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「やられたら・・・・やり返す。」(父の死 第1章)その2 [血みどろ?の争い]

― なんで・・・ - (第一章その2)

不思議なそう・・・摩訶不思議なことは、この世にいくらでも存在する。

それを人は、摩訶不思議な事を、偶然とか奇跡という文字に置き換えてしまうらしい。

こう言っている。オストドでさえ、今までそんな言葉を使い、やり過ごしてきたことだろう。

父が亡くなった病院には、父は都合6日間ほど入院していたらしい。

らしいと言うのは、その入院記録も何もかもないのであって、父が肺炎になったことすら、

知らなかったし、また、知らせすら受けていないし、父が施設にそもそも居ることすらも、

私を含め、親族はだれも知らされていなかったのだ。

話を少し間に戻すと、摩訶不思議と思ったのは、オストドの以前の職場の同じ業界団体で、

“もみじ会”(ある人曰く、「お前らは、実も付けなきゃ、花も咲かせない。付くのは色気ばかり・・・」)の

メンバーだった。その時以来、仲良く今でも電話で下らない話をする仲間の奥さんも、

父と同じ病院に入院を、奇しくも同じ日にした。そして、父が亡くなる10時間12分前に、

愛する家族の元から、永遠別れをし、極楽浄土へ旅立ったのだ。

「なあ、おっちゃん!」

「なんだい。」

「何階だった?」

「2階だよ・・・・」

まさか、階まで同じとは、これまた摩訶不思議なものである。

「おたくさんも大変だったね・・・」

「いや・・・おっちゃんこそ!」

もっと言わせてもらえば、火葬場まで同じだった。ただ、おっちゃんの奥さんが、一日早かったが・・・

おっちゃんの奥さんは、大腸がんからくる転移だったらしい。

よほど、“もみじ会”は呪われているのか?それとも、メンバーの行いの悪さが、こんな状態に

なったのか?よく判らないけど、一つだけ判ることがある。

それは、旅立ちの瞬間の違いだろう。おっちゃんの奥様は、愛する旦那様であるおっちゃんとお子さんに

見守られ、旅立った。

オストドの父は、その間際まで、それも父の後妻からではなく、父の会社の人間からの電話で、

“その時”を知らされ、台風が過ぎ、オストドがメストド1号を乗せ、渋滞している道路を、

あの手この手で病院にたどり着いたときには、既に“死亡”が告げられ、事務的に着替えさせられた

病院の浴衣ですでに、黒い寝台車に収まっていたのだ。

「10時11分だった・・・・」

やはり、オストドは最大の親不孝者だったのだ。死に水も取ってやることすらできず、

父であり、様々な教えや教育を施してくれた父に何一つ、親孝行はするタイミングすら与えられなかった。

「〇〇葬祭な!そこにこれから連れて行くから・・・・」

「あそこだよね。いつもの・・・・」

オストドはこれまで、何人いや何十人、いや多分、何百はオーバーとしても、百数十人の通夜や

告別式に参列した。

あれだけ、可愛がってくれた叔父のときでさえ、涙がでなかったし、〇〇葬祭に向かう途中でも、

涙一筋も流れてこなかった。

〇〇葬祭に父を乗せた寝台車が先に着いていた。その時父は人からモノ扱いに代わっていた。

物置みたいな搬入口から〇〇葬祭の霊安室に運ばれた父。

私たちは別室に通され、お茶やコーヒーを出されたのだが、まだ釈然としていないオストド。

何しろ、まだ、“対面”することさえ、許されていない。

「先ずは、お顔を拝見されますか?」

その声に促され、オストドをはじめ、その場に居たメストド1号以外の、余計なモノまで、

父に会いに行ったのだ。

“霊安室”確かにそう書いてあった。でも、既に父は、霊安室とは名ばかりの、冷蔵庫の中に

薄い布団が掛けられ、顔には布きれが乗っていた。

「先ずは丘をを拝見されていない方から・・・・」

当たり前の話だ。仮にオストドが一番でなければ、メストド1号である。

「ご・・・長男様・・・」

オストドはその顔を見た。

穏やかそうでもあり、無念も感じられる顔で、脳裏にこびりついている父ではなかった。

「泣くまい・・人前ではなくな!」それが父がオストドに教えてくれた言葉だったのだが、

「お・・や・・・じ・・・・ごめん!」

その一言と共に、オストドの涙腺を頑丈に固めていたダムは崩れ去り、これ以上、父の顔を

見ていたら、オストドは多分、精神病院へ送られることになっていたかもしれない。

― その3へ続く ―
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ゆうのすけ

謹んで御冥福をお祈り申し上げます。☆
by ゆうのすけ (2013-10-30 05:02) 

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