落ち込んでいく。まあ、無理もない話だ。

「ジュニア!悪い事ばかりじゃない。毎日・・ナンパ・・いや、ガールハント」

「ん?」

「エブリディ。アフタースクール。ガールハント!OK?」

「イエース・・・」

その時。僕のお尻の肉は、ちぎれてしまうのでないか?そう感じるくらい。

美希の手で抓られていた。

「そんな暇ないでしょ?働くんでしょ・・・」

「そうだった。」

僕はパパになるわけだから、働いてお金を貯めなければならない。

「ジュニア!ソーリな。ササキに言っておくから、ササキたちとガールハント!」

「OK!ゴ・・・ゴ・・・・ゴシュウ・・・あれ?」

「何が言いたい。」

僕は話題を代えることにした。このままでは、機内で乱闘騒ぎになるからだ。

ジュニアは、サエママのイトコの家に住むことになっている。

「あっ・・・」

「ジュニア!せ・・・・制服・・・」

「ホワット・・・」

制服を僕は手配を忘れていた。いや、正確には忘れていたわけではない。

「大丈夫!ちゃんと・・・サエママが手配していたわ・・・」

「本当!良かった・・・・」

「学校に届いているので、到着次第学校に行かないとね・・・」

「お・・・俺はいいよね?」

「逃げれると思う?定期試験1回受けてないじゃない・・・・」

「え~え・・・」

「えっじゃないわ。追試。これで落第点だったら・・」

「だったら?」

僕は学校を続けるべきか悩んでいた。

横浜の楊ママは、優子から聞かされていたらしく、慌ただしく飛んで来た。と

そう思っていたら、いきなり平手打ちを喰らったので、反対なのか?と

思ったら、そうでなく、僕がやろうとしたことへの、制裁だったわけで、

そのまま、息が出来ないくらい楊ママの棟に抱かれた僕は、もうちょっとで

窒息死する寸前だった。

優子も学校を続けろと言っていたし、楊ママもそうしろと言う。

「そうそう・・・紗栄子がね。毎日。働かせるって・・・」

「そりゃあ~働くけど、お祓いもあるんだよ・・・」

「学校もでしょ?」

「うん。頑張んないとね・・・俺・・・パパになるんだし・・・・」

「そうね」

その時。ポンと音が鳴り、シートベルト着用のランプが点いた。

- 帰京 2 -へ続く






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僕たちに明日はあるのか VOL20 [ぼくたちのシリーズ完結編]

<ここまでのあらすじ?>
主人公である「僕」は、都内にあるであろう。

そんな高校にしか受からなかった。

まあ、それは仕方がないことで、「僕」が卒業した中学校は、

「腐ったみかん」は、廃棄出来ないのなら、「一つにまとめておけ」と

言われた。あちらこちらの中学校から、放校処分(表面上は自主転校)。

それを喰らい。集められた。まあ「お先真っ暗」な学校。

最上級生は、薬物中毒でラリっていて、その他の多くのアホたちは、

何度直されても、蹴っ飛ばして穴を開け、取り合えず「塀」という名の

檻を抜け出し、吉〇屋の牛丼を買いに行ったり、制服のままでも

煙草を売ってくれる。優しい?かどうかは知らないけど、

多分、僕たちを怒らせるのが怖いからか?いいや・・・

触らぬ神に祟りなし。言い換えれば、お金には「色」が付いていない。

商売になればそれでよい。タバコ屋のおばあちゃん達の供給のおかげで

僕たちのほとんどは、スモーカーになっていた。

授業中は、Aチャンとかの曲が学校放送から流れ、最上級生たちは、

校庭の片隅で、先生をリンチしていたり、バイクを無免許で乗り回したり、

それが、ある暴走族を誕生させたり・・・・

碌な学校ではなかった。そんなわけで、そんな学校でちょっと

目立ってしまった「僕」の内申書に書かれていたであろうこと

ぐらいは判る。

成績は、ほとんど5か悪くても4だったので、学科の成績は悪くはない。

けど、学校生活面で言えば、「協調性に欠ける」とか碌なことは

書かれていなかったはず。

まあ、それらの情報は、高校入学式当日に、担任から教えられたことだから

間違いはないと思う。

何しろ、入試成績は満点。

でも、先生たちは、「一応合格」は出しておいて、他高へ行って欲しいと

願っていた一人だったとも教えられたのだ。

ある先生じゃなかった先公は、

「同じバカなら。オツムも悪い方が救いがあった」と

ほざいたから、しっかりと「仇」は打たせてもらった。

止せばいいのに、「バカ」の集団を相手に喧嘩を売ってきたので、

近所の廃業する床屋で飼っていた。ピラニアを貰ってきて、

ボコるのも面倒だったので、体操部が使っていた自転車のチューブで

グルグル巻きに縛り上げ、そのまま学校のプールに投げ込み、

丁寧に運んできた。お魚さん(ピラニア)を放って・・・・

「じゃあ!」と僕たちは帰ったわけだけど・・・・

その翌日から、その先公の席は空席になり、その後の事は判らない。

「コンコン製(コンドーム)水爆弾」の場合は、担任が悪い。

僕たちが「男子校の牢獄」に繋がれた雑居房は、お隣の病院と細い路地で

仕切られており、ちょっと窓から顔を出して、右を見れば

僕たちが永遠に立ち入りを許されない・・はずのナースの寮があり、

出勤していくナースに夜勤明けのナースと行き交う道。

「いいか!お前ら・・・間違っても、看護婦さんたちに水爆弾ぶつけるな!」

担任の先生は、僕たちの先輩で、つまり、卒業生。

「やるなと・・・言われればねえ~」と委員長こと「僕」の指揮のもと、

他のクラスにも伝達され・・・・

「制作班」「搬入班」「投下班」と分かれて・・・・歴代にわたる

攻防が繰り広げられることに・・・・なった。

まあ、学校内で具合が悪くなったり、ケガをしようものなら、

お隣の病院に担ぎ込まれるし、僕たちの仲間の佐々木クンは、

止めておけばいいのに、どこかでもらった。「淋ちゃん」の治療で

隣の病院へ行ったために・・・・辱めを受けたわけだけど・・・・

在校生たちは、「たとえ盲腸になっても、足を折っても行かない」と

心にきめてはいたけど、毎年数十人ほどが、その願いもむなしく、

仕返しの的になっている。

あの時の担任の有難いお言葉は、先輩から後輩への忠告だったのだ。

「退学予定者ご一行」は、停学も特別なお休みとしか思わない。

僕たちは、ひょんなことから、学年主任の実家へ送り込まれた。

まあ、その辺からは、「高1・・・夏休み編」でも読んでもらえば

判るだろう。

僕は宿敵であった学年主任の妹と何故か、結ばれ・・・・

暗かったはずの僕の高校生活は明るくなったんだ。

「おままごと」と言われても仕方がない。そんな生活から、

宿敵だったはずの学年主任こと兄さんは、僕を卒業させるため

僕たちに「社会関係奉仕」を叩きこんだ。

そこで正式に結成せれたのが、「悪たれ団」表向きは「社会関係奉仕部」

僕たちの入試の平均点は、270点くらい。留年して同級生になった

佐々木クンも同じくらいの出来だから、授業の要点だけまとめてもらえば、

僕たちは授業に出なくても、それなりの成績は取れる。

まあ、仲には「多少のバカ」は居たけど、兄さんの90%のサポートと

10%の一夜漬けの努力で僕たちは学年上位組に居た。

学校からは、「在学中。表彰状か感謝状の一枚でも貰ってこい!」と

それで卒業させてもらえるのなら、牢獄にしか思えなかった男子校も、

悪くななかった。

僕はおっちょこちょいなのだろう。人の話をちゃんと最後まで聞かない。

だから、僕は沖縄へ向かうフェリーに乗り込んだ。

別に沖縄に行きたいわけでなかった。どこか途中。そう途中。

なるべく、深い海の底で永遠の眠りに入ろうと思っていたんだけど、

ジュニアに邪魔されて、船上で殴り合って・・・

そのまま、ジュニアと飛行機の操縦を習うことになった。

そして、ある日。僕は「パパ見習い」つまり、お腹の中に・・・・

- 帰京 2 -

「なあ!シン・・・」

ジュニアがタラップを降り損ない数段飛ばして、地面になんとか着地したのは、

ほんの1分ほど前だった。

「あん?」

僕は笑いを堪えるのが必死だった。相変わらず、セスナでの訓練の時といい。

折角、ガールハントした女の子をエスコート中に店先の階段でも・・・

まあ、笑いを提供してくれてはいるけど、こいつ一度病院で診てもらった方が

良いんでは?と思う。

「ここ・・・日本を代表するエアーポートだよな・・・」

「一応な・・・・」

「ナリタ・・だっけ・・・インターナショナル・・・・」

「なんだ?もう・・・ママのオッパイ恋しくなったか?」」

「ノー・・・・」

「なら、いいじゃん・・・ウエルカム!トウキョーパラダイスだ。」

僕と美希そして、ジュニア」が連れ立って到着口へ歩いていると、

屋上のフェンスには、どこかの・・・・

「なあ!あのモンキーたち・・・・」

ジュニアが指さしたところには、暴走猿とその調教師じゃなくて、

兄さんが迎えにきていた・・・・

「嫌な・・・予感がする・・・寒い・・・か・・・帰っていいかな?」

「ダメ!学校へ出頭させないと・・・・」

「なんで・・・・」

「無断でお休み沢山したでしょ・・・・」

「どうせ‥留年なら、丁度いいんで学校辞めるし・・・」

「欠席にはなってないわね・・・部活動の一環。但し・・・」

「た・だ・し?・・・」

「そう。あの子たちも受けてないんで、全員で試験ね・・・」

「げっ・・・・あいつらも・・・・」

ジュニアはキョトンとしていた・・・無理もないので、簡単に

そう・・・簡単に説明しておくことにした。

「ジュニア・・・ちょっと・・・ミミ貸せ!」

「ミミ?・・・あ・・・あの子なら貸せないよ!別れたし」

「そっちのミミじゃなくて・・・イヤーのミミ・・・」

メンドーなので、ジュニアの耳を引っ張った・・・

「あのな・・・・」

僕は美希が学校の先生であり、以前、エロ教師の標的になっていたのを

救い出し・・・まあ、その前に一線を越えていることは、説明を

するまでもなく、ジュニアは理解しており、その辺だけは説明を省いて・・

僕たち悪たれ団こと「社会関係奉仕部」の副顧問で、僕が東京に居る時は

美希の家に大抵居て、だから、夜に僕に電話すると機嫌が悪くなったり。

その辺もおいおい教えることにして、多分、護送用のバスが来ているので、

大人しくそれに乗って学校へ行かなければならないだろうと教えた。

到着口を出ると、猿公ともいえる姿を見せてくれた仲間たちに次々に

背中をぶっ叩かれ・・・・どんどん送られてゆくと・・・・

「おかえりなさい。」優子が待っていた。

「さあさあ・・・ええと・・ジュニアクンは、・・・」

「はい!僕が・・・」佐々木クンが手を挙げた。

「じゃあ・・・みんな・・・いいわね。合宿は今週いっぱい。来週試験ね!」

「げっ・・・」

「げっ・・じゃない!これ・・おまえの分。しっかり覚えてこい」

学年主任で元になるかと思っていたけど、やっぱり兄さんのままになるんだろう。

兄さんが僕に要点がはいいている紙袋を渡してきた。

「来い?それに・・・今日は月曜日じゃ・・・」

「試験は来週月曜日から・・5日間。校長も立ち会うからな・・・いいな!」

「はい!」

僕たちは返事をした。

「じゃあな・・・ジュニアは預かっておくから・・・」

「あ・・・佐々木!これ!ジュニアの住所・・・」

「了解!ついでに・・・東京案内しておく・・・」

「べ・・・勉強もしておけよ・・・洒落じゃすまない気が・・」

「ああ・・・じゃあ!」

「では・・・優子!行きましょうか・・・・」

「はい・・・」

「ど・・どこ・・へ?」

「まず・・・横浜のママの所でしょ・・・そこにみんな集合しているんで・・」

「べ・・ベンキョー・・しないと・・・」

僕に選択肢も拒否権もないらしい。

- 帰京3 に続く-








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僕たちに明日はあるのか VOL21 [ぼくたちのシリーズ完結編]

- 帰京 3 -

「お・・・お前ら!ちょっと待て!」

帰りかけた。いや、正確に言えば、赤子の手をを引っ張るみたいに

ジュニアを誘導し、ジュニアが散々あちたこちらで迷惑をかけた

大量の荷物を分け合って持って歩く一行を止めた。

何故なら、僕はこの後、横浜に連行され、中華街の楊ママこと横浜のママに

それなりに怒られる。同行する面々を考えれば、味方は多分居ない。

いや、仮に僕の味方につこうとした時点で、細切れにされて中華の材料に

されないまでも、それなりの「無言の圧」は喰らうはずだ。

しかも、僕はどの顔で優子の運転する車なのか?巫女’sの運転する車で、

横浜までの道中を過ごせばいいのか判らない。

強いて言えば、いっそのこと「この飛行機堕ちてくれねえかな?」とさえ

思ったのだ。

僕の頭の中のコンピューターは、瞬時に計算をして、仲間たちも道連れに

する様にと答えを出したのだ。

「なあ!お前ら。ジュニアの歓迎会やらねえか・・・中華街で・・・」

「いいねえ~」との声が一言上がるか・・と思ったのだけど、

完全に無視をされた。

いや、佐々木クンが送ってきた合図によれば、先に根回しをされているらしい。

僕は囚人が引き立てられるかの如く、駐車場まで連れて行かれ、優子が運転する

車の助手席のドアが開けられたので、そこへ乗り込む。

この後、駐車場から出ていく。学校のボロバスが見えた。

多分。窓にしがみつくように外を見ているのは、ジュニアだろう。

運転するのは、ミサ。紗栄子と美希。そして優子は僕の後ろに乗り込んだ。

「み・・・みんな・・・行くわけ?」恐る恐る僕は尋ねた。

ママだけなら何とかなるかもしれないけど、巫女’S&リリー’sまで揃うのは

正直阻止したい気分だった。

車は首都高を抜け、横浜へ入ってゆく。中華街近くの駐車場に入った。

駐車場には、あの・・・糞ったれのマネージャーが僕を待ち構えていた。

「Q太郎坊ちゃま!」

「坊ちゃまだけは・・・んっぐ!」

僕は後ろから、美希と紗栄子に羽交い絞めにされ、ついでに口を塞がれた。

「お坊ちゃま・・・このたびはおめでとうございます。そして、おかえりなさい。」

「んっぐんぐ・・・んっぐ・・・」(放せ!この野郎をぶちのめすんだから・・・)

「優子お嬢様もご懐妊おめでとうございます。」

優子はモジモジしながら・・・赤くなった。

僕は羽交い絞めにされたまま、優子を指さして、

「んっぐんっぐんっぐ・・・んっぐ」(赤くなってやんの・・・)

でも、言葉にならなくても判ったみたいで、僕のみぞおちには鋭い一発が入った。

「んっげ・・・・」

「お坊ちゃま・・・皆さん。奥様がお待ちですので・・・・」

「そっちは・・後。腹減った・・・」

「いいえ。奥様が先に・・と仰っておりますので・・・」

楊ママが待ち構える。オフィスに僕と優子は通され、その他の

巫女’sとリリー’sは、VIPフロアーに案内されていった。

「Q・・・この子は・・・・」

一発喰らうかと覚悟する間もなく、僕は楊ママの胸の中へ

このままだと・・・きっと窒息死する。そう思った瞬間。

僕は息を吸う事を許された。

「全く・・・この子たちは・・・」

楊ママのお説教が始まろうとしていた。

「この子たち」つまり、怒られるのは僕だけではない。

「やった・・・」僕はつい。叫んでしまった。

「Q!」

まあ、楊ママからのお小言は、20分ほど続いたけど、

僕のお腹が「「ぐうっ~」と鳴った。

「まだ?」

「反省しているの?」

「お・な・か・す・い・た・・・・」

「判ったわ・・・ご飯の前にシャワーを浴びてらっしゃい。」

机の上のボタンを押すと、新しい服に靴を持ったマネージャーが入ってきた。

ついでに、もう一人が押してきたワゴンには、小腹を満たすべくのお茶と

飲茶が乗っていた。

「本当にパパになれるのかしら・・・成長を感じないわね。でも・・」

楊ママは僕ではなく、優子に向かっていった。

「優子!」

「はい・・・」

「おめでとう!でも・・・もう駄目よ!」

「何を・・・・」

「この子の操縦する飛行機!大事にしなさい!」

「は・・はい。」

僕がシャワールームに消え、シャワーを浴びて出てくると、

優子も新しいチャイナドレスを仕立ててもらったものに

着替えていた。

義替えを終わり、鎮守の森から「はるばる」運ばれてきていた神泉の入った

水筒を受け取るとゴクゴクと飲みほした。

「ねえ?」

「なあに?」

「あのさ・・・この後・・・ご飯食べるだけだよね?」

「そうだと思うけど・・・」

「何で・・新しい服に着替えているんだろう?」

「さあ・・・・連れてこいと言われただけだから・・・」

「ごはん・・だけ。食べさせてくれればいいんだけど・・・」

そこへドレスアップしたミサが呼びに入ってきた。

ミサが着替えているということは、巫女’sそしてリリー’sも

着替えていることを意味する。

「ねえ・・・もしかして・・・」

「みなさんお待ちですよ・・・」

「皆さん?という事は・・・」僕は考えた。

本能としては、「このまま逃げろ!」という信号」が出ている。

「ねえ。あいつらくらいだよね。居るの・・・」

「いいえ・・・他にもゲストが・・・」

「げっ・・・・」僕はママの意図を理解した。本能は正しかった。

「優子・・・見世物になる気ある?」

「えっ・・・ま・さ・か・・・・」

「その・・・まさかみたい。」

- 鎮守の森へ・・・1に続く -






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僕たちに明日はあるのか VOL22 [ぼくたちのシリーズ完結編]

-鎮守の森・・・1-

いくら、学生だと言っても・・・

いくら、飲み過ぎで、未成年の分際で二日酔いでも・・・

いくら、「今回は試験勉強しないとヤバイ」と言っても・・・

朝は必ずやってくる。

その朝。僕は抜け出した寝床へ戻るのが、間に合わなければ、

風呂場へ行く。

別棟になっている。優子と僕だけの部屋で朝を迎えても、

決まった時間に僕は風呂場へ行く。

この鎮守の森には、僕が「神泉」と呼ぶ。水が湧き出ている。

先ず、朝を迎えたら、神泉をたっぷりと浴び,身を清め、

この鎮守の森に居る時は、必ず、と言っていいほど・・・

まあ、自分の腰なんだけど、思うように動かない時とか

病因送りにされた時(未だ・・・ないけど・・・)とか・・・

あとは、朝早く鎮守の森を出発して、学校へ行く時以外は、

参道から、社務所や社殿の周りを、掃き清める。

まあ、そこへやってくるのは、決まって地区長か、あとは・・・

地区のお喋りナンバーワンのおばちゃんで、関戸のオババ。

そういえば、関戸のオババにバレて、ものの1時間もしないうちに

地区全部の家が知ることになった。オババだ。

確か、あの時は、大宴会になった。

「おう!神主!どこ・・・行っておった。」

今はそっとしておいて欲しいわけだけど、よりによって・・・

地区長とオババがセットで来るとは、僕は運が悪いらしい。

「はあ・・・沖縄に・・・・」

「沖縄?ああ・・・琉球・・・・何しに・・・」

まさか、ジュニアが邪魔しなかったら、深い海の底に眠っていた。

そんなことが言える訳がない。

「はあ・・・ちょっと・・・英語の勉強に・・・」

これは、嘘にはならない。ブロークンなイングリッシュだけど、

僕は女の子も口説ける様になったし、意思の疎通も図れる。

まあ、そんな機会が来るわけはないけど、上流の方々との会話は

やめておいたいいらしい。

「英語・・・・」

「嫌ですねえ~一応、僕・・・学生ですよ?」

そこへ、ちょっと目立つ様になってしまったお腹をさすりながら、

優子がやって来た。

「おや・・・優子ちゃん!えっ!・・・もしかして・・・」

「もしかしてって・・・なんじゃ・・・関戸の・・・」

「おめでたじゃの・・・優子ちゃん!」

「は・・・はい・・・・」

口止めすべく。お茶に誘ったけど、時すでに遅しで、

「こうしちゃおれん!」と二人はそれぞれ・・・境内を出て行った。

「あちゃ・・・・・」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

僕と優子はため息をつくしかなかった。

昨日も横浜のママの所で宴会だった。多分、今晩も宴会。それも・・・

優子と結ばれたあの日の宴会と同規模になるのに違いない。

「まだか・・・まだか・・・」とせっつかれていたので、

どうなるのか?まあ、僕は3日酔いになるだけだろう。

でも、優子は一体何しにここへきたのだろう。

「優子!・・何か用があったんじゃない?」

「あ・・・そうだった・・・」

「で・・・何?」

「うん!あのね・・・横浜のママにいただいた・・・お祝い。」

「うん。偽札でも入ってた?」

「そっちの方が良かった気がするけど・・・・」

「何さ?」

「あのね・・・いただいたのが・・・・半端ば金額じゃなくて・・・」

昨日帰る時に、ちょっと早いけど・・・

横浜のママから、「出産に必要なものを買いなさい。無理なバイトだめ。」

ママから、それなりに入っていた現金入りの封筒。

そして・・・・

「これは・・・・M子とH子から・・・・貰ってあげなさい!」

通牒が2冊と印鑑が二つ。それが入っていた封筒も優子にぶん投げていたんだ。

「へえ~」

「へえ~って・・・・中身気にならないの?」

「全然・・・横浜のママが慰謝料だっていっていたから・・・もらったけど・・」

「あたしだって・・・そんなに入っていると思わなかったけど・・・」

「数十万くらいでしょ・・・たいした金額じゃないよ・・・」

「ケタ違いよ・・・・宝くじくらい。」

「へえ~じゃあ・・・・それだけあれば・・・・」

「いいの?嫌だったんじゃ・・・」

「宗旨変えしたんだよ。」

「宗旨変え?」

「うん・・・えっと・・いしゃりょうとそんがいばいしょう・・・とか・・」

「えっ?」

「だから。慰謝料と損害賠償。ついでに利息だと思っておけば・・・」

「嫌じゃないの?」

「そうだねえ~嫌だったけど。お金に色はついていないって・・・ママが・・」

それは、昨日の事だった。横浜のママにまた押し付けられたわけだ。

まずは、ママとおじさんからで、多分。一束くらい?だと思う。

多分と言うのは、そのまま優子に渡しちゃったから・・・だ。

次が、各々。僕名義の通帳と印鑑が各1本ずつ。

僕には、横浜のママの他に、実の母親と育ての母親(こちらは姉妹)

妹の方が実母で、まあ僕がお腹の中に居た時?に始まったのか知らないけど、

実の父親(養父の使用人だった人)は、他に女をこしらえて・・・

確か、こっちは5人の子供がいる。

実の母親は、良く判らないけど、僕を産んですぐ」。僕を放り投げて、

歯医者の所へ嫁に行った。こっちは子供が2人。

そうなると、僕は8人兄弟になるわけだけど、そんあのは関係ない。

その後、僕は養父と実の叔母で実母の姉で養父の奥さんに引き取られた。

でも、こっちでも僕は「いらない子」だったわけで、小学校3年生の終わりに

捨てられたんだ。その後、養父は飲み屋の女を家に連れてきたけど、

僕が懐くわけがない。まあ、仲間たちは「ブルドック」と呼んでいる。

出来ればであるけど、ナイスバデイーで優しくて、若い後妻だったら、

多分。僕はしっぽをブンブンと振り回し、懐いただろうと思う。

そんなわけで、貰った通牒2冊は、実母とその旦那から、

慰謝料と損害賠償(産まれたばかりの僕が受けた数々の理不尽による損害)

ついでに、お詫び金とそれらモロモロの利息だろう。

次に、育ての母親からのもので、こちらは、僕が受けた理不尽な体罰の

慰謝料と僕の貴重な時間を潰させた損害賠償と、僕の預金を使い込んだ分の

賠償金らしい。どちらも、横浜のママが取り上げたらしい。

「で・・ね。」

「え・・・ごめん。聞いてなかった。」

「こんなに貰っていいのかと・・・」

「う~ん。ママのはね。それ以外はとりあえず・・・」

「とりあえず・・・」

「使う気はないね。全く・・・」

僕はこんなドロドロの腐れ切った大人が寄越したお金は使いたくない。

使ってしまったら、僕も腐ってしまう。

でも、とりあえず・・・そう。ママが言っていたんだ。

「お金に色はついてないわ。貰うのが嫌なら借りた事にすれば?」

「借りた?」

「そう・・・これからはお金がすごくかかるの。だから、必要な時に・・」

「嫌だけどね・・」

だから、渋々受け取って来たけど、中身はみていない。

僕への慰謝料は、きっと僕の価格だ。言い換えれば、プライスレスではなく、

きっとこの中身が、僕の存在価値なんだろう。

「どうしたの?」優子が僕の顔を覗き込んだ。

そうだ。僕はやることがある。目の前の命。そして、確かに鼓動を打つ

優子のお腹の子供を、プライスレスで守り抜かねばならない。

「優子・・・」

「んっ?」

「お腹空いた・・・・」

その時。優子は何かに気づいたらしい。

「そうだった・・・ご飯に呼びに来たの・・・」

僕と優子は手を繋ぎ。家に戻っていった。

やはり、僕の帰るところは、ここなのだ。

- 鎮守の森・・・2-へ続く。






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僕たちに明日はあるのか VOL23 [ぼくたちのシリーズ完結編]

- 鎮守の森・・・2 -

「頭いてぇ~飲み過ぎじゃなかった。飲まされ過ぎ・・だ。」

僕は手に持った竹ボウキの柄で頭をコンコン叩いた。

僕の記憶があるのは、最初の数時間だけ・・・

その後の僕について、意識があったのかさえ、記憶にない。

僕の中のもう一人の僕に問いかけても、返答すらない。

その代わり、頭痛が代返してきて、とっくに起きてくるはずの

ミサも巫女’sもリリーズもみんな眠りについている。

僕はと言えば、朝も早くいや、性格にはどうなんだろう。

気が付いたときにはし「神泉」で身を清めていた。というより、

「神泉」を張った風呂にダイブしていたわけだから・・・

多分だけど、総合的に判断すれば、またやったのだろう。

「今後‥少し控えないと・・な・・・子供産まれるし・・・」

僕はガンガンと鐘が鳴る頭を抱え、鎮守の森の中を

彷徨いながら、申し訳程度に境内の掃除をしている。

「おう!神主!朝も早くにご苦労さん!」

地区長はバケモノに違いない。

いずれ、呪詛できるか探すとして、今は早くお帰り頂きたい。

「お・・・おはようございます。昨日は・・・ど・・・おえっ!」

頭を下げたら気持ちが悪くなってきた。完全に3日酔いだ。

「あれっぽっちでなさけないのぉ~」

「はあ?・・・うっぷ。」

「たかだか・・・一升瓶の2本や3本くらいじゃろ・・・」

「村中の方々から・・・うっ・・・・で・・何のご・・・用で?」

「祭りじゃ・・祭り。今年はハデにやるからのう。本祭りじゃ・・・」

「はあ・・・言っておきます。うっぷ!」

僕はこれ以上聞いていると、また今夜も飲まされそうなので、

逃げ出すことにした。

まあ、本当にトイレで吐きたくなっていた。何しろ、地区長も

酒の匂いをプンプンさせている。

昨夜は、酷い目にあわされた。多分、この村に住む人々は、

僕が未だ「高校生」で未成年なのを完全に忘れている。と

僕は確信した。

まあ、普通。高校生でパパにはなるケースは稀なことだと思う。

一昨日は、横浜のママの所で大宴会だった。

僕は相当酔っぱらっており、どうやって、車に乗ったのか知らないけど、

ミサが「万一用に持ってきた・・・」と渡してくれた神泉入りの水筒を

抱え込んでいたらしい。

車の中は爆睡していたらしいけど、その後は知らない。

いや、正確に言えば、僕の思考回路は完全に安全弁を幾重にも掛けた

場所にあり、僕の別人格にその身をゆだねていたらしい。

らしい。と言うのは、気が付けば、僕は朝の禊で何倍もの神泉を被り続け、

その最中に覚醒したからだ。

昨夜の記憶を手繰り寄せると、正月と盆と一生分の誕生日にクリスマスが

やって来たみたいに、僕と優子はあの時。結ばれた翌日の夜と同じ様に

村中からお祝いを受けることになった。

まあ、前回と違うのは、見世物は、優子であり、その膨らみがそろそろ

誤魔化せないレベルになったお腹で、僕は、「ようやった」とねぎらいを

受けながらも、グラスに注がれる液体を流し込んでいたのだ。

その怒涛とも言える「飲め!」攻撃を凌ぎ、止せばいいのに・・・

神泉が満たされた風呂に飛び込んだ・・所と、誰か入っていた記憶はあるけど、

すっかり、安全弁は閉じてしまってあるので、その先の記憶は、僕は廊下の片隅で

目覚めたわけだから・・・多分、昨日も同じ様な夜を過ごしていたに違いない。

「でも・・・少しは・・・やらないとまずいよな。」僕は独り言をつぶやいた。

パパになるわけだし、落第だけは避けなければならない。

もしてや、自主的はさておき、強制退学も避けねばならない。

まあ、それだけは、ママにも厳しく言い渡されている。

僕は自業自得だからそれは仕方がないとしても、優子や生まれてくる子供に

容赦ない言葉等が浴びせられるかもしれない。

そうなれば、僕の性格上。どうなるかは火を見るよりも明らかなのだろう。

と・・・なれば、僕は残された時間で、全教科。試験範囲の要点を頭に

叩きこまねばならない。幸いなのは、一読すれば大体頭に入る。

入れる事が出来れば・・・の話なのだけど・・・・

「はぁぁぁぁ」とため息をひとつ吐く。

多分なのだけど・・・無茶苦茶な合格点が設定される気がする。

まあ、自業自得なのだけど出席点数は、どう計算しても15点あればいいほうで、

そうなると、全教科85点。いや、90点がボーダーラインになるだろう。

不思議なもので、つい数か月前までなら、「クビ!」は怖くなかった。

でも、守るものが出来れば・・・それだけは避けなければいけない。

「こらぁから真面目にやらないと・・・」

「ん?あ~ミミか・・・おはよう。」

「おはようじゃなくて・・・掃除。変わるから・・・」

「んっ!ありがとう・・・」

ミミに箒と塵取りを渡した。

- 鎮守の森 3 に続く -

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